あまつかぜ くものかよひぢ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ
天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
良岑宗貞
天の風よ、雲の中の通い路を閉ざしておくれ。天女の舞う姿をしばらく地上にとどめておきたいから。
詞書には「五節の舞姫を見てよめる」とあります。「五節の舞」とは、新嘗祭に宮中で行われた少女たちの舞のこと。「新嘗祭」は、天皇がその年の収穫を神に感謝する宮中祭事ですね。百人一首(第12番)にも採録された名歌で、作者の良岑宗貞(よしみね の むねさだ)は僧正遍昭の俗名。出家するより前に詠まれた歌ということですが、百人一首では遍昭作とされていますね。