前提として、小麦は約9割が輸入であり、政府がまとめて計画的に買い取り、製粉業者に売り渡す仕組みが導入されている。価格の改定のタイミングは毎年4月と10月ということもあり、ウクライナ情勢の本格的な影響は現段階では避けられている。
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/wheat-price-debunk Kota Hatachi by Kota Hatachi 籏智 広太 BuzzFeed News Reporter, Japan
7月10日投開票の参議院議員選挙をめぐり、与党側が、「ウクライナ情勢で国際的な小麦の価格が2〜3割上昇するなか、製粉業者への売り渡し価格を9月まで据え置いている」という趣旨の成果を繰り返し強調している。
岸田文雄首相も会見でアピールし、公明党の候補者らが選挙戦で訴えるなど、広く用いられているフレーズだが、これはミスリードだ。
小麦の価格は以前から、毎年4月と10月に改訂される決まりだ。つまり、物価高対策として9月まで価格を据え置いているのではく、そもそも10月の次期改定まで価格は変わらない仕組みだという点に、留意が必要だ。
前提として、小麦は約9割が輸入であり、政府がまとめて計画的に買い取り、製粉業者に売り渡す仕組みが導入されている。一方、ウクライナ情勢などを受け、国際的に取引価格が高騰している状況にある。
そうした中で、岸田首相は6月15日の記者会見で以下のように「小麦高対策」について語っている。これは国会答弁でも繰り返されてきた発言だ。
「食品については、ウクライナ情勢で輸入小麦の国際価格が2割から3割上昇していますが、政府の国内製粉会社への売渡価格は、9月までの間、据え置くこととしています。10月以降も輸入価格が突出して急騰している状態であれば、必要な抑制措置を講じ、パンや麺類などの価格高騰を抑制します」
その後、公示された参院選をめぐっても、以下の通り与党側のアピールポイントともなっていることがわかる。
(1)岸田首相「小麦についても政府売渡価格という制度を活用することによって、2割から3割価格を押さえている」(日本記者クラブ党首討論会、6月21日)
(2)自民党・安倍晋三元首相「小麦の値段についても上がっていますが、これも2割3割抑えこむことが出来ています」(東京選挙区候補者の応援演説、6月22日)
(3)公明党・石井啓一幹事長「輸入小麦がまあ、大きな価格ですけど、これは9月末まで据え置くということで、的確な対応を行っている」(NHK日曜討論、6月26日)
(4)公明党・山口那津男代表「政府が製粉会社などに売り渡す輸入小麦は、国際価格が2割から3割も上昇する中、製粉会社への販売価格を9月まで据え置きました」(政見放送で、6月29日)
(5)公明党・伊佐進一衆議院議員「(物価高騰対策をまとめました、として)値上がりの激しい輸入小麦は、国が一括購入していますが、製粉会社に卸す価格を9月まで据え置いています」(Twitter上で、6月29日)
ウクライナ情勢の影響を避けられた理由は…
しかしこれは、前述の通り「ミスリード」だ。
農林水産省農産政策部貿易業務課によると、小麦の製粉業者への売り渡し価格の改定のタイミングは毎年4月と10月の2回。それまでの半年間の国際価格、海上運賃、為替などの動向を反映した政府の買付価格の平均をもとに算定される。
これは2007年4月に食糧法の改正に基づき導入された「相場連動制」の運用上のルールであり、今回の物価高を受け、与党が対策をとったことで「据え置かれている」わけではない。
同課の担当者は「据え置き」表現について、BuzzFeed Newsの取材に「そもそも半期に1回価格を改定して、その間は固定するという制度が知られていないところもあるため、総理としてはわかりやすい言葉で説明されたのでは」と指摘した。
なお、今年の4月の改訂では2021年9月第2週〜22年3月第1週の価格を元に、17.3%値上げされた。これは21年10月期の19%に次ぐ過去2番目の上がり幅だ。消費者にこの値上げが反映されるのは7月ごろとされるという。
ただし、改定のタイミングがウクライナ情勢の悪化直前だったことから、その大きな影響を避けられている。値上げの主な原因はアメリカやカナダでの不作だという。
実際、政府の物価高に関する関係閣僚会議の資料(4月26日)にも、以下のように明記されている。
