ジョナサン・ラティマーの Headed for a Hearse(1935年)読了(邦題『処刑6日前』)。
別居中の妻を殺した容疑で死刑判決を受けたウェストランド。処刑まであと一週間というある日、獄中に「お前が嫁さんを殺したのではないこと、俺は知っている。」という謎めいた手紙が届く。一度は希望を失っていたウェストランドだったが、急遽腕利きの弁護士を呼び、真犯人を探して欲しいと頼む。
彼の仲介でシカゴにやって来たのは私立探偵のビル・クレイン。しかし捜査を始めた途端、有力な証人が次から次へと消され、彼ら自身も命を狙われる羽目になる。果たして黒幕は?ウェストランドの運命は・・・?
以前からずっと読みたいと思っていたビル・クレインもの。フィリップ・マーロウのようにクールで隙のないタフガイかと思いきや、彼はちと違う。酒と女に目がなく、泥酔してはどこでも寝てしまう。目覚めた時の二日酔いの描写なんてまぁ笑えるし、相棒のウィリアムズとの掛け合いもボケとツッコミみたいで楽しい。ただ、本作の密室トリックはなかなかで、途中の話の振り方や紐解き方は、ハードボイルドというよりも本格ミステリのそれ。
人物や風景、室内の描写など、確かに客観的にしか書かないのでハードボイルドと言えばその通りだが、そういう枠組みでは語れない独特のユーモアとテンポ感があり、またこれまで知らなかったスラングもたくさん出てきて(英語で「あんぽんたん」ってどう言うのかとか)、ともかく読むのが純粋に楽しい。
相当気に入ったので、ビル・クレイン、もう1作行きます。
Jonathan Latimer,
Headed for a Hearse
(Kindle)
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