子供の頃、NHKの「音楽の広場」という番組で、黒柳徹子さんとの掛け合いを覚えている方がおられるかもしれない。芥川也寸志さん。
1979年の作品というから、それはちょうど私がピアノを習いに行くのをやめた頃。部活と両立が難しいからというのは表向きの理由で、実際はその時既にピアノを弾くのが楽しくなくなっていた。今にして思えばあの時、ピアノや音楽そのものまで嫌いにならなくて良かったとつくづく思う。
この「24の前奏曲」は子供のためのピアノ曲集。24という数字は各長調と短調を順番に全て回っているからだが、例えばこの第8番イ短調。特に後半、三連符が続く辺りからの切なさと言ったら、他に何に譬えよう。他にも優美な曲調の第11番ロ長調、変拍子っぽい不思議な感覚の第18番嬰ト短調。個人的にはこの3曲が特にお気に入り。
因みに各曲に、子供向けの曲集でよく見かけるような標題はついていない。色々と意見はあるかもしれないが、逆に標題がないからこそそれに縛られず、何をどう感じ、どう考えて弾くのも自由なので、私はそれは作曲家が残してくれた余白だと思いたい。
YouTubeのこの音源は花岡千春さんのピアノ。こちらもNHKのFMやテレビの番組で、当時はよくお見掛けした。色々懐かしくなってついつい長くなってしまったが、まるで珠玉のようなこの作品と演奏。秋の夜長に是非一度お聴きあれ。
Yasushi Akutagawa - 24 Preludes (1979)
芥川也寸志/こどものためのピアノ曲集 24の前奏曲(Amazon)
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