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日本ほど無防備な状態で、核兵器に囲まれている国はない。
北朝鮮の核実験は今回で4回目。すでに核爆弾の小型化に成功し、東京に届くノドン・ミサイルに搭載できるという。アメリカ本土に届く大陸間弾道弾(ICBМ)にも搭載可能だと米軍は分析しており、北朝鮮はアメリカを核兵器で脅すことができる。
この結果、アメリカはもはや北朝鮮に手出しできない。「北朝鮮を核保有国として認めない」と言いつつ、中途半端な経済制裁でお茶を濁すしかない。
「核の傘」はもうない
北朝鮮は中国の核開発の後を追いかけてきたが、その中国は、アメリカに並ぶ「核大国」だ。
日本やアメリカに届く核ミサイルは400基以上とされる。アメリカが中国と事を構えることは対北朝鮮以上に難しい。
中朝の核兵器に対して、日本はアメリカの「核の傘」で守られていることになっているが、それも極めて怪しい。
「核の傘」は、例えば、中国が日本に核ミサイルを撃ったら、アメリカも核ミサイルで応戦すること。自国に核ミサイルを撃ち込まれる危険を冒してまで、日本を守ることは考えにくい(注1)。
中国、北朝鮮の核兵器に対するアメリカの「核の傘」は、もうないと考えておくべきだろう。
(注1)戦後長く米中の橋渡し役を務めたキッシンジャー元米国務長官は冷戦時代、「同盟国が核攻撃されたからという理由で、アメリカがソ連と核戦争するような馬鹿げた自殺行為をするわけがない」と論文に書いている。
滅ぼされるリスクの高い国
図解
日本は世界で最も「滅ぼされるリスク」が高い
中国
300基以上の核ミサイルが日本に向けられている。
北朝鮮
東京に届くミサイルは200基以上。核弾頭の搭載も可能となっている。
日本
アメリカの「核の傘」はなくなっており、日本は無防備。
イランも「滅ぼされるリスク」は高いが……
イスラエル
数百発の核弾頭を保有しているとされる。最大の仮想敵国はイラン。
イラン
国を守るため、核武装を模索している。
核で壊滅させられるリスクということでは、中東のイランが日本に近い。イスラエルがイランを最大の仮想敵国とし、核ミサイルの照準を合わせている。
イスラエルの核兵器に対してイランは“丸裸"だったが、今は1年で核弾頭を作れる能力を持っている。
これに対し、日本はまったくの無防備だ。日本は世界で最も滅ぼされる可能性の高い国、と言っていいのではないだろうか。
しかも、中国、北朝鮮とも、核兵器を使うと言われている。
例えば、中国が台湾を武力統一しようとする際、アメリカが軍事介入できないよう、「核ミサイルで米本土の主要都市を攻撃する」と脅す可能性が高い。
威嚇ならまだいいが、中国は太平洋上空や宇宙空間で核兵器を爆発させて、米軍の通信ネットワークを破壊することを計画しているという(注2)。
なお、日本も巻き込まれる台湾有事での米軍の戦い方は、以前とかなり変化している。数年前は空母が何隻も来援するプランだったが、中国が空母を狙い撃ちする対艦ミサイルを持ったことで、もう米空母は台湾近海に来ないそうだ。
米軍の対中戦略の責任者は、「米軍はいったんグアムやハワイまで引き、4~6週間後に、無人機などによる中国本土への攻撃を行う。その間、日本や台湾は中国軍の猛攻に耐えて自力で戦ってくれ」と語っているという。
日本が「滅びるリスク」がますます高まっている。
(注2)中国の核戦略をつくった建国の父・毛沢東は「中国の人口の半分が死んでも何年か経てばもっと多くなる」と述べ、核戦争も辞さないスタンス。これが今も受け継がれている。
核兵器についての善悪
核兵器を宗教的にどう考えるべきか。幸福の科学の大川隆法総裁は、原則、核兵器を持つべきではないし、使うべきでもないという考えだ(注3)。核戦争で大量の人たちが亡くなると、あの世への旅立ちやその後の生まれ変わりに大きな支障が出るためだ。
一方で、宗教的に「悪」である核兵器によって、平和がつくり出されているという逆説がある。「核による平和」は、大戦争が起こるよりもはるかに望ましい。
だからこそ大川総裁は、「核兵器は、智慧をもって消していかなければならないと思います」と述べている(注3)。
問題は、独裁国家が核兵器を持つ場合だ。民主主義国家のように国民や国際世論のチェックが効かないため、明確な「悪」と言える。権力者一人の判断で、核 のボタンが押される危険性がある。それが中国、北朝鮮では起こり得る。そんな国が隣に2つもある日本は、まるで悪魔に呪われているかのようだ。
大川総裁は悪魔の存在に関してこう述べている(本誌22ページ)。
「人間に、『「善悪とは何か」を学び取れ。感じ取れ』ということを教えているのだと思うのです」
中国や北朝鮮の核の脅威から「善悪とは何か」を学び取り、「善」つまり「正義」を打ち立てることが日本人にいま求められている。
(注3)大川隆法著『愛、悟り、そして地球』より。
核兵器についての善悪は?
