東京藝術大学大学美術館で開催されている、高橋由一展に行って来ました。
誰もが一度は目にしたことがある鮭の絵を筆頭に、副題にもある「近代洋画の開拓者」としての高橋由一の画業が良く分かる、素晴らしい展示でした。(会期は6月24日で終了しています。)
高橋由一が活躍したのは幕末から明治にかけて。絵の修業は当然のことのように日本画からで、生涯西欧に留学した経験もなく、ひたすら日本で絵を、いわゆる洋画を、書き続けました。
しかしだからこそその絵は江戸期までの日本の伝統がそこここに反映され、洋画という技法ではありながらとても日本的な感じを受けます。
例えば奥行きを表現しつつ、うんと手前に視点を引き寄せるかと思えば(見にくいですが、左手前の桜の下に、行き交う人々が描かれています)、
(高橋由一「墨堤桜花」1878(明治11)年頃、香川県金刀比羅宮蔵)
正面にドンと置いてみたり、
(高橋由一「芝浦夕陽」1877(明治10)年頃、香川県金刀比羅宮蔵)
こうした大胆な構図は、遠くに富士を見せたり正面に枝を据えたりという浮世絵の技法に通じるものがありそうです。
一方で高橋由一が追求したのは、日本画とは決定的に違う、その写実性と記録性。それは緻密という言葉だけでは決して語ることが出来ない、いわば執念とでも言うべき質感と細密さ。
(高橋由一「甲冑図(武具配列図)」1877(明治10)年、靖国神社遊就館蔵)
今回の展示を通して感じたことは、幕末から明治という時代に洋画という技法をひたすら追求した画家の、飽くなき探求心。それは「西欧画」ではなく「日本の洋画」。その熱気は100年以上を経て観る私たちにも、つい昨日のことのように迫ってきます。
こうして纏めて観ることが出来たことをとても幸運に思います。
同じ藝大美術館では、収蔵名品展も開かれていました。この絵とも久しぶりの再会。
(浅井忠「収穫」1890年、東京藝術大学大学美術館蔵)
近代洋画の開拓者 高橋由一展
東京藝術大学大学美術館
2012年4月28日~6月24日
出張お疲れさま。
鮭ですか
懐かしいです。
まとめて由一を拝見できるとは
チョッピリ羨ましく思います。
特に甲冑図も見ることができるなんて
文泉
毎度のことですが、出張は何かと疲れますね。
実のところ、会期終わりギリギリまで果たして
行けるかどうか分からなかったのですが、
高橋由一がこれだけ纏めて観れるとは、
頑張って行った甲斐がありました。
まさに眼福