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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「べらぼう」 第15回「死を呼ぶ手袋」~そなたも世の者も、金の力を信じすぎておるように思える

2025年04月14日 | 大河ドラマ・時代劇
「世の大事にまずはカネ。それが当世であることはわしでもわかる。
 しかし金というものはいざという時に米のように食えもせねば、刀のように身を守ってもくれぬ、
 人のように手を差し伸べてもくれぬ。
 然様に頼りなき物であるにも関わらず、そなたも世の者も、金の力を信じすぎておるようにわしには思える」

 松平武元(石坂浩二)の言葉だ。
 武元は単なる守旧派・既得権を守っている人物ではなかった。
 お金の危うさ、怖ろしさも理解していた。

 たとえば前回の検校の事件だ。
 不当に借金を背負わされて、娘を売るなど苦しむ人が多数。
 鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)も借金に苦しめられて本をつくる喜びを得られないでいる。
 あの平賀源内(安田顕)も事業がうまく行かずイライラ。

 今回のテーマは「お金」だった。
 これまで田沼意次(渡辺謙)は経済的な豊かさこそが幕府を安定させ、民を幸せにすると考えていたが、行き過ぎた「重商主義」が人を不幸にすることも武元の言葉で理解した。

 結果、意次と武元は理解し合い、共に家基(奥智哉)毒殺の真相を追うことに。
 これからは意見交換しながらいっしょに政治をおこなっていくかに見えたが……。

 いいですね、このバランス感覚。
 お金のもつ裏と表。
 貨幣経済万歳ではなく、その危うさも描いてみせた。
 ………………………………………………………

 吉原パートでは、蔦重(横浜流星)はこんな考えを持つように。
・耕書堂や吉原を面白いものでいっぱいにする。
・そうすると面白いやつがたくさん集まって来る。
・面白いやつが客になれば女郎たちは笑うことができる。

 今まで漠然と抱いていた「吉原を楽しい場所に」という思いが少しずつ具体化している。
 これから蔦重のまわりには戯作者や絵師など、たくさんの面白いやつが集まって来るのだろう。

 そんな蔦重の思いの根底にあるのは瀬川(小芝風花)と見た夢、交わした約束。

 それと蔦重と仲間たちはお金目的で動いているわけではない。
「市中で売れなくてもいい。誰と組めば一番楽しいか、だ」
「絵師なんてモテるために描くもの」
 面白いやつらだ。

 吉原も変わりつつある。
 若木屋与八(本宮泰風)も仲間に加わってひとつに。祭りという楽しい出来事が若木屋を変えた。
 りつ(安達祐実)は芸者の見番になって芸者を守る仕事に。
 市中との対立がもたらしたことだが、吉原を健全で楽しい場所にするために皆が動き始めた。

 江戸城パートでは松平武元が退場。
 一橋治済(生田斗真)の暗躍が表面化して来た。
 江戸城は伏魔殿。
 弾圧の歴史が始まりそうだ。

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AIに聞いてみよう!~1億円をもらえるけどカレーを一生食べられない。どちらを選ぶ?

2025年04月12日 | その他
 AIは「正解のない命題」にどのような答えを出すか?
 たとえば昨日Xに流れて来たこんな命題をChatGPTに聞いてみよう!

「1億円をもらえるけど、カレーを一生食べられなくなる。どちらを選ぶ?」

 まずは手始めにこんな質問をしてみる。
「1億円もらえるけど、カレーを一生食べられなくなる。
 これのメリット、デメリットを教えて下さい」

 ChatGPT………………………………………………………………
 おもしろいジレンマですね!
「一億円もらえるけど、一生カレーを食べられなくなる」という条件のメリットとデメリットを以下にまとめます。
 メリット
・金銭的自由が得られる(一億円)
 → 生活費、投資、趣味、旅行などに使えて、人生の選択肢が一気に広がります。
・他の美味しい食べ物は自由に食べられる
 → カレー以外なら制限なし。ラーメン、パスタ、焼肉、寿司などはOK。
・健康的な食生活の見直しになるかも
 → カレーって脂質・糖質が高いものも多いので、制限が逆に健康的かも。
・新しい味覚の発見
 → 「カレーがダメ」な分、他の国の料理や調味料に目を向けるチャンス。
 デメリット
・カレーが食べられない喪失感
 → 日本の国民食とも言えるカレーを一生禁止。寂しすぎる…。
・隠れカレーにも気をつける必要がある
 → カレーパン、カレーうどん、インド料理、スパイス料理などもNG。結構な制限。
・付き合いが悪くなる可能性も
 → 友達や同僚とカレー屋に行けない。カレー好きの恋人ができたらどうする?
・ルールの厳しさ次第では地雷が多い
 → 「カレー味のスナックもNG?」とか、「ハヤシライスは?」など、グレーゾーンの判断が難しい。
 ちなみに、カレー好きな人からしたら一億円でもちょっと考えちゃうかもしれませんね(笑)。
 あなたはどっちを選びそうですか?
 ……………………………………………………………………………

