font size="5"> http://digital.asahi.com/articles/ASJ247G46J24ULZU00Q.html?rm=1094 編集委員・市田隆
2016年2月6日 貸金業者に払いすぎた利息(過払い金)の請求業務で最大手の司法書士法人「新宿事務所」(東京都)が、日本司法書士会連合会(日司連)が2011年に決めた報酬指針から逸脱し、多めに報酬をとっていたことが分かった。指針に法的拘束力はないが、日司連は「指針を大きく外れているのは遺憾。司法書士のモラルが問われる」と批判。新宿事務所は「指針と異なる契約を結ぶことは許される」と反論している。
過払い金の請求事務は司法書士や弁護士に依頼するのが通例だが、10年ごろ、「不当に高い報酬を得ている」との批判報道が続出。日司連が指針をつくって報酬に上限を設けた。
報酬には①成果にかかわらず受け取るもの②借金を減額させた場合に受け取るもの③払いすぎた利息を取り戻せたら受け取るものがあり、それぞれに上限を設けた。
ただ、②では適正な利息に計算し直しただけで、借金が減った分を貸金業者が認めた場合は、報酬を受け取れないこととした。「司法書士が何らの交渉をすることもなく減額されたもの」とみなしたためだ。
しかし、新宿事務所は②で適正な利息に計算し直しただけの場合も減額分の26・9%にあたる報酬を受け取っている。
朝日新聞の調べによる貸金業界をほぼ網羅する11社の集計では、新宿事務所の扱いでこの計算により借金が減額した分は、14年4月からの1年半で合計約70億円。その26・9%にあたる約18億円の報酬を、指針に逸脱して受け取っていた計算になる。
また、新宿事務所は③でも指針の上限(回収額の20~25%)を上回る26・9%の報酬を受け取っていた。
日司連の櫻井清副会長と今川嘉典理事は朝日新聞の取材に応じ、「『報酬額を適正化することで依頼者の利益の保護を図るとともに、司法書士に対する国民の信頼を確保する』とした指針の目的から大きく外れている。依頼者の生活再建を目指すためには、なるべく多い金額を返すべきなのに遺憾だ」と述べた。「適正な利息に計算し直しただけの場合、報酬を受け取る根拠は薄い」との趣旨は会員向けの文書で周知徹底していたという。
新宿事務所は朝日新聞の取材に、26・9%の各報酬の受け取りを「合法的な事実」としたうえ、「指針は会員の執務を直接拘束する規範ではない。参考にするべきガイドラインではあっても、契約自由の原則のもと、各司法書士法人が独自の報酬体系を定め、指針とは異なる契約を締結することも許されると考える」などと文書で回答した。朝日新聞が示した借金の減額分約70億円や報酬額の約18億円については「算定根拠が不明で、回答は差し控える」としている。(編集委員・市田隆)
《司法書士法人新宿事務所》 ホームページなどによると従業員は約500人で、うち約100人が司法書士。新宿本店のほか、関東3県や宮城県に支店を持つ。貸金業界の調べでは2014年度で過払い金請求業務の扱い件数が全国の弁護士・司法書士事務所の中で約2割(金額ベースでは約8%)を占めて首位。大量のテレビ・ラジオCMなど積極的な広報宣伝戦略でも知られる。CM情報専門会社の調べによると、昨年から今年にかけての関東地区のラジオCMで毎月、放送回数、放送秒数とも1位を堅持。テレビCMも昨年9月までは弁護士・司法書士各事務所の中で首位だった。
■依頼者の利益保護、最優先に
今回、新宿事務所が司法書士業界の指針を逸脱した問題性は、日司連が指摘する通り、「依頼者の利益の保護」を十分に図ったのかに疑問符がついたことだ。
