原曲は無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第2番イ短調(BWV1003)。
チェンバロ用に編曲したのはバッハ自身ではないという説もあるらしいですが、このフーガ(第2楽章)を聴いているとそんなことはどうでもよくなるくらい、両手が使える利点をフルに活かした構成になっています。
ヴァイオリンのソロも味わいがあって捨てがたいけれど、個人的にはこのチェンバロ版の流れるようなフーガはちょっと別格。特に原曲には書かれていない低音の対旋律は、弾きながら「渋い。渋すぎる。」と唸ることしきり。
試しにここに楽譜を貼ってみます。第2楽章のフーガの冒頭の12小節です。
6小節ずつが2段組みになっていますが、それぞれ1段目がヴァイオリン版(無伴奏なので、音符は1段しかありません)、2段目と3段目がチェンバロ(右手と左手)版です。調が違うため同じ音ではないので、その音型だけを見て下さい。
ほぼ同じ動きをしているのですが、チェンバロ版にしかないのがオレンジで網掛けした部分。メロディー(主旋律)に呼応する対旋律をオブリガートと言いますが、その入れ方が絶妙です。しかもそれが最初から最後までずっと続きます。まさに圧巻。圧倒的な構成です。
これが実際の演奏でどう聴こえるかというと、こちらを聴き比べてみて下さい。
まずは原曲のヴァイオリン。
そしてこちらがピアノ(チェンバロではなくあえてピアノ)です。
私は最初に聴いたのがリヒテルのピアノ版だったので余計にそう思うのかも知れませんが、これはヴァイオリンの原曲とはもはや別の、鍵盤楽器のための独立した1曲だと感じます。
この曲の素晴らしさに改めて気付かせてくれたのが、このCD。
ラウンテンクラヴィーアというのは「鍵盤付きのリュート」。私はたまたまこのCDを見つけて、実際に聴いてみてびっくりしたのですが、確かに音色はチェンバロというよりもリュートに近いです。しかし、チェンバロに比べると音が伸びない(減衰のスピードが速い)ので、特に速いパッセージを弾いた時の音の粒々感、弦を弾いた感が際立ちます。
一方で、同時にそれは一つの音を長く伸ばせないということで、例えば4分音符と8分音符を弾き分けるには限界があります。しかし、ピアノにはそれが出来ます。私が目下ピアノでこの曲の楽譜を追うことにハマっているのはこのためです。
因みにこのCD。古くからの友人がきっと気に入るだろうと進呈したところ、折り返し速攻で、これまた素晴らしいCDが2枚、送られてきました。
爾来ずっと夜な夜な聴いているところですが、文章にするのはもう少し聴き込んだところで・・・
J.S.バッハ ラウテンクラヴィーアのための音楽(渡邊順生)
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