■(その11)タートルリリース■
アマヌサに行くにあたり、事前にゲストリレーションにアクティビティ・メニューを
送ってもらいました。その中に、「タートルリリース(海ガメの解放)」というプロ
グラムがあって、とても興味を惹かれました。
そこには、こんな風にプログラムの紹介がされています(概要抜粋)。
「バリでは、毎年沢山の海ガメ達が乱獲、殺戮されています。法規制や取締りの強化
など、政府主導で様々な取り組みがなされてきましたが、残念ながら一向に成果は
上がっていません。“タートルバリ”というNPOでは、2000年以降、この問題に
あたり、独自の活動を続けています。そのひとつが“タートルリリース”プログラム
です。これは、密猟者に捕獲された海ガメをブラックマーケットから買い取り、再び
海に解放するというプログラムです。アマヌサのビーチは、この海ガメのリリース
ポイントに指定されています。海ガメを買い取る資金としてUSD25を寄付していた
だければ、その資金で海ガメ買い取り、買い取ったカメはお客様自身の手で海に放し
ていただきます(ただし、海ガメがブラックマーケットに出回っている時のみ)。」
へー、なんだか面白そう。カンボジアのお寺で、かごの鳥をお金を払って空に放して
やるというのがあるけど、ちょっと似ているかも。観光客相手のショーかも知れない
けど、やってみようか。と言う事で、ゲストリレーションに申込みのメールを送りま
した。
アマヌサに着くと「海ガメ、入手できます。」との報告。翌日、ビーチで寝そべっ
ていると、ビーチボーイから、"Your turtle is ready."と声が掛かりました。
「うわぁ、おっきい!」理由もなく手のひらサイズの小ガメを想像していた僕らは仰天。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/cf/ec62531c80b0232019bf0b51c020bedc.jpg)
だけど、見るからに元気がなく弱っている感じ。NPOの人にその事を言うと、
「うん、この海ガメは、捕らえられてから10日間、水も食べ物も与えられていな
いんだ。でも、海ガメはタフな生き物だから、きっと大丈夫。」
「そうなんだ...」
「甲羅のここを見て。傷があるね。これは密漁されるときに、ガン(モリ?)で
やられた痕なんだ。それから、両前足に開いている穴。これは、ここに紐を通して、
縛り上げておくために穴をあけられちゃったんだ。」
「うわ、ひどいね...、かわいそうに。」
本当にひどい目に遭ってきたということは、すぐにわかりました。これが単なる
観光客向けのショーではなく、大変に真面目なプログラムであることも。
「さぁ、海ガメを海に返してあげましょう。一緒に持って。」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/b5/2bbe8efff0c00b2af7720f199e75dbb8.jpg)
そうは言われても、こんな大きな海ガメに触れるのも持つのも初めて。
どうしてもおっかなびっくり、腰が引けてしまいます。
何とか水打ち際まで運んで、砂浜に下ろすと、手前の一匹は、力を振り絞って海に
向かって進んで行きます。だけど、後ろの一匹は、なかなか動くことができません。
「ガンバレ! ガンバレ!」家内は励ましています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/a0/d7566fe20d51b87cc9e591e009cf316c.jpg)
最初の一匹は、何とか自力で水辺にたどり着きました。彼(彼女?)の目には、自分を
捕まえて、ひどい目に遭わせた人間が、また何故か自分を海に戻そうとしている姿が
映っていたはずです。こんな複雑不可解な行動をする人間を、どんな思いで見ていた
のでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/17/fc463ef9c3c10d15a89489e1fc14e160.jpg)
もう一匹は、ダメみたいです。一人では這って行く気力がないみたい。だけど、
家内が甲羅を押して、顔を水につけてやると、ようやく、ひとかき、ふたかき、
動き出しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/da/e1355802d62935680feb8cd6de519a14.jpg)
先の一匹はもう行ってしまいました。もう一匹も、ゆっくり、ゆっくり、海に向かって
泳ぎだします。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/f3/f861352ae41dc5d3b155e0b84d698c75.jpg)
真ん中の染みみたいなのが、遅れていった一匹の影です。
「ガンバレ、ガンバレ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/e5/9769535f8ba1d647b319e8d7d6f174a1.jpg)
南から北に流れる潮に流されながらも、沖へ、より深い海へと進んで行きます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/8f/43f0bb750c037e9ed0b011e74fb4f33f.jpg)
ようやく、海ガメの影が見えなくなり、とりあえず波に洗われて浜に打ち上げ
られる心配はなくなりました。後は彼らの命の力次第。ガンバレ。
NPOの人は、カメ達に向かって"Never come back!"と叫んでいました。
本当にそうあって欲しいものです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/70/9c44d805ccfda46295aa953608fcc467.jpg)
夜、部屋に戻ると、プログラム参加の記念品が置いてありました。放してあげた
海ガメ達は、今頃何処にいるのかな。人間のいない、遠い所まで行けるといいね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/0c/2f154bdaf216a54f2a495f53d64f4d1e.jpg)
タートルリリースプログラムは、密漁そのものを無くす事はできません。かえって
密猟者が仕事に精を出すだけだという意見もあります。しかし、他にどうしようも
ない状況において、確実に一つの命を救う方法であることも事実。
実際に自分で海ガメを放し、失われていたかも知れない命が海に帰っていく様を
みると、これはこれでとても意味のある事だと思えてきました。またアマヌサに行く
機会があれば、もう一度参加したいと思います。
*その12へ続く
アマヌサに行くにあたり、事前にゲストリレーションにアクティビティ・メニューを
送ってもらいました。その中に、「タートルリリース(海ガメの解放)」というプロ
