漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0201

2020-05-18 19:23:52 | 古今和歌集

あきののに みちもまどひぬ まつむしの こゑするかたに やどやからまし

秋の野に 道もまどひぬ 松虫の 声する方に 宿やからまし

 

よみ人知らず

 

秋の野で道に迷ってしまった。私を「待つ」という松虫の声のする方で宿を借りようか。

0200 で紹介した通り、「まつむし」は鈴虫のこと。「からまし」は「借らまし」で、語尾の「まし」は反実仮想を表す助動詞。「反実仮想」ですから、実際にはその方向に宿などないことがわかっていて、「それでも『待つ』虫が私を呼んでいるのだからそっちに行ってみるか」と詠んでいるのは、風流人の粋、おどけなのか、それとも陽も落ちて暗くなった秋の野で道もわからなくなり、途方に暮れた挙句のなげやりな気持ちなのでしょうか。