・『さっちゃんのまほうのて』のべあきこ/しざわさよこ作
幼稚園に通うさっちゃんは、みんなとままごと遊びをするのが大好き。ある日、おかあさん役をしたくなったのだが、強い女の子がそうさせてくれない。
<てのないおかあさんなんて、へんだもん>と。
さっちゃんは幼稚園を飛び出し、家に帰るなり、おかあさんに訴える。
「さちのてには、どうしてゆびがないの?」と。
おかあさんはやさしく説明してあげるが、さっちゃんは涙を流して、
<いやだ、いやだ>と言う。
幼稚園に行かなくなり、家でもあまり口をきかなくなる。
そのうちに、おかあさんが入院し、赤ちゃんを出産する。さっちゃんはおとうさんに連れられて病院に行き、赤ちゃんのほっぺをさわる。あかちゃんはかわいい両手をふってうれしそうにする。
<さちこも とうとう おねえさんね。>と、おかあさんが言う。
帰り道、おとうさんに手をつながれて歩きながら、さっちゃんはぽつんと言う。
<さっちゃん、ゆびが なくても おかあさんに なれるかな>
おとうさんは、しっかりとした声で答えた。
<なれるとも、さちこは すてきなおかあさんに、なれるぞ。だれにもまけないおかあさんに なれるぞ>
<それにへ さちこ こうして さちこと てを つあにで あるいていると、とっても ふしぎな ちからが さちこのてから やってきて おとうさんのからだ いっぱいになるんだ。さちこのては まるで まほうのてだね>
やがてさっちゃんんは再び幼稚園に行くようになり、みんなと元気にあそぶようになった。
晃子ちゃん(さっちゃんと同じく右手に指がない)は、両親の愛情と絵本の支えがあったからだろう、幼稚園でも小中高でも、指の変形している右手のことを気にしたり悩んだりする様子もなく、自分なりに生きる工夫をして成長していった。そして、大学と大学院では障害者支援の問題を専攻して、その後は、大学で社会福祉士を育てる講座などを担当する研究者になった。子どもの発達などを専門とする研究者と結婚し、二児の母となってからも、育児と研究者の仕事を両立させている。
・アメリカの絵本『がらくた学級の奇蹟』
作者のパトリシア・ボラッコさんは、少女時代に読み書きがうまくできない識字障害があったことから、特別学級に入れられて失望したが、その障害に気づいた先生が熱心に指導してくれたおかげで、識字障害を乗り越えることができたという、その経験は、日本でも広く読まれているポラッコさんの前作『ありがとう、フォルカーせんせい』に書かれている。
そして、この『がらくた学級の奇蹟』は、少年少女時代のポラッコさんが転校先の特別学級で出会ったピーターソン先生というすばらしい担任の教師が、様々な障害や病気のある子どもたち一人ひとりの秘められた才能を、いあkに開花させたかという実体験を絵本化したものだ。
・『みんなから みえない ブライアン』トル―ディ・ラドウィック作
小学校の低学年のクラスには、ひどくいじめられているわけではないが、いつも仲間に入れてもらえず、寡黙で孤立している子がいることがある。作者は、「みえない子」と表現する。
・『3つのなぞ』ジョン・J.ミューズ作
人生論あるいは生きがい論を寓話的な物語絵本に構成した作品だ。
三つのなぞについて尋ねると、レオはこう答えたのだ。
<もうそのこたえは、おまえさんが出してしまっていおる>
三つのなぞ「人」と「時」と「すること」
「時」を先送りしないで行動に移したことが、その後の様々な出会いと行動につながっていく。
・『いのる』長倉洋海作
世界各地における多様な祈りの情景と人間の表情が、頁をめくるごとに紹介されていくが、この写真絵本のなかほどのところで、長倉さんがたどり着いた死生観が、綴られている。
<いのることで、昔の人たち、宇宙、未来とも、つながることができる。そうすることで、わたしたちは『永遠』というものに、近づくことができるのかもしれない>
・絵本や童話を読んでいつも思うことがある。人は人生のなかで青年期から中年期にかけてはガツガツと仕事仕事の日々を過ごすのはやむを得ないにしても、50歳を過ぎたら、忙しくても、毎日20分は絵本や童話を読むライフスタイルを身につけるように心がけてはどうか、と。その日常を積み重ねていくなら、いつしか幼いことの無垢な感情を取り戻し、還暦を迎えることには、周囲から「あなた、変わったね」と言われるようになっているだろう。
