https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170406-00166297-toyo-bus_all&p=1東洋経済オンライン 4/6(木)
「タダでウェブサイト作ります。開設後の管理や運営もすべてお任せください」――。こんな勧誘を受けて、素直に信じる人、逆に何か裏があるのではないかと疑う人はどのくらいいるのだろうか。
ある被害者のケース―広告料収入はクレジットの月払いと同額だった
東京・港区のゴルフスタジアムという会社が提供する、「ごるスタ」というウェブサイトの作成・運営管理サービスに絡み、1000人を超えるゴルフ練習場のレッスンプロが、多額の借財を背負わされ、破産の危機に瀕している。
■広告収入でソフト購入代金を相殺?
うたい文句は冒頭のとおり。ゴルフ練習場やショップ、レッスンプロに、タダでウェブサイトを作成する、と言って持ちかけ、実際ちゃんとしたウェブサイトを作る。ただ、最終的に契約書を取り交わす段階になると、「ソフトを買う形を取らせてほしい。ついては信販会社とクレジット契約も結んでほしい」と言い出す。
当然、「話が違うじゃないか」ということになるのだが、そこで持ち出してくるのが広告契約だ。作成したウェブサイトに載せる広告を取ってきてくれるというのだ。ゴルフスタジアムが広告営業もしてくれて、掲載料を支払ってくれる。その額は、クレジットの1カ月の支払額と同額。広告が取れないときは、ゴルフスタジアム自身が広告主になり、広告料を負担してくれる。
ゴルフスタジアムから入金される広告料を、そのまま信販会社に支払えば、顧客の持ち出しはゼロ。確かにタダでウェブサイトを作り、管理運営してもらえている状態になる。
だが、ひとたび広告料の入金が止まれば、顧客は信販会社への支払いができなくなる。それが現実となったのが今年2月下旬である。
タダより高いものはなかった
ゴルフスタジアムからの入金が止まったという情報は、LINEを通じ、瞬く間に全国の「ごるスタ」ユーザーに拡散した。
被害は全国に広がっており、被害者は主にレッスンプロ。しかも1000人を超えている。そして1人当たりのクレジット残高が少ない人で300万円、多い人だと900万円台であることが、瞬く間に判明。3月26日には被害者団体が立ち上がっている。
ゴルフ場問題のエキスパートである西村國彦弁護士が世話役となり、被害者の有志が世話人会を発足させ、被害の実態調査に乗り出している。一方で、信販会社への支払いを止めるように呼びかけている。
契約書を見るかぎり、クレジット契約と広告契約はリンクしておらず、広告料が入らなければ、クレジットの支払いも免除されるようにはなっていない。
加えて、顧客が信販会社と結んでいるクレジット契約は、なぜか「ごるスタ」のウェブサイト作成サービスの対価を分割払いする契約ではなく、「モーションアナライザー3」というパッケージソフトの購入代金を分割払いする契約になっている。
信販会社は「モーションアナライザー3」の代金を一括でゴルフスタジアムに支払い、顧客からは長期の分割払いで回収する形になっている。顧客が広告料の未入金を理由にクレジットの支払いを怠れば、信販会社はゴルフスタジアムに先払いしてしまった代金を回収できなくなる。
■契約者増の陰に独特の人間関係
そもそも「モーションアナライザー3」のパッケージは数千円で買える映画のDVDとさほど変わらないような外見だ。
その、同じソフトに300万円だの500万円だの、900万円だのといった、顧客ごとに異なる値段がつけられ、クレジットの契約対象になっているのだ。
なぜ同じパッケージソフトに異なる値段がつくのか。筆者の取材に応じたゴルフスタジアム社の堀新(ほり あらた)代表は「お客様ごとにサービスが異なるから」だと説明する。
だが、信販会社の申し込み契約を素直に読めば、クレジットの対象はサービスではなく「モーションアナライザー3」というパッケージソフト、つまりモノである。
しかも、顧客は「モーションアナライザー3」を購入したという自覚も、そのために数百万円にも上るクレジット契約を結んだという自覚もない。認識しているのは、タダで「ごるスタ」のウェブサイト作成サービスを受けられるという点だけだ。
ただ、営業マンが言葉巧みに誘導したとはいえ、大の大人がクレジットの契約書に署名・捺印までしておきながら、その自覚がないというのはにわかには信じがたい、というのがごく普通の感覚だろう。
ゴルフスタジアム側の見解は?
