ひとしれず ものおもふときは なにはがた あしのそらねも せられやはする
人知れず もの思ふときは 難波潟 葦のそらねも せられやはする
人知れず物思いに悩んでいるときは、難波潟の葦の空根ならぬ空寝(眠ったふり)をしようにもそれもできはしない。
「空根」は、地上に出ている根の意で、同音の「空寝」を掛けています。
この歌と非常に良く似た貫之歌が新千載和歌集(巻第十一「恋一」 第1134番)に見られます。どちらかを元に、もう一方は改作として詠まれたのかもしれませんね。
ひとしれず ものおもふときは なにはなる あしのしたねぞ したにながるる
人知れず もの思ふときは 難波なる 葦の下根ぞ 下に流るる