将棋の藤井聡太竜王(19)に、また新たな勲章が加わった。1月から今月にかけて行われた第71期王将戦七番勝負(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)を4連勝で制し、王位・叡王・棋聖と合わせ、史上4人目の五冠を最年少で果たした。対局後の本人の言葉を掘り下げてみると、この1年の間に確立された新しい「藤井将棋」の一端が見えてきた。
藤井竜王は、東京都立川市で11、12の両日に行われた王将戦第4局で、前王将の渡辺明名人(37)=棋王と合わせ二冠=を破った。先手番の第1局と第3局で採用した戦法は、昨年2月から多用している「相懸かり」だった。
飛車の縦方向での活用を急ぐ相懸かりは大駒が激しく飛び交う展開になることもあるが、藤井竜王はまずじっくりと駒組みを進めることが多い。前者のタイプの相懸かりを得意としている飯島栄治八段(42)は「藤井竜王の相懸かりの駒組みは複雑で、相手は研究がしづらい」と話す。相手の出方を見ながら臨機応変に立ち回る指し方なのだ。
第1局と第3局では、藤井竜王と渡辺名人双方に序盤での熟慮が目立った。相懸かりを採用した理由を「(相懸かりは)序盤から分岐の多い展開になりやすい。長い持ち時間に適しているのかなと思った」…AIでの研究を下地にした上で、あえて互いに展開を予測しづらい将棋を志向していると言える。