「壁をつくることばかり考えるものは、キリスト教徒ではない」
ローマ法王フランシスコは18日、アメリカ大統領選に出馬しているドナルド・トランプ氏による「不法移民排斥」発言を、宗教者の立場からこう批判した。この批判に先立ち、トランプ氏は、「アメリカに滞在する不法移民を本国に強制送還する」と訴えていた。
これを受けトランプ氏は、大統領選への影響を避けるためか、「法王とは争いたくない」と述べつつも、「宗教指導者が個人の信仰に疑問を挟むのは恥ずべきことだ」と反論した。
過激な発言で有名なトランプ氏。だが、彼自身の本心は、外国人を迫害するつもりではない。メキシコからの犯罪者の流入や麻薬などの密輸問題に対し、不満を 覚えるアメリカ国民の声を代弁しているに過ぎない。実際にトランプ氏は、「大統領になれば、イスラム教徒でも入閣させる」と述べ、差別主義者とは言えない側面がある。
ローマ法王はどうなのか?
では、トランプ氏を批判したローマ法王はどうか。
ローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は12日に、法王として初めて、ロシア正教会のキリル総主教と会談した。中東でカトリック教徒や正教徒が、イスラム国の暴力の犠牲になっていることを受けて、世界の指導者にキリスト教徒の保護を求める共同宣言を発表している。
現在中東では、キリスト教国が、「イスラム国掃討作戦」として、一方的に中東を空爆し、関係のない多くの民間人が巻き添えとなり、犠牲者が増えている。それが、欧州に押し寄せる難民問題の原因にもなっている。
寛容を掲げるローマ法王だが、キリスト教圏の一方的な「無差別攻撃」に対して、宗教者の立場から注意を促すことこそ、必要ではないだろうか。イスラム教とキリスト教の「壁」をこれ以上厚くしてはならない。
ローマ法王を慕うカトリック教徒は多い。だからこそ、宗教家として、「憎しみを捨て、愛をとる」姿を見せてほしいものだ。
(HS政経塾 水野善丈)
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