ハモンセラーノ

雪が続きやっと終わりに近づいた。
温暖かなのか長続きしない雪は晴れ止むと息を呑むような景色を見せてくれる。
でも一番好きなのは雪が降り続いている最中の、光が少なく青に近い白で木々が雪で飾られていく様、雲の動きで微妙な光が雪原や山を浮かび上がらせるとき。
夜中の星の美しさ。
水の美味さ。
こんな気持ちでお客さんを迎えていても中々いい商売はできない。
いい仕事が出来ないといったほうがいいかもしれないが体動かないのと感性も大分鈍ってしまった。
気力がなくなり細かいところまで集中できない。
いつもの人たちが新年会にやってきた。
マダラの白子をたっぷり入れた茶碗蒸し、ワインをたっぷり飲んで生ハムを出せと言われた。
サービスで。
チーズもサービスした。
今度はチーズをメインの会をやってくれるそうだ。
２０種類ぐらいは揃えて置かないと。

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川口温泉露天風呂

除雪隊の気温計の表示はマイナス八度だったらしい。
気温など見ないで薪や片づけを外でやってたらすっかり冷えてしまった。
休日で予約がなく早めに切りあがったのでウッちゃんと板長で川口温泉に向かった。
外に出ると満月が昇ってきて明るい雪景色の中の黒い魚野川と大沢川の流れの中にそれぞれ輝いていた。
てっきり雪が降り続くと思ってたが月見も堪能した。
温泉に行くと真っ先に源泉露天風呂に行く。
かぶり湯をして雪の外気に当たるから寒くてしょうがないが源泉が一番良く効くから我慢して急ぐ。
そして熱い事。
魚野川と信濃川が合流してほとんど黒い世界が多いが道路の車や町のささやかな明かりが温泉の温かさと一緒になった疲れた心と体をほぐしてくれた。
電気風呂で両腕を浸け蕎麦打ちとピザの生地作りのこりをほぐし、板長に背中を洗ってもらい人が帰った内風呂で平泳ぎをして全体をほぐす。
娘が調子が悪く少し不安だったが寝てしまえば気合の朝がやってくる。
降雪があり除雪隊はフル出動。
朝食とスープ作り。
予約が無いから市場には注文で配達してもらった。
雪が降り続き光が少ない景色は空も雪原もいったいとなり境の無い世界に木々が霞んで浮きあがっている。
雪の変化で刻々と変わる墨絵の世界に一瞬だけと思いながら気が付けば時間だけが過ぎていた。
この時期が今ここにいる自分だけの素晴らしい芸術だと優越感に浸っている。
雪の中激震ピザの取材で東京からライターとカメラマンがやってきた。
大きな出版社のピザの本に載るらしい。
大きな激震チャーシューと神楽南蛮のソースに歓声が上がって最後には取材と写真を撮られた。
雪で除雪に追われ無精ひげそのままカメラに収まってしまった。

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魚沼コシヒカリのパスタを出す

日曜日は予約が三つ。
久しぶりにお昼に集中したら部屋が一つしか空いてなく入りきれなかったらどうしょうと思ってたが、ちょうどいい来客で待つ人がいなかった。
雪と予報が悪いのか車が少なかった。
除雪隊が食べ終わるのを待って開店した。
ただ貸切の紙をはずし、営業中の看板は出さなかった。
入りきれない混乱を防ぐ為だったがそんな配慮は要らなかった。
夜中にミッキーが鳴いてうるさくて時計を見ると二時過ぎだった。
あまり寒くて鳴いたのかもしれない。
小出でマイナス7.8度になった。
夜明けで空が晴れていた。
竹林の上の杉の木の梢に大きな満月が輝いていた。
月が沈むと雲を茜色に染めた朝日が昇ってきた。
祭日はパスタが出て昨日は売り切れだったのでパスタを作り、魚沼コシヒカリを入れてみた。
麺がつるつる感が増し、モチモチ感もあり結構いい線になった。
マキ婆の予想通り闇夜ではないから雪は大して降らないと言ったのが当たり、除雪関係者はがっかり。
でも次の寒気が来てるのでピザ用の薪を入れたり除雪車の燃料をいれて冬将軍を迎え撃つ。

