みねたかき かすがのやまに いづるひは くもるときなく てらすべらなり
峰高き 春日の山に 出づる日は 曇る時なく 照らすべらなり
藤原因香
峰の高い春日山に出た日は、曇る時もなく地上を照らし続けるでしょう。
「出づる日」は誕生した皇子の比喩。詞書には「春宮の生まれたまへりける時に、参りてよめる」とあります。
作者の藤原因香(ふじわら の よるか)は、0080 以来久々の登場。そこでは「藤原因香朝臣」とされれていた作者名が、ここでは「典侍(ないしのすけ)藤原因香朝臣」と書かれており、以降の歌でもこれが踏襲されます。典侍の職に就く前と後それぞれの時点での詠歌なのでしょう。
この巻で唯一、誕生を祝うこの歌をもって巻七「賀歌」は完結。次の 0365 から巻八「離別歌」となります。