とふひとも なきやどなれど くるはるは やへむぐらにも さはらざりけり
とふ人も なき宿なれど くる春は 八重葎にも さはらざりけり
訪ねて来る人もない家なのに、春は生い茂った雑草にも妨げられることなくやって来る。
この歌は、新勅撰和歌集(巻第一「春上」 第8番)にも入集しています。
古典和歌に詠まれる「八重葎」は特定の植物名ではなく、幾重にも重なって茂る雑草のこと。084 にも登場している他、次の百人一首歌(第47番)も有名ですね。
やへむぐら しげれるやどの さびしきに ひとこそみえね あきはきにけり
八重むぐら しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり
恵慶法師