この点について、被害者であり世話役の1人でもある横田亮氏は、「ゴルフ界独特の人間関係が深く影響している」という。横田氏は静岡県御殿場市の富士カントリークラブ所属のレッスンプロ。今から3年前、練習場の経営者から「ごるスタ」を薦められた。
「タダでウェブサイトを作ってくれるというし、多くの先輩たちも契約していた。話を進め、実際にウェブサイトが出来上がり、いざ契約という段階になったらクレジット契約をしてくれと営業マンが言い出した」という。
クレジットの元金は592万円、分割手数料コミで726万円を、84回払いする契約である。「あんなソフトに592万円だなんてありえない。タダのはずのウェブサイトの作成代金が592万円、しかも契約書上はウェブサイト作成代金じゃなくて、あんな安っぽそうに見えるソフトの代金だということになっている。おかしいと思い、契約はしたくなかったが、あの段階では断れなかった」(横田氏)。
レッスンプロの世界はまさに体育会の世界だ。自分が契約を断るということは、すでに契約している先輩たちや、契約を薦めた練習場の経営者の判断を否定することを意味する。そのうえ広告料が毎月きちんと支払われていれば、疑問も薄れる。実際、横田氏自身も、約3年にわたって広告料は毎月滞りなく支払われてきた。
さらにこうしたサービスに飛びつかざるを得ない、レッスンプロの実態もある。レッスンプロはおよそ3000人いると言われているが、その年収は相当稼いでいても、せいぜい600万円程度。年収100万円台もザラという世界だ。その中でウェブサイトをタダで作ってくれて、それを営業ツールに使えるなら渡りに船。レッスンプロの間で「ごるスタ」利用者が増えたことは、無理のない側面もある。
■ブラック登録のリスクを背負う顧客
渦中のゴルフスタジアム社の堀代表は、「ごるスタが無料のサービスだと誤解しているのは顧客全員ではない。広告料を支払えなくなったことは本当に申し訳ないと思っている」と言う。
ゴルフスタジアムは2004年設立で、祖業はレッスンに使うスイング分析システム「モーションアナライザー」の販売。2台のカメラとモニター、それにソフトを約140カ所の練習場に1セット50万円で売ったことで、ゴルフ練習場にリレーションができた。
「その縁で練習場からウェブサイトの作成を依頼され、ウェブサイトに掲載する広告営業も依頼されるようになったことから、このビジネスモデルにたどり着いた。一時は広告の卸売りでずいぶん儲かったが、事業が拡大していくのと反比例する形で広告営業が苦戦するようになった」(堀代表)という。
会社側は3月24日付で顧客向けに書面を送付している。内容は、1年以内に顧客の売り上げに貢献できるツールを何か考え出すので、クレジットの支払いを1年間、猶予してもらうよう、信販会社と交渉してほしい、ついては交渉に必要な弁護士も紹介するし、弁護士費用も当方で負担する、というもの。
信販会社と契約しているのは顧客なので、顧客自身にしか交渉できないのは間違いない。だが、リスケ交渉をすれば顧客は金融機関からブラック登録されるリスクを背負い込む。
もっとも、被害者の会として早々に信販会社からの自動引き落としを止めるように指示しているので、どちらにしてもブラック登録のリスクは免れない。
横田氏は「だまされるほうが悪いという批判を浴びることも、信販会社にブラック登録されてしまうかもしれないことも覚悟のうえ。徹底的に戦う」という。
はたして、ごるスタ問題はどういった結末を迎えるのか。伊藤 歩
感想;
上手い話には裏がある。
ただより高いものはない。
詐欺のテクニックを知る。
だます方はあの手この手でやってくるので、騙されないためにはやはりこちら側も知っておくことが必要なのです。
多くの詐欺のテクニックを知ると騙されにくくなるのでしょう。
「タダでウェブサイト作ります。開設後の管理や運営もすべてお任せください」――。こんな勧誘を受けて、素直に信じる人、逆に何か裏があるのではないかと疑う人はどのくらいいるのだろうか。
ある被害者のケース―広告料収入はクレジットの月払いと同額だった
東京・港区のゴルフスタジアムという会社が提供する、「ごるスタ」というウェブサイトの作成・運営管理サービスに絡み、1000人を超えるゴルフ練習場のレッスンプロが、多額の借財を背負わされ、破産の危機に瀕している。
■広告収入でソフト購入代金を相殺?
