ひさかたの つきのかつらも あきはなほ もみぢすればや てりまさるらむ
ひさかたの 月の桂も 秋はなほ もみぢすればや 照りまさるらむ
壬生忠岑
月に生えるという桂の木もやはり紅葉するから、秋は月が一段と明るく光り輝くのだろうか。
「ひさかたの」は「月」に掛かる枕詞。月に桂の木が生えているという中国の伝説を踏まえ、秋の月が他の季節より一段と美しく輝くのは、その桂の木が紅葉するからだろうかと推定して見せた歌です。秋に美しく輝く月を見れば、その月明かりに照らされる紅葉の美しさを詠むのが普通でしょうが、逆にその月の美しさの理由を月に生える桂の葉が色づくことに求めた機智。