・『ジャガーとのやくそく』アラン・ラビのヴィッツ作/カティア・チェン絵
・『わるいわるい王さまとふしぎな木』あべはじめ作
<けれど 王さまは、『しあわせの実』が、どんな実なのか、しっていました>という言葉で終わる。
・『サンバギータのくびかざり』松居友作/ボン・ペレス絵
・『パパ・ヴァイト――ナチスに立ち向かった盲目の人』
オットー・ヴァイトという盲目の人が、第二次大戦中のナチス・ドイツにおいて、同じ周夫外のある人々の命を救ったというドラマティックな出来事を描き出したものだ。
・『よあけ』エリー・シュルヴィッツ作
・『いつまでもいっしょだよ』みやじまくにこ作
日本航空ジャンボ機墜落事故で、小学生三年生だった健ちゃんを亡くした母親の美谷島邦子さんが文も絵も創作した。
・『パパの柿の木』谷口真知子作/亭島和洋絵
(日航機)事故の後、夫が機内で記した「子供達の事をよろしくたのむ」という遺書を見ては、泣いていた真知子さん。パパの代わりになろうとがんあるお兄ちゃん。いつもパパのシャツを抱いて涙して寝る弟。はじめて実った柿を涙ながらにほおばる家族・・・。
・『ずっと つながってるよ――こぐまのミシュカのおはなし』入江杏作
2000年の暮れに起きた東京の世田谷一家四人殺人事件の被害加増句の姉で隣に住んでいた入江杏さんが描いた。
・私は人間のいのちやこころを不条理に破壊さる戦争、災害、事故、公害、凶悪事件、貧困などについて、その根源にある問題を明らかにしたいとの思いで、半世紀余りにわたり取材・調査・執筆の活動を続けてきたが、特に80歳を過ぎてからは、それらの仕事をテーマ別に総括する作品群の執筆に取り組んでいる。この本は、その一冊でもある。
感想;
「絵本の力」河合隼雄/松居直/柳田邦男共著 ”絵本は時には言葉以上の力を発揮する!”
「生きる力、絵本の力」柳田邦男著 ”大人も読みたい絵本”
「大人にとっても絵本は良い」との柳田邦男さんのメッセージを実感しました。
これらに紹介されていた絵本をいくつか図書館に予約しました。
楽しみです。
幼稚園に通うさっちゃんは、みんなとままごと遊びをするのが大好き。ある日、おかあさん役をしたくなったのだが、強い女の子がそうさせてくれない。
<てのないおかあさんなんて、へんだもん>と。
さっちゃんは幼稚園を飛び出し、家に帰るなり、おかあさんに訴える。
「さちのてには、どうしてゆびがないの?」と。
おかあさんはやさしく説明してあげるが、さっちゃんは涙を流して、
<いやだ、いやだ>と言う。
幼稚園に行かなくなり、家でもあまり口をきかなくなる。
そのうちに、おかあさんが入院し、赤ちゃんを出産する。さっちゃんはおとうさんに連れられて病院に行き、赤ちゃんのほっぺをさわる。あかちゃんはかわいい両手をふってうれしそうにする。
<さちこも とうとう おねえさんね。>と、おかあさんが言う。
帰り道、おとうさんに手をつながれて歩きながら、さっちゃんはぽつんと言う。
<さっちゃん、ゆびが なくても おかあさんに なれるかな>
おとうさんは、しっかりとした声で答えた。
<なれるとも、さちこは すてきなおかあさんに、なれるぞ。だれにもまけないおかあさんに なれるぞ>
<それにへ さちこ こうして さちこと てを つあにで あるいていると、とっても ふしぎな ちからが さちこのてから やってきて おとうさんのからだ いっぱいになるんだ。さちこのては まるで まほうのてだね>
やがてさっちゃんんは再び幼稚園に行くようになり、みんなと元気にあそぶようになった。
晃子ちゃん(さっちゃんと同じく右手に指がない)は、両親の愛情と絵本の支えがあったからだろう、幼稚園でも小中高でも、指の変形している右手のことを気にしたり悩んだりする様子もなく、自分なりに生きる工夫をして成長していった。そして、大学と大学院では障害者支援の問題を専攻して、その後は、大学で社会福祉士を育てる講座などを担当する研究者になった。子どもの発達などを専門とする研究者と結婚し、二児の母となってからも、育児と研究者の仕事を両立させている。
・アメリカの絵本『がらくた学級の奇蹟』
