アルテュール・グリュミオー(Arthur Grumiaux, 1921-1986)という名前を初めて知ったのは、サン=サーンスのヴァイオリン協奏曲。「何て甘ったるい音を出す人なんだろう?」と思いつつなぜか耳に残り、FMから録音したそのテープを繰り返し聴くうちに、この曲がすっかり好きになった。毎度古い話で恐縮だが、それは恐らく高校に入ったばかりの頃。
そのテープがカセットデッキとともに手元を去ってしばらく経つが、そろそろCDを買おうかとネットを徘徊していると、彼のバッハ、しかもLPが出ている。これは聴けっちゅうことだなと、今朝届いてからひたすらこればかり聴いている。
正直、あの甘ったるい音で一体どんなバッハが聴こえてくるのだろうと半信半疑だったのだが、そんな思い込みが素人の無知に過ぎないと思い知る。端正にして流麗な音の運び、伸びやかなヴィヴラート、そして勿論、透き通るようなその音色。どこをどう聴いても美しい。
今どきこんな古い録音がLPで出ているとは知らなかったし、こうしてジャケットを立てかけて、一杯やりながらバッハを聴けるとも思わなかった。まだまだ夜は長い。
ARTHUR GRUMIAUX/COMPLETE SONATAS AND PARTITAS FOR SOLO VIOLIN (BACH) [2LP]
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