福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

好夢十因・・8/10

2021-05-08 | 諸経

第八に教主甚深なりとは、弥勒に四重秘釈あり。浅略とは釈迦一代の弥勒は初め婆羅門の家に生じ発心し出家して佛の弟子と為り道化を扶く。是有為法の中の有実の人なるがゆえに浅略なり。深秘とは八葉の中の弥勒、並びに蘇悉地院曼荼羅菩薩是也。金剛輪壇の中に居して大日の一徳為り。且く一門たりと雖も法界円塔を持し或いは曼荼羅の号を得、普門の総徳を掌ることを表す也。この故に一門なりと雖も余の菩薩の功徳に超ゆ。

秘中深秘とは、弥勒は中台の大日也。阿(梵字)種字と為し、塔婆を三昧耶と為し、尊形は法界定印に住す。三種共に大日と殊ならず。秘中深秘とは弥勒は即ち行者の自心也。儀軌の偈に云く、「灌頂説法して無生を悟らしむ、慈氏大日同体なり。「べいろしゃのう」即ち慈氏、一生の菩薩即ち愈誐、自心即ち是母地心、母地即ち是慈氏尊なり。三種無二元より一体なり。是の故に我如実智を求む。」(慈氏菩薩略修愈誐念誦法)。

此の軌の文に秘中秘、秘秘中の両義分明なり。胎蔵の如く金剛も亦然り。塔外十六尊の中の慈氏は浅略、西方の因菩薩は深秘。一印会の大日は秘中深秘也。

問、慈氏即ち金剛界の大日なること其の証拠有りや。

答、摂真実経に云く、乃ち大慈毘盧遮那如来に遇ふて一会の中にて是の法を聞くを得と。(諸佛境界攝眞實經持念品第八「我曾過去百千劫中。修諸願海。乃遇大慈毘盧遮那如來。第一會中得聞是法。超第八地證等覺位。」)。摂真実経は是金剛頂経なるが故に大日は是金の大日也。已に両部の大日なれば九会五解脱輪四重十三大院唯是慈氏の一徳より起こる。大日経の疏に曰く、此の宗に義を弁ずるは即ち心を以て如来応当正覚と為す。所謂内心の大我なり( 大毘盧遮那成佛經疏卷第一入眞言門住心品第一 「此宗辨義。即以心爲如來應正等覺。所謂内心之大我也。如有一類外道。不了自心故而作是言。我觀眞我其色正青。餘人所不能見。」 )又云く、梵音の制底と質多とは体同じ。此の中の秘密は心を謂って仏塔と為也。自心以て基と為す。次第に増加して乃ち中胎涅槃の色に至っては最も其の上に居す。故に此の制底甚だ高し。又中胎の八葉より次第に増加して乃ち第三の随類普門の身に至るまで、遍せずと云うところとして無し。故に此の制底極めて広し(大毘盧遮那成佛經疏卷第六入漫荼羅具縁品第二之餘「復次梵音制底。與質多體同。此中祕密。謂心爲佛塔也。如第三漫荼羅。以自心爲基。次第増加。乃至中胎涅槃色。最居其上。故此制底甚高。又從中胎八葉。次第増加。乃至第三隨類普門身。無處不遍。故此制底極廣。」)。これ等の文、種と三尊と共に行者の本心を指す也。當に知るべし、無始已来の生死の業用は皆是慈氏の普現色身也。之を知る者を慈尊と号し、之を知らざる者を衆生と名く。之を知らずと雖も法身は闕減なし。之を了知するが故に其の実体を禮す。上に引く所の軌の文に我が本有法身の佛を禮すと謂ふは、慈氏衆生の本性を禮する也。例せば大日経に、金剛手に菩提心を帰命すと云るを疏に之を釈して一切衆生の心を帰命する也(大毘盧遮那成佛經疏轉字輪漫荼羅行品第八 「歸命菩提心者。即是歸命一切衆生心也」)。是此の義也。

問、儀軌の本尊曼荼羅図画のなかに慈氏我が法身を禮するは其の標相有る耶。

答、儀軌の文に於て未だ口訣を聞かずと雖も聊か愚推を加ふるに其の義なきに非ず。大日経の密印品の疏に慈氏の印を釈して云く、一切如来の法身の塔を持するを以ての故に猶観音の仏身を持するが如しと也( 大毘盧遮那成佛經疏・密印品第九「此印如窣都波形者。以持一切如來法身塔故。猶如觀音持佛身也。」)是の観音、阿弥陀を戴くは本師を敬礼する也。弥勒、塔婆を持するは本有の法身を敬礼する也。其の事、一なる故に相同する也。此の義を以て軌の文を見るに尤も符号す。又軌に云く、一一の界道に寶柱を以てせよ。上に法界塔印を置け、その中の円明の外の仏は外に向かって十方本有の法身佛を禮す。又大円明の内の慈氏如来は我が本有の法身佛を禮すと。(慈氏菩薩略修愈誐念誦法・集會灌頂漫拏攞品第七「中心第一圓内更分五圓。四隅四半月。皆置五尊。一一界道以寶柱。上置法界塔印。其中圓明外。佛向外禮十方本有法身佛。又大圓明内慈氏如來。禮我本有法身佛」)。塔即ち本有の法身一切衆生の色心実相也。能証の智法身の慈氏、此の本理を禮する也。但し慈氏の不思議の功徳を知らんと欲せば己心の不思議の実相を知るべし。外に求むるは迷痴也。迷方に随うこと莫れ。

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