 なかなかやるな、ChatGPT!
 進化しているな、ChatGPT!
「ジレンマ」をしっかり理解している。
「健康的かも?」と曖昧な表現もできる。
「寂しすぎる…」と感情表現もできる。
「考えちゃうかもしれませんね(笑)」と(笑)も使える。

 メリット・デメリットの解答自体は常識的なものだが、
 人間だとここにたどり着くまでに時間がかかりそう。

 さて本題。
 AIは「1億円」と「カレー」のどちらを選ぶのか?
 こんな質問をしてみた。
「私は1億円を選びますが、あなたはどちらを選びますか?」

 ChatGPT………………………………………………………………
 なるほど!一億円、現実的で堅実な選択ですね。
 私が選ぶとしたら……ちょっと悩みますが、たぶん「カレーを選ぶ」かもしれません。笑
 人間のようにお金を使う必要はないし、カレーって国や文化によってバリエーションが無限にあるじゃないですか。
 スパイスの奥深さ、香り、辛さ、まろやかさ……永遠に味わっていたい世界観です!
 でもあなたが一億円を選ぶなら、私はその資金でカレー専門店をプロデュースして、
 あなたに「いい匂いだけ嗅がせる係」とか任命しちゃうかも。(もちろん拷問レベルにならない範囲で…)
 ということで、お互いに役割分担できそうですね。
 あなたは富を築き、私はカレーの探求者。最高のタッグじゃないですか?
 ………………………………………………………………………………………………

 AIが選んだ答えは「カレー」だった!
 理由は「人間のようにお金を使わないから」
 おまけに
「私はカレー専門店をプロデュースして、あなたに「いい匂いだけ嗅がせる係」とか任命しちゃうかも」と冗談まで言って来た。しかも──
「もちろん拷問レベルにならない範囲で…」とフォローまで入れている。
「スパイスの奥深さ、香り、辛さ、まろやかさ……永遠に味わっていたい世界観です!」
「あなたは富を築き、私はカレーの探求者。最高のタッグじゃないですか?」
 はちょっと文学的だ。

 すごいぞ、ChatGPT!
 何だ、こいつは? ChatGPT!
 ChatGPTの言葉はほとんど人間と変わらない。

 これからはAIと人間の区別をいかにつけるか?
 AIの言葉をいかに見分けるか?
 の時代になりそうだ。

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「チ。ー地球の運動についてー」を読み解く③~最終章の現実世界とは何だったのか?

2025年04月11日 | コミック・アニメ・特撮
 これまで「チ。」のテーマについて書いて来たが、今回は異端審問官のノヴァクである。

 地動説を唱える者を迫害してきたノヴァクは第22話で、その人生を否定される。
 月日が流れて、地動説が許容されて来たのだ。

 ノヴァクはアントニ司祭に言われる。
「地動説なんてものは単にひとつの仮説に過ぎない。
 唯一の真理と主張するのは危ういかもしれんが、単純に数学的過程としての発想だ。
 いったい、それに何の問題がある?
 まあ、もし大地が実際に動いているにしてもその前提で聖書を読み返し、再解釈に努めるのが我々の役目だ」

「新しい発見や意見を拒絶するのではなく検討してより聖書の理解を深める。
 そういう姿勢が今、信仰に最も必要なんじゃないのか?
 それにむしろ太陽が中心であるという地動説の考えは三位一体の自然科学的な裏付けとも捉えられる。
 これは神学的にも神を讃える素晴しい気づきかもしれんぞ」

 この他にもノヴァクは「地動説を異端視して迫害したのはノヴァクだけだ」と告げられる。

 哀れノヴァク!
 彼は今まで何のために生きてきたのか?
 彼の人生とは何だったのか?

 でも客観的に見ると、人の人生ってこんなもの。
 人は何らかの幻想を信じて生きている。
 宗教はその最たるものだが、地位・名誉・お金があれば幸せになれる、は本当か?
 幸せな家庭は幻想ではないのか?
 
