福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

災害と犠牲者の関係

2018-07-09 | 法話
災害と犠牲者の関係
先日の豪雨により未曾有の被害が起こりました。そしてまたしても多くの人たちが犠牲になりました。この犠牲者の不条理を思う度いつも心が張り裂けそうになります。古来、人々は無数の天変地異に遭いその都度犠牲者が出、筆舌に尽しがたい苦悩を受けてきました。なぜそこで災害が起こり、なぜその人々が犠牲にならなければならないのか?いつもいたたまれぬ思いで考えさせられます。そして辿り着いた結論はこうです。「災害は共業により起こり、犠牲者はその業を代わって受けてくださった代受苦の菩薩である。残されたものは一生報恩しなければ残されたもの達の業は滅しない。」

1、 まず災害のおこる理由です。
経典をみると繰り返し衆生の心が国土を清らかにすると書いてあります。維摩経には有名な『衆生浄きが故に国土清し』という句があります。不空三蔵訳「仏説大孔雀明王画像壇場儀軌」には「世間に災害・戦争・飢饉・旱・病気・悩み事・闘争があるのは、八万四千の魑魅魍魎が、人々を悩まし、人々の望みを妨害することによっている。そしてこれは人々の生まれかわり死に変わりして積み重ねてきた貪瞋痴によるまちがった考え方によりひきおこされている。(諸の世間に災禍逼悩刀兵飢饉亢旱疾疫四百四病憂悩闘争あり。及び八万四千の鬼魅ありて、有情を嬈悩し、求むるところの世間出世間の勝願に多く障害あるは、皆無始以来の貪愛無明虚妄分別の三毒ありて、実相を了せず、不善を積集するによる)」とあります。
弘法大師も「秘蔵宝鑰」中巻に「災禍が興るのは三種の理由がある。一には時運、二には天罰、三には業感である。・時運とはいわゆる「陽九百六」という。一元(4560年)の間に陽厄(旱魃)が五度、陰厄(洪水)が四度おこる、この陽陰九度の厄を陽九という。黄帝のときから百六年目にはじめて陽九がおこったから百六という。)尭や禹の時代には九年間の水害がおこり、湯王には七年間の旱魃があった、これが陽九百六である。このゆえに伏義氏が東方(震)より出て易を創案して災害を予測した。宇宙は成・住・壊・空劫を繰り返しており、このなかで減劫といって人間の寿命が10歳になるときがある。この減劫の世になると五濁がおこる。五濁とは、劫濁、煩悩濁、衆生濁、見濁、命濁である。災害もこのなかでおこるのである。・天罰とは人々が摂理にそむくことによって天がすなわちこれを罰して災害を起こするもの。たとえば、漢書にあるように、孝婦が無実の罪で死刑にされたとき天帝の怒りで3年間旱魃が続いたような例。淮南子にある。燕の忠臣が讒言により獄につながれたので盛夏に霜が降った例、こういうものである。・業感とは悪業の衆生が同じく悪時に生じて業感のゆえに災を招くもの。かくのごときの論はつぶさには後漢の班固(AC32~AC92)の撰述にかかる「漢書」の中の「五行志」は、「天人相関」ないしは「天人感応」と呼ばれる思想を展開し、人間の行為に対して天が敏感に反応するといった。また「守護国経巻十阿闍世王授記品」「佛為優填王説王法論経」等も同様・・・」と書かれています。 (原文書き下し「それ災禍の興りに略して三種あり。一には時運、二には天罰、三には業感なり。・時運とはいわゆる陽九百六なり。(一元(4560年)の間に陽厄(旱魃)が五度、陰厄(洪水)が四度おこる。この陽陰九度の厄を陽九という。黄帝のときから百六年目にはじめて陽九がおこったから百六という。)尭の水、湯の旱、これにあたれり。このゆえに聖帝震に出て機をみて逆備せり(伏義氏が東方(震)より出て易を創案に、災害を予測した)。減劫の五濁もこれにあたれり(住劫において、人間の寿命が、8万歳から、年々減じて、10歳になるまでの過程を減劫といい、減劫の世になると五濁がおこる。五濁とは、劫濁、煩悩濁、衆生濁、見濁、命濁)。・天罰とは教令理にそむくによって天すなわちこれを罰す。孝婦雨ふらさざりしの誅(漢書にある。孝婦が無実の罪で死刑にされたとき天帝の怒りで3年間旱魃が続いたこと)、忠臣霜を降らすの囚(淮南子にある。燕の忠臣が讒言により獄につながれたので盛夏に霜が降ったこと)、かくの如きの類これなり。・業感とは悪業の衆生同じく悪時に生じて業感のゆえにかくのごときの災を招く。かくのごときの論はつぶさには歴代の「五行志」等、および「守護国経」「王法正論経」等のごとし。・・」) 」とされています。 栄西禅師の興禅護国論にも「仁王経に曰『佛、般若をもって現在、未来世の諸の小国王等に付属してもって護国の秘法とす』と。其の般若とは禅宗なり。謂く、『境内にもし持戒の人あればすなわち諸天その国を守護す』と云々。・・・楞厳経に曰『佛のいわく、阿難よこの四種の律儀を持して、皎たること氷霜の如く、一心に我が般若壇怛羅呪(大白傘蓋神呪)を誦せよ。・・・この娑婆界に八万四千の災変の悪星、二十八の大悪星あり。世に出現せんとき、能く災変を生せんも、この呪ある地は悉くみな消滅せん。十二由旬に結界の地となりて、諸悪災障永く入ることあたわず。』」と書いて、衆生の行動が清らかで心も清らかであれば国土は安泰であると経典を種々引用しています。これらはつまるところ我々の業が災害を引き起こすとされているのです。
