アップするのが遅くなりましたが、今月の初め、銀座の松屋で開かれていた「アール・ヌーヴォーのポスター芸術展」に行ってきました(東京での会期は既に終了しています)。
この展示は当初全くノーマークだったのですが、よく覗かせて頂いているブログで紹介されていたのを知り、会社帰りにちょっと寄ってきました。因みに会期は8月25日から9月6日までと非常に短く、そういう意味でもこういう記事はタイムリーにアップしなければならないなと、つくづく反省しています。
さて、正直に告白しますが、私はこの展示を観るまで、ポスターを「芸術」と呼ぶことに何となく違和感を覚えていました。しかし、自分勝手な思い込みというのは百害あって一利なし。自分の無知を思い知るだけでなく、改めてポスターというものの生い立ちと、そこに込められた芸術家の思いを、存分に楽しむことが出来ました。
ここからは今回の展示の解説で知ったことの受け売りです。今でこそ私たちは様々なポスターを色々なところで目にしますが、絵画からポスターへという転換、というよりもむしろ派生と言った方が良いかも知れませんが、それはちょうど印象派の後期、もしくはポスト印象派の画家が活躍した頃。同時にそれはジャポニスムの流行のなかで、浮世絵の大胆な構図や平面構成が彼らに刺激を与えた頃。そしてさらに、優美な曲線による装飾性が豊かなアール・ヌーヴォー(「新しい芸術」の意)の潮流が巻き起った頃。
こうした要素が同時期に重なり合った瞬間に花開いたのが、今回展示のポスター芸術。しかし皮肉なことにその最盛期は1890年代から1920年代頃までで、それ以降は急速な近代化に伴って、逆にもっとシンプルな図案が好まれるようになったとか。
前置きが長くなりましたが、そうした世紀末前後のほんの一時期に花開いた珠玉のポスター芸術から、印象に残った3点。
(アンリ・ド・トゥールーズ・ロートレック「ディヴァン・ジャポネ」1892年)
ひと目で分かるロートレックの線と、色遣い。黒一色の衣装がまるで影絵のシルエットのようで、存在感抜群。
(アルフォンス・ミュシャ「ジョブ」1896年)
女優サラ・ベルナールからの依頼で描いたミュシャの出世作「ジスモンダ」も展示されていましたが、私はこのタバコの宣伝用のポスターの方が印象に残りました。女性の巻き髪と、タバコの紫煙。優美、かつ流麗な曲線は、辿ると無限に続きそうです。
(カッサンドル「寝台特急“北極星号”」1927年)
今回最も印象に残った作品がこちら。どこにも列車は描かれていないのに、列車のポスターだとひと目で分かります。地平線をぐんと上に取って奥行きを強調した構図が、見る人の視線を一気に手前から奥へ連れていきます。カッサンドルは鉄道だけでなく船などのポスターも多く手掛けたそうですが、今回は本当に良い発見をしました。機会があればもっとたくさんの作品を観てみたいと思います。
アール・ヌーヴォーのポスター芸術展
2010年8月25日~9月6日
松屋銀座
<巡回>
2010年11月27日~12月26日
松坂屋美術館 名古屋店
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