核抑止・核廃絶プラン
写真:Imaginechina/アフロ
アメリカ本土に届く中国の核ミサイルDF-31A。
「正義」とは、中国、北朝鮮が核を使う「悪」を犯させないこと。そして、長期的に核兵器という「悪」を取り去ること。以下は、日本としての「核抑止・核廃絶プラン」だ(詳しくは本誌Web版に掲載)。
(1) 通常兵器でミサイルを持つ
まずは、何の反撃手段もない状態を脱すべきだ。例えば、中国や北朝鮮に向けて潜水艦から飛ばせる弾道ミサイルや巡航ミサイルを持ち、潜水艦の数も増やす。日本が北京や平壌の中枢に反撃する能力を持てば、中朝の行動に歯止めがかかる。
(2) アメリカと核を共有
抑止のためには、「核を持つ」選択も十分あり得る。その場合、アメリカの核兵器を共有するのがスムーズだ。
ドイツなどは、有事の際にはアメリカの許可で使用できる「核シェアリング」を導入している。
これは冷戦時代、ドイツなどがソ連の核ミサイルに対するアメリカの「核の傘」が信用できなかったため、アメリカと交渉し、欧州への配備を実現させたもの。日本も同じことをすべきだ。
一方、イギリスの場合、アメリカと対等な立場で核のボタンを共有している。アメリカの核戦略と一体性があり、日本のモデルとなる。
(3) 独自の核を持つ選択も
日本独自の核兵器を持つのは、かなりハードルが上がる。アメリカは「日本には核を持たせない」政策を採っているが、日本政府として国民の安全を守る義務を果たすために、アメリカを説得する時期がいずれくるだろう。
60年代、フランスのド・ゴール大統領は、「核を持たない国は、核保有国にもてあそばれる」として、米大統領を説き伏せ、独自で潜水艦搭載型の核ミサイルを持った。
近年、インドが同じことをやった。70年代からの核実験で国際的非難を浴びたが、米英仏露中以外の核保有を認めない核不拡散条約(NPT)の枠外で、核 保有国の地位を認めさせた。核兵器を大量増産してNPTに違反する中国などとは違い、まじめにルールを守る日本は、インド以上に「平和的な核保有国」にな り得る(注4)。
中国や北朝鮮の出方がエスカレートするならば、(1)~(3)のステップを一つひとつ踏むしかない。「核開発をやっていきますよ」と宣言するだけでも抑止力になる。
日本政府は憲法解釈上、核保有は可能だとしている。憲法9条の改正以前に中国と北朝鮮の核兵器に対し、打てる手はたくさんあるということになる。
(注4)日本の核保有についてアメリカを説得できたとしても、核弾頭だけでなくミサイルや潜水艦も含め、機能する核抑止体制をつくるには10年から15年はかかる。
(4) 中朝との軍備削減交渉
「核廃絶プラン」はどうなるか。
日本として核抑止力を持つ中で、初めて中国や北朝鮮との軍備削減交渉を始める条件が整う。「中国、北朝鮮が核を全廃するならば、日本もなくしましょう」と言える。 この方式を米露など他の核保有国にも広げ、世界的な「核の刀狩り」を目指したい。
(5) 独裁体制を取り除く
中国、北朝鮮が核軍拡路線を捨てないならば、両国の体制そのものを取り除かなければならない。
「善悪とは何か」を学び、正義を打ち立てることは、中国や北朝鮮の人々がより幸福な人生を歩めるようになることを意味する。大川総裁はこう述べている。
「私たちは中国の人々を自由にしなければなりません。北朝鮮の人々も自由にしなければなりません。彼らもまた、神に愛される権利があり、神の子として尊重 される権利があり、幸福になる権利があるのです(中略)。私には何の憎しみ(hatred)もありません。あるのは世界への愛、自由と繁栄への愛のみで す」(注5)
「核抑止・核廃絶プラン」は、中国や北朝鮮を憎むからではない。両国民に自由や幸福を享受してもらいたいからだ。
(注5)ザ・リバティ2012年8月号「未来への羅針盤」より。
(綾織次郎)
中国、北朝鮮に対する「核抑止・核廃絶プラン」
(1) 通常兵器で中距離ミサイルを持つ
(2) アメリカと核を共有する
(3) 独自の核を持つ選択も
(4) 中朝との軍備削減交渉を行う
(5) 中朝の軍事独裁体制を取り除く
日本のそうりゅう型潜水艦。潜水艦発射の核が、日本の抑止力の中心になる。