あきのよは つゆこそことに さむからし くさむらごとに むしのわぶれば
秋の夜は 露こそことに 寒からし 草むらごとに 虫のわぶれば
よみ人知らず
秋の夜は、草におりた露が特に冷たいのだろう。草むらごとに虫がせつなく鳴いていることよ。
夜露は季節を問わず降りるけれども、秋の夜はそれがひときわ冷たいのであろうということを、草むらのそこかしこで鳴く虫の声から想像しています。「寒からし」は「寒くあるらし」を縮めた表現。「わぶ」は「侘ぶ」で、ここではつらく思う、せつなく思う、寂しく思うといった意。