相棒 「最後の告白」～真実を明らかにしても誰も救われないし、幸せになれない。しかし不幸な人は出て来る

「真実を明らかにしても誰も救われないし、幸せになれない。しかし、不幸な人は出て来る」
「どんな事情があれ、われわれ警察官は真実から目を逸らせてはならない。僕はそう思いますよ」
　あくまで法律に忠実な右京さん（水谷豊）と、優しすぎる相棒たち。
　『相棒』でたびたび描かれてきたテーマである。
　これは享（成宮寛貴）も例外ではなかった。

　では、今回の場合、真実が明らかにされてどうなったか？
　ホームレスの滝沢（佐藤正宏）は抱えていた罪の意識を吐き出すことで、穏やかに死ぬことができた。
　娘・久美子（佐藤めぐみ）は父親・岩倉圭一（ダンカン）の愚かだが、無器用な愛情を知ることができた。
　中根署の堀江係長（山口良一）も退職することになったが、隠していたことが公にされ、責任を取ることで心が晴れやかになった。

　人はウソをつく。
　ウソがばれたくなくて、さらにウソを重ねる。
　でも、ウソを抱えている限り、解放されないんですね。
　いつかバレるのではないかと思って、不安でいっぱいになる→堀江課長。
　罪の意識で押し潰されそうになる→ホームレス滝沢。
　あるいは、心が開けなくて偽りの人間関係を築くことになる→死刑囚・岩倉。

　一方、ウソや隠蔽を重ねても平気な人たちもいる。
　警察庁の甲斐峯秋（石坂浩二）らがそうだ。
　保身のため、組織を守るため、彼らは平気でウソをつき、隠蔽する。
　ウソや隠蔽を重ねても、彼らには何の呵責もない。

　娘・久美子と父・岩倉の関係はなかなかあたたかいドラマだった。
　父親からプレゼントされた赤ん坊用の靴下。
　実はそれは父親が盗んだ物だった。
　そして父親は、それが盗品であることを娘に知られたくなくて、やってもいない他人の罪をかぶった。
　愚かな父親。
　無器用な父親。
　真実を知った久美子は岩倉に対して、きっとこう思ったに違いない。
「まったく、この人は本当にバカで無器用なんだから」
　罪は罪だが、最後に父と娘が心から交流ができたことはよかったと思う。