タイトルにある mockingbird とは「ものまね鳥」(和名はマネシツグミ)という鳥だそうですが、このタイトルの意味は最後まで読み終わると分かります。それは納得というよりも、じんわりと深く心に沁み入る感じ。
舞台は1930年代、アメリカ南部の小さな町。ある事件で黒人の男性の弁護を担当することになったアティカス・フィンチの姿が、娘のスカウト(そして兄のジェム)の目を通して語られます。
勇気とは。人間とは。そして、人間の良心とは。
この本が発表されたのは1960年。翌年、ピューリッツァー賞を受賞しています。
恐らくアメリカではかなり有名な古典なのでしょう。出張の飛行機のなかで読んでいた時に、横を通りかかったキャビンアテンダントのおばちゃんが何気なく、"Ah, it's a great book!" と言っていました。
まさに、This is a great book.
感動のあまり読み進むのがもったいなくなって、途中で何度も本を置きました。
冒頭のわずか半ページで、あっという間にこの物語に引き込まれます。技巧的にも、そして物語の要約と登場人物の紹介という意味でも、本当によく出来た書き出しです。
そしてそれ以降の文章も、単純に時系列に語られているように見えて実は、明らかになることがこの順番でしかあり得ないというくらい、よく構成された plot になっています。
アティカスが子供たち言った言葉で印象的なものがたくさんある(たくさんあり過ぎて選ぶのが難しい)のですが、2つだけ。
子供は(大人もですが)他人のことを単純に悪く言ったり良く言ったりしますが、アティカスはこんな風に言います。
"You never really understand a person until you consider things from his point of view... until you climb into his skin and walk around in it."
それから、いつもは冷静で控え目なもの言いしかしないアティカスが、いつも通り静かに、けれど断固として言ったこの言葉。
"... whenever a white man does that (cheat) to a black man, no matter who he is, how rich he is, or how fine a family he comes from, that white man is a trash."
いつも言うようですが、こういう素晴らしい本に出会えたことを本当に幸せに思います。
因みに、グレゴリー・ペック主演で 映画 にもなっています。今日辺り届くはずなので、こちらも楽しみです。
Harper Lee,
To Kill a Mockingbird
(Grand Central Publishing)
それをどんな小鳥と解釈するかは it's up to you. ということでしょうか。
Bald eagleでなくて、名もなき小鳥なんですね。
この本には他にも、シンプルな言い回しなのに
味わいのある表現がたくさんありますね。
私は原作を読んで速攻でBlu-rayを買ったのですが、
まだ観れていません
翻訳本、やっと読み終わりました。(^-^)/
ご紹介されている部分
"until you climb into his skin and walk around in it."
は翻訳本では
「その人の身になって生活をするまでは…」となっていました。
アティカスが子供たちにわかるように、" his skin"と例えたのだと思うのですが、翻訳本ではその部分が少し伝わりづらくなっていると感じました。
やはり名作は原作で読むと、味わいが本当に変わってきますね。すばらしい作品との出会いに感謝です。
英語の単語に字面だけではない意味や連想させる雰囲気があるように、
日本語の単語にも同じようにそれがあるのだと思います。
そういう言葉選びを全編にわたって行うというのは、
大変な集中力が要求されるのだと思います。
個人的には、ここでアティカスが "skin" という単語を使っているのは、
この本が白人と黒人の物語であることを暗示している気がします。
それはまだ話のかなり前半(手持ちのペーパーバックでは全376頁のうちの39頁)に出てくるからです。
いずれにせよ、原文で読んだ方が味わい深いというのは、100% agree です
「字面だけではない意味や連想させる雰囲気」、それが英語と日本語で一致する場合もあるけれど、そうでない場合もある。この一致しない場合の翻訳というのが、特に難しくなってくるようですね。
それにしても言葉の持つ力は素晴らしい、大切なツールですね。