2、 これらは共業という言葉で表せられます。ただ共業という場合はに多くは宇宙の成住壊空の原因とされます、がこういう小災害にも当てはまると思われます。
望月仏教大辞典には共業は「共通の業の意。不共業に対す。即ち自他共用の器世間の果を感ずる衆生共通の業因をいふ。大毘婆沙論百三十四に「有情の類、この處所において共業増長すれば、世界すなわち成じ、共業もし尽くれば世界すなわち壊す」といひ、大乗阿毘達磨集論第四に「云何が共業なる、若し業よく諸の器世間をして種々差別せしむ」といひ、また「或は復た業あり。諸の有情をして展転して増上せしむ、この業力によりて諸の有情をして更互に相望して増上縁となる、彼互に増上力有るを以ての故にまた共業と名く」と云へるこれなり。しかるにこの器世間は誰の共業の所感なりやといふに、成唯識論第二に・・器世間の将に壊せんとするときにはすでに現居および當生の者なく、また諸の異生の有色を厭離して無色界に生じたる者は現に色身なきがゆえに豫め當生の欲界等を変為するもその用なく、又設ひ無色界に色身ありとするも異地の器界と麤細懸隔して相依持せず、故に設ひそのところに住せずして他の三千界に生ずるものも苟も同界同地なれば凡べてまた此の土を変為すすることを得るべしとせり。ただし倶舎論には共業を因の自体とし、唯識にて共業は共相種子を助けてそれをして現行せしむる増上縁に過ぎずとなせり。」とあります。
3、 しかしこれらの災害論と犠牲者の関係はどう考えればいいのか。宇宙全体の生滅にあえばそれはあきらめもつくが、特定の地域で起こる災害はどう考えればればよいのか。災害は共業で起こるとしてその犠牲者はどう選ばれるのか、このことはどう考えればよいのか?結論は こういう方々は「神のみわざが現れた」あるいは「仏様の仕事をされた」「代受苦の菩薩である」、ということです。
ヨハネ9章1-7節には、「イエスが道を通られているとき生まれつきの盲人を見られた。弟子たちはイエスに尋ねた。『先生、この人が生まれつき盲人なのは誰かが罪を犯したためですか、本人ですか、それともその両親ですか』イエスは答えられた。『本人が罪を犯したのでもなく、またその両親が犯したのでもない。ただ神にみわざが彼の上に現れるためである。」とあります。「神のみわざが現れる」とはすごいことばです。平成18年土佐の遍路宿で同宿した福岡のレントゲン技師が子供のがん患者が可愛そうで仕方なかったが「こういう子たちは『仏様の仕事』をしているのです。」と言ったことを思いだします。経典には「代受苦の思想」というものが出てきます。悩みを抱えた遍路に千数百年間お接待を続けた四国の人々はこの関係をちゃんと判っていました。即ち病苦の原因はさまざまにあろうと苦難にあえぎ病苦に苦しむ人たちは我々の業を代わって引き受けてくださっている菩薩(代受苦の菩薩)であるという考えです。
聖武天皇の妃、光明皇后は病者に施浴しましたが、ライ病患者の膿を吸ってやったところ患者は阿閦(あしゅく)如来の姿を現したといわれています。
四分律というお経では仏様が「人若(も)し我を供養せんと欲せばまず病人を供養すべし」とおっしゃっています。文殊師利般涅槃経には「(文殊師利菩薩は)自ら化身して貧窮孤独苦悩の衆生となって行者のまえにいたる」とあります。(佛告跋陀波羅。此文殊師利法王子。若有人念。若欲供養修福業者。即自化身。作貧窮孤獨苦惱眾生。至行者前。)
華厳経(金剛幢菩薩十回向品)では 菩薩が「我まさに一切衆生のために無量の苦を受け諸の衆生をして解脱を得しむべし」といい、
大宝積経には「我ことごとく代わって、諸の衆生をして(この世の)大地獄を出しめて、我代わって苦を受け・・・」とあります。
大般若波羅密多経第四十七巻には「一切の地獄、傍生鬼界人天趣の中の有情の受くるところの苦悩、我当に代わって受け、彼をして安楽ならしむべし(地獄、餓鬼、畜生、人間界、天界などの生き物の苦悩を菩薩は代わって受けこれらのものを安楽にしてやる)」とあります。
4、では代受苦された者はどうすべきか?それはあらゆる手段をつくして代受苦してくださった関係者への報恩に努めるべきと思われます。これができなければ残されたものの業は一生消えないでしょう。
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