やましなの おとはのやまの おとだにも ひとのしるべく わがこひめかも
山科の 音羽の山の 音だにも 人の知るべく わが恋ひめかも
よみ人知らず
この歌、ある人、近江の采女のとなむ申す
噂で人に知られるような、そんな恋を私がするものだろうか。いや、しはしない。
第一句・第二句は「音」を導く序詞。「音羽の山」は、その名前から「音(=噂)」との連想で詠まれることの多い歌枕ですね。左注に、この歌は近江の采女作との説があるとの記載がありますが、この「近江の采女」とは誰なのかはわかっていません。