福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

御即位灌頂 冨田斆純(11代豊山派管長)等より・・・5

2018-09-05 | 法話
御即位灌頂 冨田斆純(11代豊山派管長)等より・・・5
第六章、御即位灌頂
・・慈雲尊者の雲伝神道では「先師曰く、弘法大師の弘仁七年六月十九日上表七月八日勅許を得て、高野山を以て入定の処とし、一棟の草庵を作り、高雄の旧居を去って此に移り入りて住す。時に弘仁十四年七月嵯峨上皇、大師を高野より召勅して暫く中務省に寓す。時々御物語あり、有る夜、近習を避けて大師一人を御座近く召して曰く、師遠く滄波を越え明師に値遇し秘密曼荼羅乗を傳承す、これわが國、寶祚長久の吉兆にして萬民豊穣の瑞祥なり、しかるに朕、前時代より承来する即位の大事在り、師が伝えし法中にも王者の印契ありや、大師答えて曰く、密教もとより、即俗而真世間相常住の法門にして、外金剛部神祇灌頂の式あり、人中王者四海領承の印契あり、天皇曰く、朕の相承せしところを師が伝へし法門に照らし見れば如何、大師云く、固より願ふところなり、王法仏法久住にして國家を光耀し、万民豊楽大大吉瑞なり、天皇相承の印契を示し給ひ、大師伝来の秘奥を開き給ふに、誠に符節を合わせるが如し、(二条公家に伝ふる所、我宗嫡人の所傳是なり)、この時天皇感涙に堪えさせ給はず、大師歓喜の涙に咽び給ひ、此の夜、御互いに言の述ぶべきならず、大師退出し給ふ、爾後時々御密談の事の子細に及べり、我朝神道灌頂ここに開けたりと言ふ事也。(四海領承大事口伝)
賢愚経第十三項生王品に文陀竭即位の事を記した所に「諸々の附庸王、共に項生に詣でて敬して曰く『大王已に崩ず、願はくは国位を継げよ』と。項生答へて言く、『若し我に福ありて、まさに王たるべくんば、必ず四天および尊帝釈をして来りて相迎受せしめよ。しからぼ即ち登祚せん』と。立誓已に竟れば、四天すなわち下り、寶瓶を捉り、香湯を盛満し、以てその頂に濯ぐ。時に天帝釈、報復宝冠を持し来りて為に之を著け、しかる後、称揚す。」とある。
真言密教がこの灌頂を行ふの義は大日経疏に「世間の刹利王の種のごときは、曰くその継嗣を紹いで王種をして断ぜざらしめんと欲するが故にその嫡子のために灌頂をなす。四大海の水を取りて四寶の瓶をもてこれを盛り、種々に太子の身を厳飾して衆物ことごとく備はらしめ、また大象を飾って象の背の上に瓶を持し、太子をして壇中に座せしめ統るところ悉く集まるなり。象の牙上より水を太子の項に流注せしむ。この水を濯ぎ已って本聲にて三唱す、汝まさに知るべし、太子既に受信し竟ぬ。自今以後あらゆる教勅まさに奉行すべし。今如来法王も亦又かくの如し。佛種をして断ぜざらしめんがめの故に、甘露の法水を以て佛子の頂に濯いで佛種をして永く断ぜざらしむ。故に世法に順ぜんがためのゆえに、この方便印持の法あり。これより以後、一切の聖衆にことごとく敬仰せられ、またこの人畢竟して無上菩提を退せず、定めて法王の位を継ぐべし、と知って諸有の所作真言印瑜伽等の業、皆敢へて越せず」とある。(大毘盧遮那成佛經疏卷第十五 祕密漫荼羅品第十一之餘

「即位灌頂の秘印の事」を繙けば「
智拳印金剛界大日印也・・この印は陰陽和合し天地を掌り、仏法王法一致にして四海を統領せり、真言一宗の源底、朝家の重事なり。
真言之事
只秘印を伝授もうさるまでにて真言の御伝授はこれ無きか。後光明照院関白(道平)青蓮院門跡の祖師慈道親王にこの秘印ご伝授の時も真言をば申されず、若し亦ご伝授あるべきか。
両字の異説これあり。所謂バンとボロン字となり。このバン字を三字の声に呼ぶ様に誦しましますべきなり。その声は本の字体はバンなり、而るをバアンと長声に御声を引きたまへば自ずから三字になるなり・・・バンの字をバ・アン・ウンの三字の体となして即胎蔵界ア、金剛界バ・蘇悉地ウン三部を一字の上に具さらるるがゆえに陰(内宮)陽(外宮)味合し、仏法王法一致と相伝する・・次にボロンの字の事は真言家その奥の子細これあり、悉くこれを記すること能わざるもの也」
とあるこの記事は密教家から見ると大日如来智拳印と一字金輪佛頂の智向前印の両種に解せらるるのである。・・この御即位灌頂の印はその末尾に「拳の面心に当つべし」とある。これはいわゆる一字金輪佛頂の智向前印である。金剛界大日如来の智拳印ならばそのご真言はバンであるが、一字金輪佛頂ならばボロンである。この問題は密教家にとっては重大問題である。

後三条天皇は治歴四年四月十九日(1069年)に践祚されて同年七月二十一日に御即位式を挙げられたのである。その「御即位記」によれば「未二點震儀出御、又三条院即位時、小安殿より笏を端して歩行云々、今度は然らず、主上(後三条天皇)この間、手に大日拳印を結ぶ、持拳印」とある。



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