漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 558

2024-10-25 06:52:16 | 貫之集

かざすとも たちとたちにし なきなには ことなしぐさも かひやなからむ

かざすとも 立ちと立ちにし なき名には ことなし草も かひやなからむ

 

ことなし草をかざして何もなかったと言っても、すっかり立ってしまった浮き名には、役には立つまい。

 

 「ことなし草」は忍ぶ草の異名で、ここではもちろん「事無し」の意がかかっていますね。
 この歌は、後撰和歌集(巻第十七「雑三」 第1220番)に入集しています。そちらには

しそくに侍りける女の、をとこになたちて、かかる事なむある、人にいひさわげといひ侍りければ

との詞書が付され、また第二句が「立ちと立ちなむ」、第四句が「こなし草の」とされています。