漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0462

2021-02-03 19:11:54 | 古今和歌集

なつくさの うえはしげれる ぬまみづの ゆくかたのなき わがこころかな

夏草の 上はしげれる 沼水の 行く方のなき わが心かな

 

壬生忠岑

 

 表面に夏草がしげっているところでは沼水が流れずによどんでいるように、行く末のわからない我が心であることよ。

 生い茂る夏草に流れを遮られたよどんだ光景が、そのまま自身の心持ちを表していると感じての詠歌。隠し題は「ゆくかたのなき」に詠み込まれた「かたの(交野)」です。大阪北東部の地域で、現在も交野市として名称が残っていますね。

  


古今和歌集 0461

2021-02-02 19:59:28 | 古今和歌集

あしひきの やまべにをれば しらくもの いかにせよとか はるるときなき

あしひきの 山辺にをれば 白雲の いかにせよとか 晴るる時なき

 

紀貫之

 

 山の近くにいると、白雲の晴れるときはないのと同じように心が晴れることがない。いったい白雲は私にどうしろと言うのだろうか。

 「あしひきの」は「山」にかかる枕詞。枕詞としてはかなりポピュラーですね。数えてみたら、古今和歌集では19首に使われていました。隠し題は「いかにせよとか はるるときなき」に詠み込まれた「よどがは(淀川)」。現在も淀川という名称ですね。

 


古今和歌集 0460

2021-02-01 19:05:04 | 古今和歌集

うばたまの わがくろかみや かはるらむ かがみのかげに ふれるしらゆき

うばたまの わが黒髪や 変るらむ 鏡の影に 降れる白雪

 

紀貫之

 

 私の黒髪が変わったのだろうか。鏡映る私には白雪が降りかかっているよ。

 「うばたまの」は「黒」「夜」などにかかる枕詞。鏡に映る白髪を雪に例え、自らの老いに嘆息しての詠歌ですね。隠し題は「わがくろかみや かはるらむ」と詠み込まれた「かみやがわ(紙屋川)」で、京都の桂川に流れ込む、現在では天神川と呼ばれている川とのことです。

 早いもので今日からもう2月。巻第十「物名歌」も残り八首となりました。コロナの収束が見えない中、なかなか気持ちも切り替わりませんが、それを嘆いていても仕方ありませんので、前を向いて過ごしていきたいですね。 ^^
 引き続きお付き合いください。