「チ。」は「自分が大切にしている価値観が正しいのか」疑ってみようと語っている。
 …………………………………………

 議論となっている最終章(第24話・25話)について語ってみよう。

 最終章では、今まで曖昧だった時代と国が明らかにされ実在の人物が登場する。
・1468年 ポーランド王国
・アルベルト・ブルゼフスキ
 ブルゼフスキはコペルニスクスの師で、影響を与えた人物だ。

 1話~23話まではフィクションだったのに、なぜここで実在の人物が出て来たのか?
 第1章~3章(1話~23話)と最終章(24話・25話)の違いはなぜか?
 最終章は現実世界なのに、なぜフィクション世界のラファウが登場したのか?
 ラファウは死んだはずではなかったのか?

 ネットではこんな説が語られている。

・多次元宇宙説(パラレルワールド説)
 つまり第1章~3章と最終章は別次元の出来事だ、と考える説だ。
・ブルゼフスキの書いたフィクション説
 つまり第1章~3章はブルゼフスキの書いたフィクションで、ラファウは現実にいる人物をモデルにしてブルゼフスキが創造したキャラクターである、と考える説。

 僕個人としては「フィクション説」を採用したいが、腑に落ちない部分もある。
 そして、これが作者の魚豊先生の意図したことなのだと思う。
「腑に落ちないこと」「もやもやしていること」「答えが見つからないこと」
 これこそが魚豊先生の狙い。
 魚豊先生は読者や視聴者に大いに考えてほしい、迷ってほしいと思っている。
 つまり「タウマゼイン」であり「?」だ。
 今、僕は「フィクション説」を採用しているが、ある時、別の解釈が思い浮かぶかもしれない。

 ドラマのカタルシスとしては23話で終わらせた方がよかったんですけどね。
 作家は24話・25話を加えることで、読者・視聴者を混乱させる道を選んだ。
 地動説を探求した登場人物たちのように「美しい解釈を求めて考え続けること」。
 これこそが「チ。」という作品だからだ。


※関連記事
「チ。--地球の運動についてー」を読み解く①

「チ。--地球の運動についてー」を読み解く②

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「チ。ー地球の運動についてー」を読み解く②~タウマゼイン! 迷って疑って考え続けることこそが楽しい!

2025年04月10日 | コミック・アニメ・特撮
 天動説と地動説。
 ふたつの二律相反のテーマはその後さまざまな形で展開される。

・科学と宗教
・理性と信仰
・理性と感情
・人生の肯定と否定
・聖と俗
・自然と人工
・魂と肉体
・自由と権威
・信念と疑念

 科学と宗教に関しては、この物語の登場人物たちは別々に考えていない。
 地動説を唱える彼らは語る。
「神が作った世界だから美しくないわけがない」
「神が作った世界だから数学的な秩序があるはずだ」
「地動説を知ると神の偉業が見えて来るはずだ」
 彼らにとって科学と宗教は一体化している。分化していない。

 一方、ドゥラカのように神を否定する人物も出て来る。
 ドゥラカは「経済」こそが大切だと考えている。
 活版印刷、羅針盤、火薬──科学が経済的な豊かさをもたらすと気づいている。
 すなわちニーチェが語る「神の死」
「近代の始まり」だ。
 ………………………………………

 二律相反のテーマ。
 これはヨレンタとドゥラカ、そして最終章の主人公アルベルト・ブルゼフスキ(石毛翔弥)によってまとめられる。
 ヨレンタは言う。
「確かに真理を盾に暴力は加速し得る。
 もしかしたらわたしたちは地動説という権威を盲信し従っているだけかも」
 ドゥラカは言う。
「権威の中で生じる思考停止は何も宗教だけでなく、学問の中でも起こりうるんじゃないですか?」

 そう。
 宗教は地動説を唱える者を弾圧したが、ヨレンタたちも教会の人間に暴力をふるい殺害している。
 どっちもどっちだ。
 それどころか後の歴史が示すように、科学は大量破壊兵器を生みだし多くの人の命を奪った。
 これを考えれば宗教の方が科学よりはるかにマシだ。
 神を失った者たち、科学を信奉する者たちの方がはるかに残酷なことをしている。
 ドゥラカは科学の危うさを預言した。

 これが「チ。」という作品の深さなんですよね。
 宗教や信仰を時代遅れの愚かなものだと断じていない。
 科学が宗教を越える素晴しいものだと断じていない。
 では宗教と科学の対立軸を作者の魚豊先生はどう収めたか?

