漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 206

2023-11-08 06:03:15 | 貫之集

むめのかの かぎりなければ をるひとの てにもそでにも しみにけるかな

梅の香の かぎりなければ 折る人の 手にも袖にも しみにけるかな

 

梅の香りは限りがないので、枝を折る人の手にも袖にもその香りがしみ込んでしまうことよ。

 

 古典和歌において「袖」は、涙に濡れるのと並んで香を移すものとして多く詠まれていますね。古今和歌集をさらっと見ただけでも、003200470139 など、いくつも登場します。

 

0032

をりつれば そでこそにほへ うめのはな ありとやここに うぐひすのなく

折りつれば 袖こそ匂へ 梅の花 ありとやここに 鶯の鳴く


よみ人知らず

 

0047

ちるとみて あるべきものを うめのはな うたてにほひの そでにとまれる

散ると見て あるべきものを 梅の花 うたてにほひの 袖にとまれる


素性法師

 


0139

さつきまつ はなたちばなの かをかげば むかしのひとの そでのかぞする

五月待つ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする

 

よみ人知らず