最高裁が06年に「グレーゾーン金利」を原則無効と判断。これを機に借金を抱える人が「過払い金」を貸金業者から取り戻す動きが各地で急増し、「過払い金バブル」となった。その中で、過払い専門の弁護士や司法書士事務所が登場し、報酬が「不当に高い」との報道も相次いだ。「法曹界のモラル欠如」との批判は国会にも飛び火し、日司連と日本弁護士連合会は対応せざるを得ず、11年に報酬の上限をそれぞれ決める異例の措置をとった。
司法書士業界では、上限を盛り込んだ指針が会員に周知徹底されたものの、依頼者にも広く認識されていたとは言いがたい。新宿事務所に依頼した人も提示された報酬額をそのまま支払っているのが普通だろう。
日司連も報酬のとりすぎを懸念していた。報酬指針をつくる前から「依頼者は司法書士とは法知識に大きな差があり、精神的にも圧倒的に弱い立場にある」とし、報酬面で具体的に十分な説明を尽くすよう会員に求めていた。
池尾和人・慶応大学教授(金融論)は「過払い金は不当利得の返還なのだから、正当な消費者の権利を守ることが大切だ」と強調。「司法書士や弁護士の報酬は、法律に反しなければいいということではなく、倫理上適切かどうかを判断する必要がある」と釘を刺した。
最高裁判決から今年で10年。13年度でも貸金業界の過払い金返還額は3千億円を超えており、借金した人からの請求は今後も続くとみられる。依頼者の利益の保護を最優先し、自らの報酬の取りすぎに慎重な姿勢が司法書士らに改めて求められている。(編集委員・市田隆)
感想;
モラル違反をすれば、消費者の信頼を失い、企業がやっていけないということを実感して貰うことでしょう。
そのためには、そこの企業を活用しないことだと思います。
そのためにも多くの人が知ることが重要かと思います。
違法に高い金利を支払った人は、充分知らなかったために騙された人でもあります。
当時は上限金利はありましたが、罰則規定の金利はその上限金利上だったために、罰則規定の以下の、そして上限金利を超えて取っていました。
その人を助けてあげますと言いながら、業界の上限より高い報酬を取っていたのは、高い金利を取っていた賃金業者と似ているように思いました。
2016年2月6日 貸金業者に払いすぎた利息(過払い金)の請求業務で最大手の司法書士法人「新宿事務所」(東京都)が、日本司法書士会連合会(日司連)が2011年に決めた報酬指針から逸脱し、多めに報酬をとっていたことが分かった。指針に法的拘束力はないが、日司連は「指針を大きく外れているのは遺憾。司法書士のモラルが問われる」と批判。新宿事務所は「指針と異なる契約を結ぶことは許される」と反論している。
過払い金の請求事務は司法書士や弁護士に依頼するのが通例だが、10年ごろ、「不当に高い報酬を得ている」との批判報道が続出。日司連が指針をつくって報酬に上限を設けた。
報酬には①成果にかかわらず受け取るもの②借金を減額させた場合に受け取るもの③払いすぎた利息を取り戻せたら受け取るものがあり、それぞれに上限を設けた。
ただ、②では適正な利息に計算し直しただけで、借金が減った分を貸金業者が認めた場合は、報酬を受け取れないこととした。「司法書士が何らの交渉をすることもなく減額されたもの」とみなしたためだ。
しかし、新宿事務所は②で適正な利息に計算し直しただけの場合も減額分の26・9%にあたる報酬を受け取っている。
朝日新聞の調べによる貸金業界をほぼ網羅する11社の集計では、新宿事務所の扱いでこの計算により借金が減額した分は、14年4月からの1年半で合計約70億円。その26・9%にあたる約18億円の報酬を、指針に逸脱して受け取っていた計算になる。
また、新宿事務所は③でも指針の上限(回収額の20~25%)を上回る26・9%の報酬を受け取っていた。