「輸入小麦について、足下でウクライナ情勢の影響により国際価格が更に上昇しているが、国内においては、その影響が本格化する以前の国際価格に基づき令和4年4月期の政府売渡価格が設定されており、製粉企業等への安定供給に着実に取り 組む」
緊急対策には100億円も
小麦の国際価格の指標となるアメリカ・シカゴ商品取引所の先物価格は、3月上旬の過去最高値をピークに現在は落ち着きつつあるが、それでも高騰した状態が続く。今後の情勢は不透明だ。
担当者は「価格を固定する間にも買い入れ価格は上昇している。もし売り渡し制度がなければ、ビビッドに価格が反映されることになるため、(現行の制度が)安定的に供給できるスキームにはなっているとも言えます」との見解も示した。
与党側が繰り返している「ウクライナ情勢で国際的な小麦の価格が2〜3割上昇するなか、製粉業者への売り渡し価格を9月まで据え置いている」という趣旨の発言は、以前からあるスキームが有効に働いている結果であり、ウクライナ情勢を受けて政府がアクティブに行動したからとは言い難い。
なお、現段階では国産小麦や米粉への転換などの「緊急対策」に予備費から100億円が投じられており、政府としても対策に乗り出している(図上)。しかしこれは、輸入小麦の価格に対する直接的なものではない。
そのうえで、ウクライナ情勢の本格的な影響が及ぶとみられる10月の価格の改定をめぐっては、岸田首相は前掲の通り、「突出して急騰している状態であれば、必要な抑制措置を講じる」としている。
物価高対策をめぐっては、政府が対策本部を設置。高騰するガソリン価格が政府の補助金により抑えられているなど、効果を出しているものもある。一方で選挙戦でも大きな争点となっていることから、その発信内容には注意が必要だ。
感想;
7月2日にマルエツに買い物に行ったら、ぶどうパンが138円⇒155円に上がっていました。
小麦粉が値上がりすると聞いていたが、やはり値上がりしたんだと実感しました。
ウクライナが悪化する前の4月の価格改定の影響が7月に出てきたのです。
それをあたかも、岸田首相の実績のようにPRされていたのです。
「聞く力」を強調されていますが、「聞くふりをする力」を素晴らしいです。
「やる力」ではなく、「やっているふりをする力」
騙される側が悪いのでしょう。
麻生財務相が「弱い子が虐められる。国も弱いから攻撃される」とまた本音がポロっと出ました。
麻生財務相の言葉を借りると「騙される方が悪い」になるのでしょう。
https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/wheat-price-debunk Kota Hatachi by Kota Hatachi 籏智 広太 BuzzFeed News Reporter, Japan
7月10日投開票の参議院議員選挙をめぐり、与党側が、「ウクライナ情勢で国際的な小麦の価格が2〜3割上昇するなか、製粉業者への売り渡し価格を9月まで据え置いている」という趣旨の成果を繰り返し強調している。
岸田文雄首相も会見でアピールし、公明党の候補者らが選挙戦で訴えるなど、広く用いられているフレーズだが、これはミスリードだ。
小麦の価格は以前から、毎年4月と10月に改訂される決まりだ。つまり、物価高対策として9月まで価格を据え置いているのではく、そもそも10月の次期改定まで価格は変わらない仕組みだという点に、留意が必要だ。
前提として、小麦は約9割が輸入であり、政府がまとめて計画的に買い取り、製粉業者に売り渡す仕組みが導入されている。一方、ウクライナ情勢などを受け、国際的に取引価格が高騰している状況にある。
そうした中で、岸田首相は6月15日の記者会見で以下のように「小麦高対策」について語っている。これは国会答弁でも繰り返されてきた発言だ。
「食品については、ウクライナ情勢で輸入小麦の国際価格が2割から3割上昇していますが、政府の国内製粉会社への売渡価格は、9月までの間、据え置くこととしています。10月以降も輸入価格が突出して急騰している状態であれば、必要な抑制措置を講じ、パンや麺類などの価格高騰を抑制します」
その後、公示された参院選をめぐっても、以下の通り与党側のアピールポイントともなっていることがわかる。
(1)岸田首相「小麦についても政府売渡価格という制度を活用することによって、2割から3割価格を押さえている」(日本記者クラブ党首討論会、6月21日)
(2)自民党・安倍晋三元首相「小麦の値段についても上がっていますが、これも2割3割抑えこむことが出来ています」(東京選挙区候補者の応援演説、6月22日)
