あきのよの あくるもしらず なくむしは わがごとものや かなしかるらむ
秋の夜の 明くるも知らず 鳴く虫は わがごとものや かなしかるらむ
藤原敏行
秋の夜が明けるのも知らずに鳴く虫は、私と同じように悲しい気持ちなのだろうか。
作者の藤原敏行(ふじわらのとしゆき)は、巻四「秋歌上」の冒頭 0169 に続いての登場。古今集に19首が入集していますが、そのうち八首が秋歌です。また、0578 の次の歌は、この 0197 ととても良く似ています。ほととぎすが登場しますから季節としては夏(収録は巻第十二「恋歌二」)ですが、同じ心情を詠んでいますね。
わがごとく ものやかなしき ほととぎす ときぞともなく よただなくらむ
わがごとく ものやかなしき ほととぎす 時ぞともなく 夜ただ鳴くらむ