うたい文句は冒頭のとおり。ゴルフ練習場やショップ、レッスンプロに、タダでウェブサイトを作成する、と言って持ちかけ、実際ちゃんとしたウェブサイトを作る。ただ、最終的に契約書を取り交わす段階になると、「ソフトを買う形を取らせてほしい。ついては信販会社とクレジット契約も結んでほしい」と言い出す。
当然、「話が違うじゃないか」ということになるのだが、そこで持ち出してくるのが広告契約だ。作成したウェブサイトに載せる広告を取ってきてくれるというのだ。ゴルフスタジアムが広告営業もしてくれて、掲載料を支払ってくれる。その額は、クレジットの1カ月の支払額と同額。広告が取れないときは、ゴルフスタジアム自身が広告主になり、広告料を負担してくれる。
ゴルフスタジアムから入金される広告料を、そのまま信販会社に支払えば、顧客の持ち出しはゼロ。確かにタダでウェブサイトを作り、管理運営してもらえている状態になる。
だが、ひとたび広告料の入金が止まれば、顧客は信販会社への支払いができなくなる。それが現実となったのが今年2月下旬である。
タダより高いものはなかった
ゴルフスタジアムからの入金が止まったという情報は、LINEを通じ、瞬く間に全国の「ごるスタ」ユーザーに拡散した。
被害は全国に広がっており、被害者は主にレッスンプロ。しかも1000人を超えている。そして1人当たりのクレジット残高が少ない人で300万円、多い人だと900万円台であることが、瞬く間に判明。3月26日には被害者団体が立ち上がっている。
ゴルフ場問題のエキスパートである西村國彦弁護士が世話役となり、被害者の有志が世話人会を発足させ、被害の実態調査に乗り出している。一方で、信販会社への支払いを止めるように呼びかけている。
契約書を見るかぎり、クレジット契約と広告契約はリンクしておらず、広告料が入らなければ、クレジットの支払いも免除されるようにはなっていない。
加えて、顧客が信販会社と結んでいるクレジット契約は、なぜか「ごるスタ」のウェブサイト作成サービスの対価を分割払いする契約ではなく、「モーションアナライザー3」というパッケージソフトの購入代金を分割払いする契約になっている。
信販会社は「モーションアナライザー3」の代金を一括でゴルフスタジアムに支払い、顧客からは長期の分割払いで回収する形になっている。顧客が広告料の未入金を理由にクレジットの支払いを怠れば、信販会社はゴルフスタジアムに先払いしてしまった代金を回収できなくなる。
■契約者増の陰に独特の人間関係
そもそも「モーションアナライザー3」のパッケージは数千円で買える映画のDVDとさほど変わらないような外見だ。
その、同じソフトに300万円だの500万円だの、900万円だのといった、顧客ごとに異なる値段がつけられ、クレジットの契約対象になっているのだ。
なぜ同じパッケージソフトに異なる値段がつくのか。筆者の取材に応じたゴルフスタジアム社の堀新(ほり あらた)代表は「お客様ごとにサービスが異なるから」だと説明する。
だが、信販会社の申し込み契約を素直に読めば、クレジットの対象はサービスではなく「モーションアナライザー3」というパッケージソフト、つまりモノである。
しかも、顧客は「モーションアナライザー3」を購入したという自覚も、そのために数百万円にも上るクレジット契約を結んだという自覚もない。認識しているのは、タダで「ごるスタ」のウェブサイト作成サービスを受けられるという点だけだ。
ただ、営業マンが言葉巧みに誘導したとはいえ、大の大人がクレジットの契約書に署名・捺印までしておきながら、その自覚がないというのはにわかには信じがたい、というのがごく普通の感覚だろう。
ゴルフスタジアム側の見解は?
