漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 539

2024-10-06 06:04:47 | 貫之集

ひとしれず ものおもふときは なにはがた あしのそらねも せられやはする

人知れず もの思ふときは 難波潟 葦のそらねも せられやはする

 

人知れず物思いに悩んでいるときは、難波潟の葦の空根ならぬ空寝(眠ったふり)をしようにもそれもできはしない。

 

 「空根」は、地上に出ている根の意で、同音の「空寝」を掛けています。
 この歌と非常に良く似た貫之歌が新千載和歌集(巻第十一「恋一」 第1134番)に見られます。どちらかを元に、もう一方は改作として詠まれたのかもしれませんね。

 

ひとしれず ものおもふときは なにはなる あしのしたねぞ したにながるる

人知れず もの思ふときは 難波なる 葦の下根ぞ 下に流るる