作者のパトリシア・ボラッコさんは、少女時代に読み書きがうまくできない識字障害があったことから、特別学級に入れられて失望したが、その障害に気づいた先生が熱心に指導してくれたおかげで、識字障害を乗り越えることができたという、その経験は、日本でも広く読まれているポラッコさんの前作『ありがとう、フォルカーせんせい』に書かれている。
そして、この『がらくた学級の奇蹟』は、少年少女時代のポラッコさんが転校先の特別学級で出会ったピーターソン先生というすばらしい担任の教師が、様々な障害や病気のある子どもたち一人ひとりの秘められた才能を、いあkに開花させたかという実体験を絵本化したものだ。
・『みんなから みえない ブライアン』トル―ディ・ラドウィック作
小学校の低学年のクラスには、ひどくいじめられているわけではないが、いつも仲間に入れてもらえず、寡黙で孤立している子がいることがある。作者は、「みえない子」と表現する。
・『3つのなぞ』ジョン・J.ミューズ作
人生論あるいは生きがい論を寓話的な物語絵本に構成した作品だ。
三つのなぞについて尋ねると、レオはこう答えたのだ。
<もうそのこたえは、おまえさんが出してしまっていおる>
三つのなぞ「人」と「時」と「すること」
「時」を先送りしないで行動に移したことが、その後の様々な出会いと行動につながっていく。
・『いのる』長倉洋海作
世界各地における多様な祈りの情景と人間の表情が、頁をめくるごとに紹介されていくが、この写真絵本のなかほどのところで、長倉さんがたどり着いた死生観が、綴られている。
<いのることで、昔の人たち、宇宙、未来とも、つながることができる。そうすることで、わたしたちは『永遠』というものに、近づくことができるのかもしれない>
・絵本や童話を読んでいつも思うことがある。人は人生のなかで青年期から中年期にかけてはガツガツと仕事仕事の日々を過ごすのはやむを得ないにしても、50歳を過ぎたら、忙しくても、毎日20分は絵本や童話を読むライフスタイルを身につけるように心がけてはどうか、と。その日常を積み重ねていくなら、いつしか幼いことの無垢な感情を取り戻し、還暦を迎えることには、周囲から「あなた、変わったね」と言われるようになっているだろう。
・『ジャガーとのやくそく』アラン・ラビのヴィッツ作/カティア・チェン絵
・『わるいわるい王さまとふしぎな木』あべはじめ作
<けれど 王さまは、『しあわせの実』が、どんな実なのか、しっていました>という言葉で終わる。
・『サンバギータのくびかざり』松居友作/ボン・ペレス絵
・『パパ・ヴァイト――ナチスに立ち向かった盲目の人』
オットー・ヴァイトという盲目の人が、第二次大戦中のナチス・ドイツにおいて、同じ周夫外のある人々の命を救ったというドラマティックな出来事を描き出したものだ。
・『よあけ』エリー・シュルヴィッツ作
・『いつまでもいっしょだよ』みやじまくにこ作
日本航空ジャンボ機墜落事故で、小学生三年生だった健ちゃんを亡くした母親の美谷島邦子さんが文も絵も創作した。
・『パパの柿の木』谷口真知子作/亭島和洋絵
(日航機)事故の後、夫が機内で記した「子供達の事をよろしくたのむ」という遺書を見ては、泣いていた真知子さん。パパの代わりになろうとがんあるお兄ちゃん。いつもパパのシャツを抱いて涙して寝る弟。はじめて実った柿を涙ながらにほおばる家族・・・。
・『ずっと つながってるよ――こぐまのミシュカのおはなし』入江杏作
2000年の暮れに起きた東京の世田谷一家四人殺人事件の被害加増句の姉で隣に住んでいた入江杏さんが描いた。
・私は人間のいのちやこころを不条理に破壊さる戦争、災害、事故、公害、凶悪事件、貧困などについて、その根源にある問題を明らかにしたいとの思いで、半世紀余りにわたり取材・調査・執筆の活動を続けてきたが、特に80歳を過ぎてからは、それらの仕事をテーマ別に総括する作品群の執筆に取り組んでいる。この本は、その一冊でもある。
感想;
「絵本の力」河合隼雄/松居直/柳田邦男共著 ”絵本は時には言葉以上の力を発揮する!”
「生きる力、絵本の力」柳田邦男著 ”大人も読みたい絵本”
「大人にとっても絵本は良い」との柳田邦男さんのメッセージを実感しました。
これらに紹介されていた絵本をいくつか図書館に予約しました。
楽しみです。