ヴィクトリア・ムローヴァと言えば、私が高校生の頃、チャイコフスキー・コンクールで優勝したかと思えば翌年いきなり伴奏者と一緒にアメリカに亡命し、当時のクラシック会では相当話題になった「時の人」。
彼女の演奏は、その直後にFMでやっていたチャイコフスキーかメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲のテープを長く持っていた記憶があります。
今回はたまたま、この DVD でチェンバロを演奏していたダントーネが気になってチェックしていた時に、彼がそのムローヴァとバッハのソナタを入れたCDがあることを知りました。
まだライナーノートも真面目に読んでいないのですが、聴いた感じでは、ムローヴァのヴァイオリンは厳密な意味でのピリオド楽器(古楽器)ではないような気もします。ただ、弓の捌き方やアーティキュレーションは、古楽器のそれを踏襲しているようです。
ダントーネの伴奏はチェンバロですので、二人の演奏を古楽器による演奏と言うのか言わないのか、やや微妙なところです。けれど、そんなことは全くどうでも良くなるような、端正で優美、それでいて瑞々しい演奏がそこにあります。
ムローヴァのヴァイオリンはどこまでも美しく、それに寄りそうダントーネのチェンバロは特に揺らぎ、時に走る。それは真面目一辺倒の演奏ではなく、心から音楽を楽しみ、音楽に遊び、音楽を味わっている演奏です。
クイケン&レオンハルト、ツィンマーマン&パーチェ の盤とあわせて、またひとつお気に入りのバッハが増えました。
ヴィクトリア・ムローヴァ(vn)
オッタヴィオ・ダントーネ(cemb)
バッハ/ヴァイオリン・ソナタ全集
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