あさみこそ そではひつらめ なみだがは みさへながると きかばたのまむ
浅みこそ 袖はひつらめ 涙川 身さへ流ると 聞かばたのまむ
在原業平
気持ちが浅くて涙川も浅いからこそ袖が濡れるのでしょう。身体ごと流されてしまうと聞いたら、あなたの気持ちを本気にしましょう。
0617 の藤原敏行のラブレターに対する返答の歌。なのにどうして作者が女性ではなく業平なのかというと、詞書に「かの女に代りて返しによめる」とあります。敏行から思いを寄せられた女性の気持ちに準えて詠んだ代作というわけですね。恋しいあまりの涙に袖を濡らしているという敏行歌に対して、思いが浅いから身体は濡れずに袖が濡れるだけなのでしょうと、なかなか辛辣な返しです。