ちょっと教えてくれる人があって、次はヘミングウェイを読もうと思っていたのですが、ふと気付くと本棚にヘミングウェイの短編集がありました。
電車の行き帰りで、短いものからパラパラと読んでいると、ふとこの本を買った時のことを思い出しました。当時は本に買った日をメモするようにしていたのですが、見ると、今からもう20年以上も前です。
確か大学の授業でプリントか何かで読んだ短編がとても気に入って、それが入っているペーパーバックを探しに、河原町の丸善に行った記憶があります。それが冒頭の写真、"A Clean, Well-lighted Place"という短編。
ご覧の通り、本の背は焼け、ページの端っこの色が変わっています。けれど、私にとってはこれがヘミングウェイの初体験でしたから、それこそ何度も、出てくる会話を覚えるほど読んだものです。
話は、男(と限定してよいでしょう)にとっては "clean" で "well-lighted" な場所(文中では "cafe")が必要なんだ、というものなのですが、それが実感として少し分かるようになったのは、時が経ち、仕事帰りにバーに寄るようになってからです。
ペーパーバックでわずか4ページ半。お酒を飲む人もそうでない人も、きっと分かる世界があると思います。邦訳のタイトルは『清潔で、とても明るいところ』。『勝者に報酬はない』という短編集の中に入っています。
Ernest Hemingway,
Winner Take Nothing
(Panther Books)
明るければ明るいほどよい、ということでは
ないようです。
お酒も必ずしも必須ではなく、文中には
「酒場ではなくcafe」という言葉が出てきます。
曰く言い難し、ですが、何だか少し分かる気がします。
例え地下でも。
例え間接照明の灯りでも。
きっとそこは“well-lighted”なんですよね