かくしつつ とにもかくにも ながらへて きみがやちよに あふよしもがな
かくしつつ とにもかくにも ながらへて 君が八千代に あふよしもがな
仁和の帝
このようにこれからもあなたの長寿を祝いながら、私自身もとにかく長生きして、あなたの八千代の齢に接したいものだ。
詞書には「仁和の御時、僧正遍昭に七十の賀たまひける時の御歌」とあり、作者が仁和の帝(第58代光行天皇)であることと、僧正遍昭の長寿を祝う歌であることが分かります。光行天皇の御製は 0021 に続いて二度目の登場。古今集への入集はこの二首となります。
「かくしつつ」はさらっと読むと「隠しつつ」かと思ってしまいます(笑)が、「かく」は「斯く」で、「このように」の意の副詞。遍昭の長寿を祝う祝宴の場で、「これからも毎年このように宴を催し、自分も長生きしてあなたの長寿を祝い続けよう」と詠んだのですね。帝から臣下に対する最大限の祝意の表現でしょう。そうしてみると、同じく長寿を祝う歌である 0021 の「君」も、あるいは僧正遍昭を指していたのかとも思えてきますが、本当のところはわかりません。