この点について、被害者であり世話役の1人でもある横田亮氏は、「ゴルフ界独特の人間関係が深く影響している」という。横田氏は静岡県御殿場市の富士カントリークラブ所属のレッスンプロ。今から3年前、練習場の経営者から「ごるスタ」を薦められた。
「タダでウェブサイトを作ってくれるというし、多くの先輩たちも契約していた。話を進め、実際にウェブサイトが出来上がり、いざ契約という段階になったらクレジット契約をしてくれと営業マンが言い出した」という。
クレジットの元金は592万円、分割手数料コミで726万円を、84回払いする契約である。「あんなソフトに592万円だなんてありえない。タダのはずのウェブサイトの作成代金が592万円、しかも契約書上はウェブサイト作成代金じゃなくて、あんな安っぽそうに見えるソフトの代金だということになっている。おかしいと思い、契約はしたくなかったが、あの段階では断れなかった」(横田氏)。
レッスンプロの世界はまさに体育会の世界だ。自分が契約を断るということは、すでに契約している先輩たちや、契約を薦めた練習場の経営者の判断を否定することを意味する。そのうえ広告料が毎月きちんと支払われていれば、疑問も薄れる。実際、横田氏自身も、約3年にわたって広告料は毎月滞りなく支払われてきた。
さらにこうしたサービスに飛びつかざるを得ない、レッスンプロの実態もある。レッスンプロはおよそ3000人いると言われているが、その年収は相当稼いでいても、せいぜい600万円程度。年収100万円台もザラという世界だ。その中でウェブサイトをタダで作ってくれて、それを営業ツールに使えるなら渡りに船。レッスンプロの間で「ごるスタ」利用者が増えたことは、無理のない側面もある。
■ブラック登録のリスクを背負う顧客
渦中のゴルフスタジアム社の堀代表は、「ごるスタが無料のサービスだと誤解しているのは顧客全員ではない。広告料を支払えなくなったことは本当に申し訳ないと思っている」と言う。
ゴルフスタジアムは2004年設立で、祖業はレッスンに使うスイング分析システム「モーションアナライザー」の販売。2台のカメラとモニター、それにソフトを約140カ所の練習場に1セット50万円で売ったことで、ゴルフ練習場にリレーションができた。
「その縁で練習場からウェブサイトの作成を依頼され、ウェブサイトに掲載する広告営業も依頼されるようになったことから、このビジネスモデルにたどり着いた。一時は広告の卸売りでずいぶん儲かったが、事業が拡大していくのと反比例する形で広告営業が苦戦するようになった」(堀代表)という。
会社側は3月24日付で顧客向けに書面を送付している。内容は、1年以内に顧客の売り上げに貢献できるツールを何か考え出すので、クレジットの支払いを1年間、猶予してもらうよう、信販会社と交渉してほしい、ついては交渉に必要な弁護士も紹介するし、弁護士費用も当方で負担する、というもの。
信販会社と契約しているのは顧客なので、顧客自身にしか交渉できないのは間違いない。だが、リスケ交渉をすれば顧客は金融機関からブラック登録されるリスクを背負い込む。
もっとも、被害者の会として早々に信販会社からの自動引き落としを止めるように指示しているので、どちらにしてもブラック登録のリスクは免れない。
横田氏は「だまされるほうが悪いという批判を浴びることも、信販会社にブラック登録されてしまうかもしれないことも覚悟のうえ。徹底的に戦う」という。
はたして、ごるスタ問題はどういった結末を迎えるのか。伊藤 歩
感想;
上手い話には裏がある。
ただより高いものはない。
詐欺のテクニックを知る。
だます方はあの手この手でやってくるので、騙されないためにはやはりこちら側も知っておくことが必要なのです。
多くの詐欺のテクニックを知ると騙されにくくなるのでしょう。