福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

仏さん、バカたれ!

2023-12-03 | 法話

NHK心の時間(平成10年)より

・・・浅井成海(竜谷大学教授):  そうですね。先程申し上げましたように、自分が実感するかどうかは別として、この「二河白道」の譬え(
浄土教で、阿弥陀佛の救いを説く比喩。火の河と水の河(貪欲と瞋恚)の間にある白道は極楽に通じる道で、阿弥陀様が導いてくださるとする。)は、そういうところをそれぞれの人が歩いて行くんだと思います。いろいろな挫折もありますし、本当に大きい悲しみも出合って行きますから、気付くと気付かないとは別で、全ての人が大きなテーマを抱えて、「二河白道」のような譬えの中で歩いて行くんだと思いますけれども、先程申し上げました西元宗助先生が大変ご苦労なさっておられて、そして求道のプロセスをよく先生が伝道の場、教えを伝えて下さる場でお話をされました。先生はいろいろご苦労なさっておられて、「親鸞聖人の教えにご縁を持つようになって、お育てを受けたんだ」とおっしゃっておられるんですが、特に私が印象に残っておりますのは、先生が戦争中ですか、旧満州に大学の教授として行っておられる時に、ソビエトと宣戦布告と言うんですか、戦闘状態に入りましたですよね。そして直ぐソビエトの軍隊が南下して来て、それで先生ご自身が貨物列車に乗せられて、シベリヤへ送られて行った。そういう体験をおっしゃっておられまして、その時に貨物列車で運ばれるそうですけれども、どこへ行くのか分からない。みんな非常な不安の中で、中には「南へ行くのではないか」と、「このまま日本の方へ返されるのではないか」と。ご家族は残っておられるわけですね。ご自分だけ、みなさん方と抑留されて、そして貨物列車で行くんですね。「北へ、北へ」と送られて行くことが分かった時に、本当に絶望のどん底ですけれども、その時に、先生がおっしゃっておられたのは、「まあ、仏さんなんかいない。仏さんなんか居るものか」。先生の言葉では、先生は、「バカたれ!」とおっしゃっておられました。自分の思いの中にですね。「仏さん、バカたれ!」という思いが起きてきたと。もう絶対絶命のそういう状況で、私に救いはないと。しかしその中で先生がお念仏申しておられると。「仏さん、バカたれ!」とおっしゃって、「なんまんだぶ(南無阿弥陀仏)」「なんまんだぶ(南無阿弥陀仏)」と、「お念仏が口をついて出て下さっているではないか」と。そこの体験のところを先生がおしゃっておられるんですが、「私がどんなに仏様を見捨てても、仏様の方では見捨てないんだ」「仏様の方がむしろ私を包んで、そして私に気付かせて頂く世界」と言うんですか、「捨てても捨てても、仏様の方は捨てないんだ」というようなことをおっしゃいましたね。
  (まことに、シベリヤで捕虜になり北方に向かっているとわかった時の絶望感は想像するに余りあります。人生では求めても得られないことが多くその都度仏様を恨んでも必ずまた仏様にお縋りせざるをえないのが我々凡夫です。そしてまた仏様には毎回お助けを頂くことになるのです。)

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