原油価格の上昇を受けたガソリン価格の上昇が止まらない。そんな中で注目されているのが
ガソリンへの課税を停止する「トリガー条項」だ。果たして、トリガー条項は発動されるの
か。資源エネルギー庁の調査によると、レギュラーガソリンの1リットル当たり小売価格は
2021年の年明けには136円台だったが、3月には150円台、10月には160円台に上昇した。
わずか10カ月間で25%近い価格上昇となった。原油、ガソリン価格の上昇は、個人の生活
費への負担を増すだけではなく、食品や製品の物流コスト増を通じで物価の上昇につながる。
こうした状況の中で、今、注目されているのが、ガソリン価格の上昇時に課税を停止する
ことで、価格を低下させる「トリガー条項」だ。トリガー条項は、2009年の衆院選で民主党
(当時)が政権公約のひとつに、ガソリン税等の暫定税率廃止を掲げたことが契機となった。
政権をとった民主党は、ガソリン税等の暫定税率廃止の検討に着手したものの、財源不足か
ら廃止を見送ることに。その代替案として出てきたのが、燃料価格高騰対策としての「トリ
ガー条項」だった。その後、 2010 年に「所得税法等の一部を改正する法律」に租税特別措
置法第89条を盛り込み、トリガー条項を成立させた。では、トリガー条項とは具体的にどの
ようなものなのか。それは、総務省が発表する小売物価統計調査でレギュラーガソリンの1
リットル当たりの小売価格が、3カ月連続で160円を超えた場合、翌月からガソリン税の揮発
油税の特例税率となっている上乗せ税率分の25.1円の課税を停止するというもの。そして停
止後に3カ月連続でレギュラーガソリンが1リットル当たりの小売価格が130 円を下回った
場合には、課税停止が解除される仕組みだ。そもそも、ガソリンはタバコなどと同様に税金
の塊であり、典型的な二重課税になっている。例えば、10月18日時点でレギュラーガソリン
の1リットル当たりの小売価格は164.6円だが、ガソリン本体価格はわずか93.0円で、残りの
71.6円は税金だ。課税の中核は「揮発油税」と「地方揮発油税」だが、この本則税額は28
.7円で、トリガー条項に対象となっている特例税率部分の25.1円を加えると、53.8円が課税
されている。さらに、そこに石油石炭税と地球温暖化対策税が加算され、その上、ガソリン
価格にこれらの税額を加えた合計額に10%の消費税がかかることになる。この2重課税を廃止
すれば、例えば1リットル当たり160円のレギュラーガソリン小売価格は、消費税込みで1リッ
トル当たり約100円にまで価格が下がる。本来であれば12月の初旬まで160円台が続けばト
リガー条項が発動することになるのだが、残念なことにトリガー条項の発動は現在、凍結さ
れている。11年の東日本大震災の復興財源とするために、同年4月27日から発動が凍結され
たのだ。その上凍結は事実上、無期限となっており、トリガー条項を復活(凍結を解除する)
させる方法は明確ではない。つまり、事実上の廃止になっているということだ。だが、衆議
院選挙を前に、このトリガー条項は再び政策の焦点となってきた。国民民主党が、トリガー
条項の凍結解除を公約に追加したのだ。果たして、トリガー条項の凍結が解除されるのか
はたまた、別の政策・状況変化でガソリン価格が下がるのか、それともガソリン価格の高騰
を放置し、国民にそのツケを回すのか?国民との約束を守るのか?選挙後の政治判断は如何?