グラムがあって、とても興味を惹かれました。
そこには、こんな風にプログラムの紹介がされています(概要抜粋)。
「バリでは、毎年沢山の海ガメ達が乱獲、殺戮されています。法規制や取締りの強化
など、政府主導で様々な取り組みがなされてきましたが、残念ながら一向に成果は
上がっていません。“タートルバリ”というNPOでは、2000年以降、この問題に
あたり、独自の活動を続けています。そのひとつが“タートルリリース”プログラム
です。これは、密猟者に捕獲された海ガメをブラックマーケットから買い取り、再び
海に解放するというプログラムです。アマヌサのビーチは、この海ガメのリリース
ポイントに指定されています。海ガメを買い取る資金としてUSD25を寄付していた
だければ、その資金で海ガメ買い取り、買い取ったカメはお客様自身の手で海に放し
ていただきます(ただし、海ガメがブラックマーケットに出回っている時のみ)。」
へー、なんだか面白そう。カンボジアのお寺で、かごの鳥をお金を払って空に放して
やるというのがあるけど、ちょっと似ているかも。観光客相手のショーかも知れない
けど、やってみようか。と言う事で、ゲストリレーションに申込みのメールを送りま
した。
アマヌサに着くと「海ガメ、入手できます。」との報告。翌日、ビーチで寝そべっ
ていると、ビーチボーイから、"Your turtle is ready."と声が掛かりました。
「うわぁ、おっきい!」理由もなく手のひらサイズの小ガメを想像していた僕らは仰天。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/cf/ec62531c80b0232019bf0b51c020bedc.jpg)
だけど、見るからに元気がなく弱っている感じ。NPOの人にその事を言うと、
「うん、この海ガメは、捕らえられてから10日間、水も食べ物も与えられていな
いんだ。でも、海ガメはタフな生き物だから、きっと大丈夫。」
「そうなんだ...」
「甲羅のここを見て。傷があるね。これは密漁されるときに、ガン(モリ?)で
やられた痕なんだ。それから、両前足に開いている穴。これは、ここに紐を通して、
縛り上げておくために穴をあけられちゃったんだ。」
「うわ、ひどいね...、かわいそうに。」
本当にひどい目に遭ってきたということは、すぐにわかりました。これが単なる
観光客向けのショーではなく、大変に真面目なプログラムであることも。
「さぁ、海ガメを海に返してあげましょう。一緒に持って。」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/b5/2bbe8efff0c00b2af7720f199e75dbb8.jpg)
そうは言われても、こんな大きな海ガメに触れるのも持つのも初めて。
どうしてもおっかなびっくり、腰が引けてしまいます。
何とか水打ち際まで運んで、砂浜に下ろすと、手前の一匹は、力を振り絞って海に
向かって進んで行きます。だけど、後ろの一匹は、なかなか動くことができません。
「ガンバレ! ガンバレ!」家内は励ましています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/59/a0/d7566fe20d51b87cc9e591e009cf316c.jpg)
最初の一匹は、何とか自力で水辺にたどり着きました。彼(彼女?)の目には、自分を
捕まえて、ひどい目に遭わせた人間が、また何故か自分を海に戻そうとしている姿が
映っていたはずです。こんな複雑不可解な行動をする人間を、どんな思いで見ていた
のでしょう。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/17/fc463ef9c3c10d15a89489e1fc14e160.jpg)
もう一匹は、ダメみたいです。一人では這って行く気力がないみたい。だけど、
家内が甲羅を押して、顔を水につけてやると、ようやく、ひとかき、ふたかき、
動き出しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/25/da/e1355802d62935680feb8cd6de519a14.jpg)
先の一匹はもう行ってしまいました。もう一匹も、ゆっくり、ゆっくり、海に向かって
泳ぎだします。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/f3/f861352ae41dc5d3b155e0b84d698c75.jpg)
真ん中の染みみたいなのが、遅れていった一匹の影です。
「ガンバレ、ガンバレ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/e5/9769535f8ba1d647b319e8d7d6f174a1.jpg)
南から北に流れる潮に流されながらも、沖へ、より深い海へと進んで行きます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/8f/43f0bb750c037e9ed0b011e74fb4f33f.jpg)
ようやく、海ガメの影が見えなくなり、とりあえず波に洗われて浜に打ち上げ
られる心配はなくなりました。後は彼らの命の力次第。ガンバレ。
NPOの人は、カメ達に向かって"Never come back!"と叫んでいました。
本当にそうあって欲しいものです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/56/70/9c44d805ccfda46295aa953608fcc467.jpg)
夜、部屋に戻ると、プログラム参加の記念品が置いてありました。放してあげた
海ガメ達は、今頃何処にいるのかな。人間のいない、遠い所まで行けるといいね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/27/0c/2f154bdaf216a54f2a495f53d64f4d1e.jpg)
タートルリリースプログラムは、密漁そのものを無くす事はできません。かえって
密猟者が仕事に精を出すだけだという意見もあります。しかし、他にどうしようも
ない状況において、確実に一つの命を救う方法であることも事実。
実際に自分で海ガメを放し、失われていたかも知れない命が海に帰っていく様を
みると、これはこれでとても意味のある事だと思えてきました。またアマヌサに行く
機会があれば、もう一度参加したいと思います。
*その12へ続く
文章力も手伝って、感動しました。亀達、今頃海で元気に泳いでいるといいですね。
共感してもらえたら、とても嬉しいです。タートルリリースは、今回一番の思い出だったかも。
買い物とスパ天国のお気楽なリゾートだけじゃない、いろんなバリの側面があるんだなと、思いを改めさせてくれる体験でした。