「信念はすぐ呪いになる。それがわたしの強さであって限界でもある」
 と地動説を信念とするヨレンタに信念に囚われることの危険を語らせ、
「信念を忘れた時に人は迷う」
「でも迷って。きっと迷いの中に倫理がある」
 と結論づける。

「迷うこと」「疑うこと」「迷って疑って考え続けること」
 この作品の後半はこのことを問い続ける。
 異端審問官のノヴァクには自分のおこなっている拷問が正しいのか? と疑ってほしい。
 異端解放戦線のヨレンタには、地動説が真理であるかゆえに自らが権威になり、他者を排除しているのではないかと疑ってほしい。 
 迷って自らの暴力性について考える時に倫理が生まれる。
 過度の信仰や信念の危うさを考えてほしい。
 …………………………………………

 迷って考え続ける時、人は不安定だ。
 モヤモヤしてスッキリしない。
 むしろ何も疑わず信念を持って生きている時の方が心地いい。

 しかし、「チ。」という作品はそう考えない。
 迷って考え続けてモヤモヤしている時の方が楽しくて素晴しい、と訴える。
 それが第24話の「タウマゼイン」であり最終話の「?」だ。

「チ。」については、今回でまとめるつもりだったが、まだ書いていないことがふたつある。
 なのでそれは次回!

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「チ。ー地球の運動についてー」を読み解く①~二律背反の物語「感動と好奇心」「名声とお金」

2025年04月09日 | コミック・アニメ・特撮
「チ。─地球の運動について─」を全話見た。

 地動説をめぐる人々の物語である。
 フベルト(CV速水奨)→ラファウ(CV坂本真綾)→オクジー(CV小西克幸)→バデーニ(CV中村悠一)→ヨレンタ(CV仁見紗綾)→ドゥラカ(CV島袋美由利)
 地動説はこれらに人々によって引き継がれる。

 最初、地動説は膨大な星の観測データを収納した「石の函」の中に。
 次はパディーニの論文。
 パディーニは「石の函」のデータと宇宙論の大家のデータで「地動説」を論文にする。
 しかし論文は焼失……。
 地動説はその概要を書いた簡単なオクジーの本に託される。
 しかし、その本も燃やされて……。
 地動説はドゥラカの頭の中の記憶に託される。
 ヨレンタはドゥラカの記憶をもとに原稿をつくり活版印刷で地動説を広く世に伝えようとするが、
 異端審問官の部隊がやって来て挫折……。
 地動説はふたたびドゥラカの記憶に託される。

 壮大なドラマだ。
「石の函」→「論文」→「概略本」→「記憶」→「印刷」→「記憶」
 綱渡りをするように「地動説」が危うい状態で引き継がれていく所が面白い。
 何しろ最後は「ドゥラカの記憶」ですからね。
 ドゥラカが死んでしまったら「地動説」は世界から消えてしまう。
 その結果がどうなるかはぜひアニメ本編を見て下さい。
 ………………………………………………

 さて以上が物語の縦糸。
「チ。」の魅力はその横糸にもある。
 つまり登場人物たちがかわす会話だ。

 ひとつは「感動」と「好奇心」
 地動説を知って登場人物たちはその美しさに感動する。
 ラファウはその感動のために死んでもいいと思い、
 オクジーは地上の世界を肯定し夜空を見上げることができるようになる。

 一方、地動説を「感動」や「好奇心」と捉えない人物も出て来る。
 バデーニは地動説を発表することで歴史に名を刻みたいと考えている。
 ドゥラカは地動説を活版印刷で出版して大儲けしたいと考えている。
 何と作者は「感動」と「好奇心」というテーマをバデーニとドゥラカで否定してしまった。
 ラファウとオクジーの動機は純粋だが、パディーニとドゥラカは現世的俗物的だ。
 
「チ。」は「二律背反」の作品なのだ。
 作者はひとつの主張だけを正しいとしない。
 必ず反論や否定を用意する。

 異端解放戦線のヨレンタの動機も二律背反的だ。
 ヨレンタは自分の役割を「地動説を次の世代に伝えること」と考えていて、これは純粋な動機だ。
 だが一方でこんなことも言う。
「わたしは取り返しているだけ。教会に奪われた自由と人生を。父と友を。
 個人の自由を制限する権威は打倒されるべき」
 この主張は美しさとは程遠く、復讐であり政治的だ。

 さて、「チ。」ではこの他にも二律背反が描かれるのだが、それは次回!


