今日6月30日は宮中において大祓の儀・中臣祓が行われる日です。
このとき唱えられる中臣祓は、神道教説の枢要として,神道学者や国学者からきわめて重視され,膨大な注釈書が作られているようです。
陰陽師たちは、平安時代の中期以降には「中臣祓」を用いて、病気平癒や安産祈願といった個人的な願いにこたえ、天台僧は、中臣祓を用いて「六字河臨法(除呪の修法)」などの新たな修法を作り出しています。現在でも東大寺修二会では煉行僧が中臣祓を行っていることは東大寺ホームページにも出ています。
弘法大師作と伝わる「中臣祓訓解」は密教の立場から中臣祓を解釈したもので、古来注釈書の中でも大変重要視されてきたもので、日本が神仏一体であったことを示すものです。
中臣祓訓解、伝弘法大師作
「それ和光垂迹のおこり、国史家牒(国の歴史書)に載すといえども、猶遺るところありて、本の意を識ることなし。聊か覚王(仏)の密教に託げて、略して心地(こころ)の要路を示すらく而巳。(本地垂迹のおこりは歴史書にのっているが本質が漏れている、密教の立場から要点を残しておくこととする)
けだし聞く、中臣祓は天津祝太祝詞あまのほさたのんとことば、伊弉諾尊いざなぎのみことの宣命なり。天児屋根命(あまのこやねのみこと、天の岩戸の前で祝詞を唱え、天照大神が岩戸を少し開いたときに太玉命とともに鏡を差し出した。天孫降臨の際瓊瓊杵尊に随伴、中臣氏の祖となった) の詢解(ねんごろなおしえさとし)なり。(中臣祓はこの祓自体が伊弉諾尊の宣命であり、天の岩戸の前で祝詞を唱えた天児屋根命の教え諭しである。)
これすなわち己心清浄の儀益、大自在天(大日如来の変化身たる摩醯首羅)の梵言、三世諸仏の方便、一切衆生の福田、心源広大の智慧、本来清浄の大教、無怖畏陀羅尼、罪障懺悔の神呪なり。ここに最勝最大の利益、無量無辺の済度、世間出世の教道、抜苦与楽の隠術(秘術)なり。天地と与に以て長く存し、日月と将ともにして久しく楽しからん。(これすなわち、神の宿る各々のこころを清浄にする言葉であり、大日如来の変化身たる大自在天の梵言であり、三世諸仏が衆生済度されるための方便の言葉であり、一切衆生に福をもたらすもとであり、無限の智恵であり、すべてが本来清浄であるとする教えであり、怖れを無くする陀羅尼であり、罪障懺悔の神呪である。最も優れており最大の利益をもたらし、無量無辺の衆生を救い、世間・出世間を教え、苦を抜き楽を与える秘術である。天地の続く限り残り、日月とともに久しく衆生済度をして楽しむであろう。)
所以に嘗むかし天地開闢あめつちひらきはじめし初め、神宝日出いでますとき、法界法身心王大日(究極の真理である大日如来)無縁悪業の衆生を度せんがために、普門方便の智慧を以て、蓮華三昧の道場に入り、大清浄願を発し、愛愍の慈悲を垂れ、権化の姿(衆生を導くための仮の姿)を現し、跡を閻浮提に垂れ、府璽(天子の印章)を魔王(他化自在天)に請ひて、降伏の神力を施して、神光・神使(仏の教え、仏の弟子)八荒(天下)に駅し、慈悲慈檄、十方に領あずかりしよりこのかた、忝く大神、外には仏教に異なる儀式を顕し、内には仏法を守る神兵となる。内外詞異なるといえども、化度の方便に同じく、神は則ち諸仏の魂、仏は則ち諸神の性(本性)なり。かるがゆえに経にいわく「仏、不二門に住して(絶対平等の境地から)、常に神道迹を垂る。」と云々。ここに知りぬ、諸神の通力をもって顛倒の衆生をして所求の願力をもって仏道に入らしむ。これすなわち善巧方便大慈大悲の実智、色心不二、平等利益の本願なり。これによりて現うつつには即ち神祇の験を顕はし、神民の威を施し、一期の苦愁を消して百年の栄楽をたくす。当にはまた五住の煩悩(全ての煩悩)を離れて即ち三界の樊籠(とりかご)を出で、真如の妙理を悟りて、すなわち密厳の花台を証するかな(大日如来の悟りの境地である密厳国土にのぼることができる)、およそこの祓は神詞かんことば最極の大神呪(だらに)なり、・・所求円満することは、自在天のごとし、しかればすなわち十界平等の本道、諸尊大悲の法門、法尓成道の通相(すべてのものがあるがままで覚れているという姿)、諸天三宝の秘術なり。上智の前には即ち、諸尊瑜伽の教法、下愚の前には便ち縁覚声聞の良因なり。
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