やまたかみ くもゐにみゆる さくらばな こころのゆきて をらぬひぞなき
山高み 雲居に見ゆる 桜花 心の行きて 折らぬ日ぞなき
凡河内躬恒
山が高いので雲のあたりに見える桜花。そこまで行くことはできないけれども、心だけはそこに行って枝を折らない日はないのだよ。
0357 の詞書にある通り、長寿祝賀の宴の席で屏風に書きつけられた歌とのことですが、「四季の絵」が描かれた屏風とありますので、ここで描写されているような絵が描かれていたのでしょう。祝賀の宴席での歌ということで「賀歌」に収められていますが、この歌自体には祝賀の表現は特に盛り込まれていないように見えます。あるいは、祝賀の主人公を山頂近くに咲き誇る桜に喩えてのものでしょうか。