臨時仁王會呪願文 寛平九年三月十九日(菅家文章より)
(寛平八年には水旱兵役の災があり大宰府では疫病が蔓延したので天皇みずから仁王會を設けられた。)
國主皇帝(宇多天皇)帰命頂礼 仁王般若波羅蜜 去年言上す 太宰大変疫ありと。近日聞く有り 京都漸く患い有りと。 睿情安からず 怖畏極まりなし 言を冥助に寄し 信を明神に帰す 是の故發願す 廣く大會を設け 至心懺悔 三業六根 合掌帰依 十方諸仏 寛平九戦 季春三月 十有九日 甲午艮時 大極殿より朱雀門に至る 一十六堂 百八十僧 幡蓋荘厳 香花供養 講演百座 朝夕二時 道俗同音 見聞随喜 心貮心あらず 疫癘を消さまく欲す 念餘念なし 人民を濟はまく欲す 既に困に沈む者 願はくは早く除癒せむことを 未だ初めより疫あらざる者は 願はくは先遠一切の不祥を離れんことを 随而て消滅し 一切の災難 同じく亦攘ひ除かむ。 功徳の潤びて 専ら五穀を祈る。甘露順時 夏種滞ること無からむ 暴風永断 秋実全く収めむことを 諸国豊稔 百姓不繞ならむことを 大鉄圍下 恒河沙中 之を知るも知らざるも 共に覺道に昇らむ。