むめのかの かぎりなければ をるひとの てにもそでにも しみにけるかな
梅の香の かぎりなければ 折る人の 手にも袖にも しみにけるかな
梅の香りは限りがないので、枝を折る人の手にも袖にもその香りがしみ込んでしまうことよ。
古典和歌において「袖」は、涙に濡れるのと並んで香を移すものとして多く詠まれていますね。古今和歌集をさらっと見ただけでも、0032、0047、0139 など、いくつも登場します。
をりつれば そでこそにほへ うめのはな ありとやここに うぐひすのなく
折りつれば 袖こそ匂へ 梅の花 ありとやここに 鶯の鳴く
よみ人知らず
ちるとみて あるべきものを うめのはな うたてにほひの そでにとまれる
散ると見て あるべきものを 梅の花 うたてにほひの 袖にとまれる
素性法師
さつきまつ はなたちばなの かをかげば むかしのひとの そでのかぞする
五月待つ 花橘の 香をかげば 昔の人の 袖の香ぞする
よみ人知らず