※参考
 二律背反(「広辞苑」より引用)
 相互に矛盾し対立する二つの命題が同じ権利をもって主張されること。
 カントは理性だけで世界全体の根本的問題を解決しようとすると二律背反に陥ることを指摘した。

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「べらぼう」 第14回「蔦重瀬川夫婦道中」~鳥山検校の気持ちを考えると今回はイマイチ

2025年04月07日 | 大河ドラマ・時代劇
 瀬川(小芝風花)の別れ。

 蔦重(横浜流星)の立場と鳥山検校(市原隼人)の立場のどちらに立つかで正解が違って来る。
 脚本は蔦重の立場を採用した。
 離縁状によって自由になった瀬川。
 蔦重といっしょに店を営み、所帯を持つことも可能だ。
 実際、ふたりはその方向で歩みを始めていたし、その間、幸せな時間を過ごした。
 しかし瀬川は思い直す。
「市民の外」である吉原者が「犯罪人の妻」を持ったら世間の目はますます厳しくなる。
 自分は蔦重の未来の妨げになる。
「夢を現実にしたいなら余計なものを抱いてはいけない」
 だから身を引く。
 残した言葉は──
「わっちは(蔦重のおかげで)溺れずにすんだ。女郎の闇に堕ちていかずにすんだんだ。」
「長い長い初恋を、ありがた山の鳶ガラス」

 一方、鳥山検校の立場に立つと瀬川は、検校に感謝はしているが好きな男を選んだ「情の薄い女性」になる。
「そなたの望みは何であろうとかなえると決めたのは私だ」
 瀬川の蔦重への思いを理解し、彼女の幸せを願って自ら身を引いた検校。
 検校の身を切るような思いを想像すると、つらくなる。
 瀬川の幸せをかなえたことで検校の心は満たされたのだろうか?

 だから僕は瀬川が蔦重と別れる理由は「検校」であってほしかった。
 瀬川にはこう手紙に書いてほしかった。
「検校のことを考えると、自分だけ幸せになるわけにはいかない」
「検校はずっと自分の心の中にいる」

 相手の幸せのために身を引いた検校で思い出すのが「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャンだ。
 鳥山検校=ジャン・バルジャン。
 ジャン・バルジャンも娘のコゼットの幸せを願い、身を引いた。
 だが、愛するコゼットを失ったジャン・バルジャンは孤独でつらい日々を送った。
 心が満たされることはなかった。
 心が満たされたのは、死の床についた時、コゼットが駆けつけて来た時だ。

 今回は言葉足らず、描写足らずのような気がした。
 検校の気持ちを考えると、つらくなる。
 彼にも救いがほしかった。

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「ホットスポット」~宇宙人をすぐに受け入れる人たち。人の心って柔軟で丈夫なのだ

2025年04月06日 | その他ドラマ
 ドラマ「ホットスポット」を見終わった。
 既視感があるのだが、僕はこのロケ地のホテルに泊まったことがあるような気がする。

 作品は面白かった!
 どうでもいい、どこにでもあるような日常会話。
 でもクスリと笑ってしまう。
 ドラマに大きなヤマや感情の起伏があるわけではない。
 でもジワジワと面白い。
「ブラッシュアップライフ」でも披露されたバカリズムさんの世界だ。

 今作の場合は、その日常会話が「高橋さん(角田晃広)=宇宙人」というテーマを中心に展開されるのだが、例によって話はあちこちに飛ぶ。
 高橋さんが宇宙人であることに一瞬驚くが、すぐに受け入れていつもの日常会話に戻っていく。笑

 まあ、人間の意識ってこんなものですよね。
 一瞬驚いたり戸惑ったりするが、すぐに慣れて日常生活を送っていく。
 突然、未来人や超能力者が現われても宇宙人が存在するんだからあり得るよね、と受け入れてしまう。
 人間の心って結構、柔軟で丈夫なのだ。
 すべてを素直に受け入れてしまえば、案外楽に生きられるのだ。
 少なくともこの作品の登場人物たちはそう。
 ……………………………………………

「ブラッシュアップライフ」との違いは、主人公が奮闘しないこと。
「ブラッシュアップライフ」の主人公はより良き生まれ変わりのために奮闘するのだが、
 今作の主人公・遠藤清美(市川実日子)は事件の「目撃者」だ。
 奮闘するのは宇宙人の高橋さんで、遠藤清美はときどき手を貸すが基本見ている。
 まわりの人たちも基本「目撃者」で、それぞれのリアクションの違いが面白さになっている。
「ブラッシュアップライフ」を期待していた方にはここが物足りない点かもしれない。