日司連の櫻井清副会長と今川嘉典理事は朝日新聞の取材に応じ、「『報酬額を適正化することで依頼者の利益の保護を図るとともに、司法書士に対する国民の信頼を確保する』とした指針の目的から大きく外れている。依頼者の生活再建を目指すためには、なるべく多い金額を返すべきなのに遺憾だ」と述べた。「適正な利息に計算し直しただけの場合、報酬を受け取る根拠は薄い」との趣旨は会員向けの文書で周知徹底していたという。
新宿事務所は朝日新聞の取材に、26・9%の各報酬の受け取りを「合法的な事実」としたうえ、「指針は会員の執務を直接拘束する規範ではない。参考にするべきガイドラインではあっても、契約自由の原則のもと、各司法書士法人が独自の報酬体系を定め、指針とは異なる契約を締結することも許されると考える」などと文書で回答した。朝日新聞が示した借金の減額分約70億円や報酬額の約18億円については「算定根拠が不明で、回答は差し控える」としている。(編集委員・市田隆)
《司法書士法人新宿事務所》 ホームページなどによると従業員は約500人で、うち約100人が司法書士。新宿本店のほか、関東3県や宮城県に支店を持つ。貸金業界の調べでは2014年度で過払い金請求業務の扱い件数が全国の弁護士・司法書士事務所の中で約2割(金額ベースでは約8%)を占めて首位。大量のテレビ・ラジオCMなど積極的な広報宣伝戦略でも知られる。CM情報専門会社の調べによると、昨年から今年にかけての関東地区のラジオCMで毎月、放送回数、放送秒数とも1位を堅持。テレビCMも昨年9月までは弁護士・司法書士各事務所の中で首位だった。
■依頼者の利益保護、最優先に
今回、新宿事務所が司法書士業界の指針を逸脱した問題性は、日司連が指摘する通り、「依頼者の利益の保護」を十分に図ったのかに疑問符がついたことだ。
最高裁が06年に「グレーゾーン金利」を原則無効と判断。これを機に借金を抱える人が「過払い金」を貸金業者から取り戻す動きが各地で急増し、「過払い金バブル」となった。その中で、過払い専門の弁護士や司法書士事務所が登場し、報酬が「不当に高い」との報道も相次いだ。「法曹界のモラル欠如」との批判は国会にも飛び火し、日司連と日本弁護士連合会は対応せざるを得ず、11年に報酬の上限をそれぞれ決める異例の措置をとった。
司法書士業界では、上限を盛り込んだ指針が会員に周知徹底されたものの、依頼者にも広く認識されていたとは言いがたい。新宿事務所に依頼した人も提示された報酬額をそのまま支払っているのが普通だろう。
日司連も報酬のとりすぎを懸念していた。報酬指針をつくる前から「依頼者は司法書士とは法知識に大きな差があり、精神的にも圧倒的に弱い立場にある」とし、報酬面で具体的に十分な説明を尽くすよう会員に求めていた。
池尾和人・慶応大学教授(金融論)は「過払い金は不当利得の返還なのだから、正当な消費者の権利を守ることが大切だ」と強調。「司法書士や弁護士の報酬は、法律に反しなければいいということではなく、倫理上適切かどうかを判断する必要がある」と釘を刺した。
最高裁判決から今年で10年。13年度でも貸金業界の過払い金返還額は3千億円を超えており、借金した人からの請求は今後も続くとみられる。依頼者の利益の保護を最優先し、自らの報酬の取りすぎに慎重な姿勢が司法書士らに改めて求められている。(編集委員・市田隆)
感想;
モラル違反をすれば、消費者の信頼を失い、企業がやっていけないということを実感して貰うことでしょう。
そのためには、そこの企業を活用しないことだと思います。
そのためにも多くの人が知ることが重要かと思います。
違法に高い金利を支払った人は、充分知らなかったために騙された人でもあります。
当時は上限金利はありましたが、罰則規定の金利はその上限金利上だったために、罰則規定の以下の、そして上限金利を超えて取っていました。
その人を助けてあげますと言いながら、業界の上限より高い報酬を取っていたのは、高い金利を取っていた賃金業者と似ているように思いました。