漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

貫之集 396

2024-05-16 05:28:27 | 貫之集

七月七日

ひととせに ひとよとおもへど たなばたの あひみむあきの かぎりなきかな

一年に 一夜と思へど たなばたの あひ見む秋の かぎりなきかな

 

七月七日

一年に一夜しか逢えないとはいえ、七夕の夜の彦星と織姫との秋の逢瀬は、いつまでも限りなく続いていくのであるよ。

 

 このあと 408 にも、第三句までほぼ同一の歌が登場します。
 この歌は、拾遺和歌集(巻第三「秋」 第150番)に入集しています。

 

 

 


貫之集 395

2024-05-15 05:28:04 | 貫之集

六月祓え

みそぎつつ おもふこころは このかはの そこのふかさに かよふべらなり

みそぎつつ 思ふ心は この川の 底の深さに かよふべらなり

 

六月祓え

みそぎをしながら神に祈る心の深さは、この川にも匹敵するようだ。

 

 六月祓え(みなづきはらへ)を題材とした歌は、011107132 に続いての登場。このあと 526 にも出てきます。


貫之集 394

2024-05-14 05:39:11 | 貫之集

五月あやめ草

さつきてふ さつきにあへる あやめぐさ むべもねながく おひそめにけり

五月てふ 五月にあへる あやめ草 むべも根長く おひそめにけり

 

五月あやめ草

毎年五月になると逢えるあやめ草は、だからこのように根が長く伸びてきているのだろう。

 

 五月の節句にはあやめの根を引き、それが長いものほど賞美された慣習に基づく詠歌。いくつか類歌がありますが、特に次の 517 は良く似ています。

 

としごとに けふにしあへば あやめぐさ むべもねながく おひそめにけり

年ごとに 今日にしあへば あやめ草 むべも根長く おひそめにけり


貫之集 393

2024-05-13 04:44:52 | 貫之集

四月賀茂詣で

ゆふだすき かけたるけふの たよりには ひとにこころを かけつつぞおもふ

ゆふだすき かけたる今日の たよりには 人に心を かけつつぞ思ふ

 

四月賀茂詣で

祭官が木綿襷を掛けた賀茂祭の今日の縁で、逢瀬を願う恋人のことを心のかけて思ふのであるよ。

 

 神職が「かけ」る木綿襷から、人に心を「かけ」る思いを導く手法。021 にも類歌がありました。


貫之集 392

2024-05-12 04:59:55 | 貫之集

三月、池の中島に松、鶴、藤の花あり

まつもみな つるもちとせの よをふれば はるてふはるの はなをこそみめ

松もみな 鶴も千歳の 世をふれば 春てふ春の 花をこそ見め

 

三月、池の中島に松、鶴、藤の花がある

松も鶴も千年の世を長らえるのだから、巡って来る春という春すべての藤の花を見るがよい。