大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 6月26日 一人

2014-06-26 18:29:19 | B,日々の恐怖



     日々の恐怖 6月26日 一人



 俺が中学1年の頃の話です。
その頃俺は、某県某市(西の方ね)の団地の4階に、家族4人(両親と弟)で住んでいました。
 団地は街の隅っこの山の上にあったんだけど、この団地が今考えても結構不気味でさ。
ボロいわ、汚いわ、入居者もいないのに棟数だけはやたら多いわで、ぱっと見で廃墟みたい。
敷地が無駄に広い上に、すぐ後ろは山、前は寂しい住宅街だったから、夜中になったらもうゴーストタウン同然なんだよ。
夏休み中も、近所のガキが肝試しに使うような場所。
エヴァンゲリオンの綾波レイの住んでいる所みたい、って言ったら分かる人いるかも。
いないか。
 まあそんな所だから、廃棟の屋上に人影が見えるとか、人魂が漂っているとか、そういう怪談話には事欠かなかったよ。
そういうの、俺は結局一度も見えなかったけど。
 で、俺が変な体験したのは11月の頭。
その日俺は風邪をひいて、学校を休んだ。
熱なんてほとんど無かったはずなんだが、とにかく気分が悪くて、何を食ってもゲロ、何を飲んでもゲロ、って状態だったと思う。
それと、耳鳴りがヤバかった。
 テレビとかで放送禁止用語に被せる「ピー」ってSEがあるけど、あれに良く似たヤツが、耳の奥でちっちゃく鳴り続けている感じ。
後にも先にもあんな耳鳴りは初めてだったから、良く覚えている。
 平日だったから親父とおふくろは仕事、弟は小学校へ行き、一人っきりになった俺も、午前中は黙って寝ていたんだけど。
吐き気と耳鳴り以外に体の変調も無かったし、昼過ぎにはもう退屈して起きちまった。
で、テレビみたり漫画読んだりゲームしたりしながら、時間をつぶしていたんだ。
 変な出来事が起きたのは、4時40分ジャストくらい。時間は多分正確だと思う。
弟がなかなか帰ってこなくて、「遅ぇなぁ」って窓際の時計を見上げた記憶があるから。
 だから、外の天気もはっきり覚えている。
気持ち悪いくらい西陽が眩しかった。
独りきりの夕方って、夜中なんかよりもよっぽど静かなんだよな。
昔の人が逢魔ヶ時って呼んでいたのも分かる気がする、不気味な空気が漂っているというか。
あの時も、早く弟に帰ってきて欲しかったんだと思う。
 そん時俺は、セガサターンのバーチャファイターに興じていたんだけど、突然テレビが、音飛びと同時にノイズまみれになったんだ。
ノイズって普通、画面全体をザァーって覆うと思うんだけど、そん時のノイズはなんか変で、モニターの真ん中から発生して同心円状に広がっていくっていうのかな。
 うまい事言えないんだけど、池に石を投げ込んだら波紋が広がる、って感じに似ていた。
ちょっとしたらノイズは消えるんだけど、しばらくしてまた真ん中が歪む⇒ノイズが外側へ向けて広がっていく、ってのが何度か続いた。
 最初はテレビの故障かなとも思ったんだけど、あんまし規則的に続くもんだから不気味になってきて。
それでテレビ消そうと思ったら、俺が触るより早く突然電源が落ちた。
 もうこの時点で泣きそうになった(と思う)んだけど、電源が落ちた途端に耳鳴りの音が急にデカくなって、思い出して勝手に鳥肌立ってきたんだけど。
耳鳴りの音質が明らかに変わったんだ。
「ピー」っていう高音から、「ブーン」っていう低音に。
 ともかく、子供心にもこりゃヤバいって気がして、テレビから離れようとしたんだ。
そん時、窓の下に何か黒っぽい塊が見えた。
そこは団地と団地の間に挟まれた中庭みたいな所で、小さな公園になっているんだけど、公園の隅っこに1台、真っ黒でバカでかい車が止まっているんだよ。
街宣車にそっくりだったのをハッキリ覚えている。あの軍歌とかゴジラ流しながら爆走しているヤツね。
 ただ、ボディペイントとか日の丸なんかは全く何もなくて、ただ真っ黒なだけ。
それが西陽の中で、捨てられたように佇んでいるんだ。
 で、魅入られたみたいに眺めていると、暫くしてスピーカーから音が流れ出してきたんだ。
流れてきたのは軍歌でもゴジラでも無く、陰気な声だった。
『チチ(父?)は…○○○、ハハ(母?)は…○○○(○は意味不明)』みたいな事をブツブツ呟いていた。
 何度もチチとハハって言葉が聞こえたから、同じフレーズを繰り返していたのかもしれないけれど、なんせ声は小さいし、低くこもっているし、意味は全く分からなかった。
声と連動して耳鳴りも段々大きくなってきて、唸り声みたいになってくるし。
 その後なんだけど、耐えられなくなった俺が泣きながら布団に頭突っこんで、耳塞いで「あー」って怒鳴って、耳鳴りの音を掻き消しながら暫く耐えていたら、やっと弟が帰ってきた。
弟に布団を引っぺがされた瞬間は、心臓が止まるかと思ったけど。
 で、気付いたら耳鳴りは止んでいて、窓の外を見ても街宣車の姿はどこにも無かった。
弟に聞いてみても、ありがちなオチだけど、そんな声も車も知らないって言われた。
以上が俺の経験した中身です。
 俺個人としては、メチャメチャ怖い出来事でした。
結局、あの車が何だったのか分からずじまいですが、今でも街宣車と夕焼けは苦手です。
団地にはもう誰も住んでいませんが、物自体はまだあります。













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