漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0207

2020-05-24 19:36:44 | 古今和歌集

あきかぜに はつかりがねぞ きこゆなる たがたまづさを かけてきつらむ

秋風に 初雁が音ぞ 聞こゆなる 誰が玉づさを かけて来つらむ

 

紀友則

 

 秋風に乗って初雁の声が聞こえる。誰の手紙を携えて来たのだろうか。

 「たまづさ」は「たまあづさ」が変化した語で、使者や手紙を意味する語。これが「たまづさの」となれば、「使ひ」や「妹(いも)」にかかる枕詞ですが、用例としては枕詞の方が古く、それが転じて使者そのものや、さらには使者が携えてくる手紙を意味するようになったようです。雁が手紙を運んでくるというのは、中国は漢の時代の「雁信」の故事(※)から。

 

(※)「漢書」蘇武伝。匈奴(きょうど)に捕らえられた前漢の蘇武が、手紙を雁の足に結びつけて放ったとされる。