漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 557

2024-10-24 06:05:40 | 貫之集

ももはがき はねかくしぎも わがごとく あしたわびしき かずはまさらじ

百羽掻き 羽掻く鴫も わがごとく 朝わびしき 数はまさらじ

 

何度も何度も羽ばたきをする鴫のその羽ばたきの数も、一人寂しく明けた朝の私のわびしさには勝ることはないであろう。

 

 類歌が 260 にも見え、また両歌は古今集 0761 のよみ人知らずの歌を踏まえています。上記は、「数がまさらない」のは読み手のわびしさの数のことと解釈しましたが、もととなった古今集歌を踏まえ、これを「眠れぬ夜に打った寝返りの数」ととらえる説もあるようです。
 なお、この歌は拾遺和歌集(巻第十二「恋二」 第724番)に入集しています。

 

てるつきを ひるかとみれば あかつきに はねかくしぎも あらじとぞおもふ

照る月を 昼かと見れば 暁に 羽掻く鴫も あらじとぞ思ふ
(貫之集 260)

 

あかつきの しぎのはねがき ももはがき きみがこぬよは われぞかずかく

暁の 鴫の羽がき 百羽がき 君が来ぬ夜は われぞ数かく
(古今和歌集 0761)