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一月十日の満月

冬将軍がやってくる。
雪のマークが一週間続いている。
今度はいつ月が見れるか分からないそんな不安が先走るが大雪にはならないだろう。
シャーマンマキ婆の予言。
闇夜はゆきがいっぺえ降る。
今度はその反対満月だ。

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魚沼コシヒカリピザ販売開始

昨日は飲みすぎで寝坊して除雪隊の食事が遅れてしまった。
その上ご飯が無く炊かなければいけなかった。
夢中でやって何とかなった。
市場でトマトとセリを買った。
鱈と蟹、は頼んであったし刺身用のバイガイとヤリイカ、小鯵、佐渡のヒラマサ南蛮海老、カマスなどを買った。
小鯵は開いてフライト刺身にし、ヒロちゃんの練習用に買った。
新年会がいくつかあるので魚沼コシヒカリのピザを出してやろうと思う。
米粉を入れるとモチットした食感で凄くおいしい。
山古志の神楽南蛮で作った味噌を塗ってチーズを乗せて焼く。
知り合いに試食してもらったが全員好評だった。
新しいメニューに加える。

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僕は太ったカラスかもしれない

布団が恋しく除雪隊の朝食が遅くなりそうだった。
食べ始めた除雪隊に電気と戸締りをしてと市場に出かけた。
市場に行かなければ美味しい素材が手に入らないと知ってる隊員は灰よと気軽に答え毎度の事といった感じ。
どうしても買わなければいけないのは野菜が多く、でも天然ぶりや鱈を買った。
ヒラメと鯛も買い野菜も買って帰った。
花キンは魚野川の厄日。
どうせ暇だろうと山菜採りに出かけた。
ハシブトガラスのざわめきの中で、自分も荒れた日が近づくとこのように騒ぎ出すのはカラスに似てるとい思った。
清水の小川でセリを水の中から堀、ツバキの葉を取った。
ふきのとうののほかに山ニンジンが採れて感激。
寒い中、薄着でふきのとうを採ってると寒くて熱が出てきた。
今日は休んでと思ってたらウッチャンが飲もうと電話してきた。
川口温泉で温まって鮨政に。
いつもと同じ雪乞い宴会。
きっと猛烈な冬がやってくるだろう。

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店はお客さんと働いてる人の為に有ると言い続けて来た

昨日帰ろうとしたら車が凍り付いて中々フロントガラスの霜が溶けなかった。
昼間は下限の月も反転して雪原を照らし遠く越後三山の輪郭が見えるほどであった。
気温が下がりそうなので布団を一枚増やして寝た。
前の日は魚獲りの夢を見て少し風邪気味が進んでしまった。
老いて疲れたのか風邪でだるいのか境が分からない。
万全の体制で寝たのが失敗、暑過ぎて叉魚とりを始める夢になって冷えた足を布団に戻した。
そろそろ目覚ましがと思ってると鳴り出し、止めてもう少し寝た。
除雪隊も少なく市場は野菜市場に行くだけ。
いくらなんでももう行かなければと外に出るとミッキーがお見送り。
空を見上げれば月は沈み、北斗七星が頭上に、北から南に近くを人工衛星が北から南に横切って行く。
明るくなり始めた空の光が眠ってる村を照らし、木々が人体模型からはがした血管のように立ち並んでいる。
凍みた雪を大きな音をさせタイヤが回りだした。
黒い山並みの影絵の中に街灯や車のライトが光、薄い茜色の空が横たわっていた。
快晴で叉お客さんが来てくれるだろう。
マキ婆ーの老後の話の後、来店するお客さんを見ながら、魚野川は愛されているのだねーと聞こえるように言うと腰越さんがお愛想三割、立場上三割、後不明の笑顔をしてくれた。
バイトやパートの人たちに始めて挨拶するときは必ず言う言葉は、この店は多くの人たちに支えられでき、店はお客様と働いている人たちの為に建てたと。
この頃付け足したい言葉は店で働いている人たちはすべて人生の成功者に成って貰いたいと。
僕も店で働いているのだから。