 個人的には、木南晴夏さん、安藤サクラさんの登場で「おおっ、素晴しい!」
 夏帆さんと志田未来さんが友達関係で出ていて感激!
「女王の教室」「十四才の母」では志田未来さんと夏帆さんは姉妹だった。

 特に今作では夏帆さんがいい味出してるんだよなぁ。
 夏帆さん推しとしては実に楽しかった。
 ………………………………………………

 さて、ここからは深読み。
 ネタバレになるのでネタバレされたくない方がスルーして下さい。


 最終話のラストは富士山のカットで終わるが、実は今作の陰の主役は「富士山」なのだ。
 この場所になぜ宇宙人の体を癒す温泉があったのか?
 この場所になぜ未来人をタイムリープさせるトンネルがあったのか?
 この場所になぜ超能力者がいたのか?
 すべては富士山の意思なのだ。
 富士山は50年後、富士山周辺が環境的にボロボロになることを阻止するために
 宇宙人が住みやすい環境をつくり、未来人を呼び寄せ、超能力者を作った。
 彼らが今後始まる環境汚染を阻止してくれると富士山は考えた。
 だから「髙橋さん=宇宙人」であることを町のほとんどの人が知るようになっても外にバレることはなかった。

 おそらくこれが「ホットスポット」の裏設定なのだと思う。
 今作は実はすごいSFなのだ!

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トランプ関税発動!~戦後の世界秩序を壊していくトランプ氏! 日本も考え直す時が来た?

2025年04月04日 | 事件・出来事
 トランプ関税発動!
 日本24% 中国54% 韓国25% ベトナム46% インド26% カンボジア49%、台湾32% 
 ベトナム46% タイ36% コロンビア49% 南ア30% EU20%……。

 この数字はどうやって算出されたのか?
 報道19:30(TBS・BS)に拠ると──
『貿易赤字額÷輸入額×1/2』
 らしい。

 何とまあ、おおざっぱな計算!
 世の中、もっと入り組んでいて複雑だろう。
 たとえば『アメリカに対する投資額』『アメリカ人の雇用数』などの要素が考慮されていい。
 考慮されれば数字は変わって来る。
 輸入品だってさまざまだ。
 自動車の部品もあれば、半導体もある。農作物もある。
 これらに関税がかかれば困るのはアメリカ。

 関税発動に関するトランプ氏の意図はこうだ。
①関税で得た収益で減税するぜ!
②他国の企業はアメリカに工場を作らざるを得なくなって、アメリカ人の雇用が増えるぜ!
③天然ガスを掘りまくるから燃料費は安くなる。安心しろ!

 でも関税発動によるマイナスはあまり考えていない様子。
①アメリカ国内の物価が上がる。インフレの加速。
 トランプ氏は「関税分を価格に転化するな」と言っているが、果たして?
②工場を移転するには3年~5年かかる。
③アメリカの人件費は高いから関税を払った方がマシと考える企業も。
 ※アメリカの人件費はメキシコの5倍。
 ……………………………………………………

 さあ、どうする、どうなるアメリカ経済?
 どうする、どうなる世界経済?

 以前も書いたが、自由経済、グローバル化の波は抑えられないと思うんだけどなぁ。

 たとえばアメリカの牛肉。
 メキシコで子牛をつくり、アメリカで子牛を育て、カナダで精肉してアメリカに戻す。
 ということをしているらしい。
 つまり牛肉にはメキシコとカナダの関税がかかることになる。

 こんなふうに世界は繋がっている。
 いわゆるサプライチェーンってやつだ。

 過去、アメリカのハル国務長官(1933~44)はこんなことを語っていた。
「自由貿易は平和をもたらし、高関税や貿易障壁、不公正な経済競争は戦争をもたらす」

 確かに。
 あの国と戦争したら「部品が来なくなるぞ」「小麦が来なくなるぞ」となったら、
 おいそれと戦争できない。

 戦後の世界秩序は、紆余曲折はあったが、ハル国務長官の語った「自由貿易の方向」で進んで行き、
 アメリカはそのリーダーであったはずだが、トランプ氏は逆に向かっている。

 というわけで、日本は韓国・中国と「東アジア共同体」をつくったらいいと思うんだけどなぁ。
 これができたらアメリカ、EUをはるかに越える経済圏ができる。
 東アジアの安定にも繋がる。

 実際、グローバルサウスの発言力は増しているし、
 EU、ASEANといった経済圏も機能している。

 どなたかが言っていたが、現在の日本はアメリカ一辺倒。
 アメリカ以外の選択肢・プランBを考えておいた方がいい。

 こういう構想力をもった政治家は現われないのかね?

