「中国経済が『想像以上に悪化』している…国民はもう政府の政策に従わず、米中抗争どころではない。
しかし、外圧が強まれば、それを利用して政府の求心力(統制力)を強化できるのが中国の特徴であるため、習近平の権力は今後も揺らぎはないだろう。また、中国の政治が不透明で、「党軍関係の安定」に頼って統治を強化していることも相まって、米国が中国の政治環境を不安定化させることは難しいだろう。
中国が現在の硬直化した経済的・政治的引き締め政策を維持すれば、対抗の力だけではなく、レジリエンスの力も弱まるだろう。中国が米国の圧力にある程度妥協しない限り、困難は増大し続けるだろうが、そのような妥協の可能性は大きくはなさそうだ。したがって、長期的には、中国も米国も相手を圧倒することはできず、それぞれが損失を被るか、あるいは共倒れの恐れすらありうる。
トランプ当選前後の反応を見てみると、中国大陸の企業までもが国外への流出が加速しており、業界ではこれを「中企出海」(中国企業が外海へと出ていく)現象と呼ばれている。その実際の難度は高いとはいえ、方向転換は進んでいるようだ。
資本の流れから見ると、最近では香港・東京・シンガポールへの動きが最も活発で、またこれら3市場を経由して他国に移転した資金もある。企業の流出については、主にベトナムやタイなどの東南アジア諸国、また一部の南米諸国やトルコも間接的に恩恵を受けている。これらの傾向は、全体として中国の基盤を弱体化させることを示しているだろう。
米中対立はまた台湾の不確実性を高めることになるだろう。トランプの当選によって、米国の対ウクライナ支援は変化するであろうことを見越して、バイデンは戦争を一刻も早く終結させようとウクライナ軍への支援を加速させるとの意向を示した。
トランプがアメリカ・ファーストを堅持し対外支援を縮小すれば、台湾にも影響が及ぶだろう。トランプが中国と何か秘密裏に取引する際、台湾が交渉のコマとなる可能性さえ推測されている。
台湾当局はトランプの当選後、米台関係に影響はないだろうと述べたが、そこには「短期的には」という言葉が添えられていた。さらに、トランプを支持する米国の起業家、イーロン・マスクが、台湾からスペースXを徐々に撤退させることをすでに決めていると報じる外電もある。
北東アジア情勢も又、微妙だ。近年、北朝鮮は中国との、つかず離れずの距離を置いた関係を維持しており、派兵でロシアを支援し、韓国にも武力による威嚇を仕掛けている。これは明らかに混乱に乗じて利を得ようとする現れだ。中国にとって北朝鮮は、コントロールはできないが見放すこともできない存在になっている。さらに金正恩はトランプに「関係改善」を持ちかけ「38度線」で会談したこともある。この関係はどうなっていくのか? 北東アジアの不確定要素は増大していく。
このため、中国は近年、韓国との関係を強化し続けている。外交、経済貿易関係は改善しつつあり、バランスをとろうとしている。しかし、この動きは中国にとってあまり有益ではない。なぜなら北朝鮮とロシアにはそれぞれの思惑があり、中国が経済的な手を差し伸べても、しばしば痛い目に遭っている。
韓国は中国との経済的発展関係を維持しているが、政治・外交・軍事などいずれの面でも米国に接近せざるを得ない。
日本に関しては、日米関係は非常に強固であり、簡単には揺るがないと中国は考えており、日本国内の政治的変化も含めて観察し続けるしかない。
トランプの大統領就任後は、政治や経済を含め、政治レベルでは「アップル・デイリー」のジミー・ライ事件への影響が考えられ、経済レベルでは香港への制裁を強化するかもしれない。さらには、在米香港経済貿易代表部の事務所の廃止法案を再び提起することもあり得る。
しかし、香港の民主主義や自由を理由に米国が中国との対立を深めるとは到底思えない。香港と米国の経済貿易問題に関して言えば、それは米中対立における単なる小さな駒に過ぎないからだ。米中対立は、中国も米国も相手を圧倒することはできず、それぞれが損失を被るか、あるいは共倒れの恐れすらありうる。というのが現状だ。
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