(3)公明党・石井啓一幹事長「輸入小麦がまあ、大きな価格ですけど、これは9月末まで据え置くということで、的確な対応を行っている」(NHK日曜討論、6月26日)
(4)公明党・山口那津男代表「政府が製粉会社などに売り渡す輸入小麦は、国際価格が2割から3割も上昇する中、製粉会社への販売価格を9月まで据え置きました」(政見放送で、6月29日)
(5)公明党・伊佐進一衆議院議員「(物価高騰対策をまとめました、として)値上がりの激しい輸入小麦は、国が一括購入していますが、製粉会社に卸す価格を9月まで据え置いています」(Twitter上で、6月29日)
ウクライナ情勢の影響を避けられた理由は…
しかしこれは、前述の通り「ミスリード」だ。
農林水産省農産政策部貿易業務課によると、小麦の製粉業者への売り渡し価格の改定のタイミングは毎年4月と10月の2回。それまでの半年間の国際価格、海上運賃、為替などの動向を反映した政府の買付価格の平均をもとに算定される。
これは2007年4月に食糧法の改正に基づき導入された「相場連動制」の運用上のルールであり、今回の物価高を受け、与党が対策をとったことで「据え置かれている」わけではない。
同課の担当者は「据え置き」表現について、BuzzFeed Newsの取材に「そもそも半期に1回価格を改定して、その間は固定するという制度が知られていないところもあるため、総理としてはわかりやすい言葉で説明されたのでは」と指摘した。
なお、今年の4月の改訂では2021年9月第2週〜22年3月第1週の価格を元に、17.3%値上げされた。これは21年10月期の19%に次ぐ過去2番目の上がり幅だ。消費者にこの値上げが反映されるのは7月ごろとされるという。
ただし、改定のタイミングがウクライナ情勢の悪化直前だったことから、その大きな影響を避けられている。値上げの主な原因はアメリカやカナダでの不作だという。
実際、政府の物価高に関する関係閣僚会議の資料(4月26日)にも、以下のように明記されている。
「輸入小麦について、足下でウクライナ情勢の影響により国際価格が更に上昇しているが、国内においては、その影響が本格化する以前の国際価格に基づき令和4年4月期の政府売渡価格が設定されており、製粉企業等への安定供給に着実に取り 組む」
緊急対策には100億円も
小麦の国際価格の指標となるアメリカ・シカゴ商品取引所の先物価格は、3月上旬の過去最高値をピークに現在は落ち着きつつあるが、それでも高騰した状態が続く。今後の情勢は不透明だ。
担当者は「価格を固定する間にも買い入れ価格は上昇している。もし売り渡し制度がなければ、ビビッドに価格が反映されることになるため、(現行の制度が)安定的に供給できるスキームにはなっているとも言えます」との見解も示した。
与党側が繰り返している「ウクライナ情勢で国際的な小麦の価格が2〜3割上昇するなか、製粉業者への売り渡し価格を9月まで据え置いている」という趣旨の発言は、以前からあるスキームが有効に働いている結果であり、ウクライナ情勢を受けて政府がアクティブに行動したからとは言い難い。
なお、現段階では国産小麦や米粉への転換などの「緊急対策」に予備費から100億円が投じられており、政府としても対策に乗り出している(図上)。しかしこれは、輸入小麦の価格に対する直接的なものではない。
そのうえで、ウクライナ情勢の本格的な影響が及ぶとみられる10月の価格の改定をめぐっては、岸田首相は前掲の通り、「突出して急騰している状態であれば、必要な抑制措置を講じる」としている。
物価高対策をめぐっては、政府が対策本部を設置。高騰するガソリン価格が政府の補助金により抑えられているなど、効果を出しているものもある。一方で選挙戦でも大きな争点となっていることから、その発信内容には注意が必要だ。
感想;
7月2日にマルエツに買い物に行ったら、ぶどうパンが138円⇒155円に上がっていました。
小麦粉が値上がりすると聞いていたが、やはり値上がりしたんだと実感しました。
ウクライナが悪化する前の4月の価格改定の影響が7月に出てきたのです。
それをあたかも、岸田首相の実績のようにPRされていたのです。
「聞く力」を強調されていますが、「聞くふりをする力」を素晴らしいです。
「やる力」ではなく、「やっているふりをする力」
騙される側が悪いのでしょう。
麻生財務相が「弱い子が虐められる。国も弱いから攻撃される」とまた本音がポロっと出ました。
麻生財務相の言葉を借りると「騙される方が悪い」になるのでしょう。