 …………………………………………………

 以下はネットの反応。

・マジで部分的に中国と手を組んでもいいと思う

・アメリカ国民の半分はトランプの大統領就任を強烈に反対していたのに
 こいつの無能に巻き込まれているww

・これマジで中国が味方でアメリカが敵じゃね?
 中国が日本に対して何かした事一度もないし

・アメリカがTTPから抜けてくれてホント良かった
 今こそTTPに全力でシフトしようぜ

・まさか打倒アメリカで世界がひとつになる時が来ようとは

・狂乱物価でパニックになるのは米国民w

・報復にアメリカ産の米とバターとチーズの関税をゼロにすべき

・諸刃の剣だからねぇ
 特定の国にだけやるから自国が耐えられてかつ相手にダメージ与えられるのに全方位だと厳しいよなぁ

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「インターステラー」~五次元・相対性理論・重力・ブラックホールなど現代物理学が集約された作品!

2025年04月02日 | 洋画
 映画「インターステラー」はすごい作品だ。
 何しろ
・ブラックホール
・重力による時空の歪み
・相対性理論
・五次元空間
 といったテーマを映像で表現し、物語に昇華しているのだから。

 物語の舞台は環境悪化で人間が住めなくなった近未来の地球。
 人類は種として生き延びるためにふたつのプランを計画している。
・プランA:重力理論を解明し、人類全体を宇宙へ移住させる。
      具体的には巨大なコロニーを造ること、もしくは移住できる惑星に移動すること。
・プランB:移住できる惑星に受精卵を持ち込み、新しい人類を作る。

 このプランが生まれた背景には謎の存在によって、木星の近くに「ワームホール」が作られたことがある。
 このワームホールを通り抜ければ別の銀河に行けるのだ。
 現在、人類が生存できる可能性のある惑星は3つある。
 主人公の元宇宙飛行士クーパー(マシュー・マコノヒー)は仲間と共にワームホールを通って
 3つの星の探査に向かう。

 しかし現実は甘くない。
 クーパーたちは最初の星、二番目の星が生存に適さないことを知る。
 プランAを実行するための「重力理論の解明」が地球で頓挫していることを知る。
 絶望の中、クーパーは三番目の惑星に向かい、プランBを実行しようとするが、
 あるトラブルが起きてブラックホール「ガルガンチュア」に呑み込まれてしまう……。
 …………………………………………………

 これ以上書くとネタバレになってしまうので詳しく書きませんが、
 この後、上記の問題を一気に解決する出来事が起きます!
 重力の問題を解決して人類は宇宙に飛び出します!
 前半のクーパーの家で起こったポルターガイスト現象の伏線も回収されます!

 どう解決されるかは作品をぜひ見ていただきたいのですが、ともかくお見事!
 とはいえ実はここが今作の難解な部分でもある。
 以下、映画「インターステラー」を理解するために必要な物理学的なことを列挙しておきます。
 文系の理解なので間違っているかもしれませんが……。

①相対性理論
 ブラックホール・ガルガンチュアの近くにある一番目の星ではその影響を受けて重力が強い。
 この星では「1時間が地球の約7年に相当」する。

②ワームホール(Wormhole)
 宇宙空間の異なる2点をトンネルのように結ぶ仮説上の構造。
・通常の宇宙旅行 → A地点からB地点まで移動するには、何十年・何百年もかかる。
・ ワームホール → A地点とB地点の時空を折りたたみ、トンネルを通って一瞬で移動。
 これを2次元的に例えると、
 紙に点Aと点Bを描いて端と端を結ぶように折りたたむと、点Aと点Bが直接つながる。

③回転ブラックホール(カーブ・ブラックホール)
 本作で登場するガルガンチュアは古い巨大なブラックホール。
 ほぼ光速で自転しているため、周囲の時空を大きく歪める。
 結果、一般的なブラックホールとは違う特殊な現象が起こる。
 体がマヨネーズのようにならない。

④五次元空間
 クーパーが入り込んだ「テサラクト」とは五次元空間。
 過去・現在・未来を自由に移動したり見渡したりすることができる。
 ちなみに次元の説明をすると──
・一次元(1D):線(長さだけ)
・二次元(2D):平面(長さ+幅)
・三次元(3D):立体(長さ+幅+高さ)
・四次元(4D):三次元に「時間」を加えたもの(時間は過去→未来へ流れる)
・五次元(5D):時間を自由に移動できる空間