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マキ婆ーの老後

除雪隊にご飯が終わったら戸締りと電気とストーブを消して帰ってと頼んで市場に行った。
昨日は初荷が来たけれどもきっと高値で使い切れないだろうと読んで今日出かけた。
案の定普段の倍の値段では売れなかったらしく、今日は昨日の半値とささやく声が聞こえた。
サバとヒラメと帆立貝と鱈子とカマス、海老、ヤリイカなどを買った。
五センチの降雪予報がはずれゼロ。
でも高い峰は杉の木がやや白っぽくなっていた。
曇り空の寒い朝で、セリ場に立っていると腰が痛くなってきた。
やっぱり板長が休みだと天気がいい。
西のほうから青空が見え始めた。
焼き芋を焼き、サバを下ろしてしめさばと塩サバ、残りを味噌煮にして、ヒラメと沿いは刺身におろした。
ヤリイカは刺身と焼きようとシーフードピザ用に、カマスは焼魚とてんぷら用にする為にとりあえずえらと腹を出した。
昼定食はとんかつ。
ご飯物がかなり出て慌ててご飯を炊きなおした。
晴れると客足もいい。
気分もいい。
お茶を飲んでるとマキ婆が去年の家計簿の話をした。
感心な事に大晦日は一年の収支決算をするらしい。
収入は言わなかったが総支出八十万だったそうだ。
スタッフが他のお金はと聞くと貯金もしなければ老後のために。
今年誕生日が来れば満八十歳。
マキ婆の老後は何歳からなのと皆がため息をついた。

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やっと年賀状を書く

ミッキーもえさをやるだけでたまにサボってたら、いつも朝布団から起きる気配を感じ動き出すのが今日は出てこない。
近くに行ったら眠そうによたよたと歩いてきた。
ネギ油を作ったとき出る背脂の粕と除雪隊が残したウインナーを持っていったら気配を感じ舌なめずり。
本当に現金な事。
氷雨見たいのが一センチぐらいフロントガラスにへばりついていた。
当然除雪隊も少し。
何となく朝が早くなったような感じ。
昨日やっと年賀状を書いた。
今日残りを書けば終わる。

今日から仕事始めのところが多い。
勤務シフトを変え、暇になった分、分散して休んでもらう事にした。
マキ婆は週勤二日。
79歳で年金をもらってるから十分と本人が言ってくれた。
パートも忙しくなるまで休んでもらう事にして少ない人数でやりくりする事にした。
昨日の天地人を見て感動した。
子役の巧さと人の情に涙した。
全国の人たちの目が新潟に向いてきて経済的に賑やかになればと更に願った。
そして思いついたことがあった。
この地方でロケや団体観光をする計画にボランテアで応援する組織を作ったら良いのではないかと。
それを多方面に発信すればいいのではと。

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蕎麦の芽のサラダ

朝三時までテレビを見てしまった。
火山活動による地球の冷却。
今の経済状況を災害が表しているような感じでつい今日の仕事を考えつつ見てしまった。
久しぶりに星野さんから携帯が有った。
なんだろうと掛け直したら間違えて電話してしまっただけ。
今有楽町で,そして帝国ホテルで箱根駅伝の祝賀会をやる。
なんとも優雅な正月。
昨日は久しぶりに昼寝をたっぷり。
あまり暇でやけくその感があり、けど疲れた。
今年こそは黒字にしてやろうと頑張ったが最後の忘年会までに力尽来てしまった。
今思うことは生き延び、根だけでも温存しなければいけないと。
やがて春が来る。

やっと冬型が緩んだのかうっすらと雪があっただけ。
歩道除雪が出たので朝食は予想より倍になり、暖房費ぐらい稼げたろうか。
時折雪がパラついいてたが、西から雲が切れだし久しぶりの青い空を見た。
青い空は東に移動、お日様が見えだし、新道島の尾根に横たわった霧の上あたりに当りだし新雪で覆われた木々と峰が柔らかく光りだした。
墨絵の世界が暖かいお日様に色に変わりだし、心を被ってた不安が少し溶け出した。
暖炉の前に置いた蕎麦の芽が薄い緑になり、赤い茎の上に浮いている。
マキ婆の箒の音が力強く繰り返され、スタッフの足音も聞こえ始めた。

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