きみしのぶ くさにやつるる ふるさとは まつむしのねぞ かなしかりける
君しのぶ 草にやつるる ふるさとは まつ虫の音ぞ かなしかりける
よみ人知らず
あなたをしのぶという名の忍草がはびこってみすぼらしくなってしまったこの家であなたを待っていると、松虫の声を聞くのも悲しいことだ。
「しのぶ」に、愛しい人を忍ぶ思いと、その人が通ってきてくれなくなった家に生い茂る忍草の両方の意を込めています。忍草は「しだ類の一種。のきしのぶ。古い木の幹や岩石の表面、古い家の軒端などに生える。」(『学研全訳古語辞典』より)とのこと。また、「まつ」も人を「待つ」と「松虫」とを掛けていますね。なお、「まつむし」は鈴虫のことで、まつむしを詠み込んだ歌がここから四首続きます。では、今マツムシと呼ばれている虫は古代では何と言ったかというとこれが「すずむし」だそうです。どういうわけか、いつの時代かに入れ替わったのですね。 笑
ようやく200番まで来ました。まだまだ先は長いですが、よろしくお付き合いください。 m(_ _)m