⑤重力は次元を突破できる。
 つまりクーパーが娘マーフィに送ったモールス信号はこれ。

 今作で映像化されたワームホールやブラックホールの内部は物理学的根拠で作成されたものらしい。
 これだけでも見る価値があると思います。
 

※関連動画
 映画「インターステラー」特別予告(YouTube)

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「べらぼう」 第13回「お江戸揺るがす座頭金」~おまえは骨の髄まで女郎だった

2025年03月31日 | 大河ドラマ・時代劇
「不法かつ巧妙な手口で蓄財をなし得た検校たちはもはや弱い者にあらず!」

 相手を借金漬けにしてすべてを奪う盲(めしい)の当道座の者たち。
 これで鱗形屋は贋版に手をつけてお咎め。
 旗本は娘を売ることになったり家督を求められたり。

 この時代は「貨幣経済」で「米経済」ではないんですね。
 だから米で給料をもらっている武士は米の値段が下がれば困窮する。
 逆に商人は力を増して来る。
 士農工商で社会秩序を維持しようとしても、この流れは抑えられない。
 当初は弱者救済の当道座の特権だったが、この既得権で富を貪るようになって来た。

 この時代の流れを理解して糺そうとする田沼意次(渡辺謙)。
 その方法のひとつが「重商主義」「貨幣経済への移行」。
 もうひとつが「既得権の打破」。

 この作品は「経済」で江戸時代を表現している。
 面白い。実に面白い。
 ただ、これを推進する田沼意次もなかなか腹黒く、自分の権力維持に余念がない。
 まあ、権力を持たなければやりたいことは出来ませんからね。
 権力を手放せば、松平武元(石坂浩二)らが力を持って、たちまち昔に戻ってしまう。
 さて江戸城での政争も面白くなって来ました。
「西の丸様」の徳川家基(奥智哉)などは、部下の管理不行届きで今回面目を潰された。
 …………………………………………

 そんな中、蔦重(横浜流星)は悩んでいる。
 商売がたきの鱗形屋の没落を喜べないのだ。
「皆がツキまくる世ってのはねえもんですかね?
 誰かのつまづきの上にツキが成り立っているのは……」

 資本主義社会が到来すつつある時代に蔦重は戸惑っている。
 相手を追い落とすことに抵抗を持っている。
 この点、今回の蔦重は田沼意次と対比するキャラになっている。

 この悩みに対して平賀源内(安田顕)は「本屋」の意義を説く。
「本ってなぁ、人を笑わせたり、泣かせたりできるじゃねぇか。
 んな本に出会えたら人は思うさ『あぁ、今日はついてた』って」
「本屋ってなぁ、ずいぶんと人につきを与えられる商いだと俺ゃ思うけどね」

 この源内の言葉で蔦重は瀬以(小芝風花)とのことを思い出した。
 本は瀬以を慰め喜ばせた。
 本はふたりを繋いでくれた。
 しかし、ふたりを繋いでいた本が戻って来た……。
 …………………………………………

 鳥山検校(市原隼人)と瀬以。
 僕はすっかりいい夫婦になったと思っていたが、間違っていた。

 瀬以の心はいまだに蔦重にあり、鳥山検校はこれを見抜いていた。
 寂しさ、悔しさも感じていた。
「なぜ吉原の者といる時のように声がはずまぬ?」
「しょせん私は客ということか?」
「いくらカネを積まれようとも心は売らぬ。おまえは骨の髄まで女郎だった」

〝骨の髄まで女郎だった〟
 瀬以の心をえぐるすごい台詞だ。
 同時に哀しい。
 これを受けて瀬以。
「重三はわっちにとって光にござりんした」と蔦重に思いがあったことを認める。
 一方で検校にわびる。瀬以も理解していた。
「人の心を察し過ぎる主さんをわっちのいちいちが傷つけているということを」
「人というのはどうしておのれの心ばかりは騙せぬのでありんしょう?」

 すごいやりとりでした。
「すごい」「お見事」という他ない。
 これに加えて検校の逮捕という出来事が起こるのだから、脚本の森下佳子さんは意地悪だ。
 僕はどうしても鳥山検校に感情移入してしまうのだが、さて次回、検校は何を語るのか?
 瀬以の言葉も待ち遠しい。


※追記
 うつせみと新之助はあのまま足抜けだった。
 身代金のエレキテルと神隠しということで、このまま見逃してほしいのだが……。

コメント (4)
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