大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 6月23日 白いもの

2014-06-23 20:24:41 | B,日々の恐怖


   日々の恐怖 6月23日 白いもの


 私が学生の時に経験した話です。
その当時の女友達は、ちょっと不思議な人でした。
 弟さんが亡くなっているんですが、彼女の家に遊びに行くと、どこからかマンドリンの音が聞こてくるのです。
すると、

「 あー、またあの子が弾いている。」

と、彼女もお母さんも当たり前のことのように言うのです。
 そのころ私は頻繁に奇妙な夢を見ていました。
彼女に似た丸い顔をした男の子が、十字架に掛かっているという夢でした。
その話をすると彼女は、

「 弟は白血病で死んだので、薬の副作用で顔が丸くなっていた、それは私の弟だ。」

と言って泣くのです。
 そのうち、夜になると私の家でも何かが侵入してくるような気配が感じられるようになり、彼女にお札をもらって、部屋の四隅に張ったりしていました。
でもまだ若かったせいか、そういうことも別段異常なことだとは思わずに日々を過ごしていました。


 大学2回生の夏に鳥取まで遊びに行ったとき、そんなことを言っていられない目に遭いました。
みんなで車に乗り、山を越えるときには夜になっていました。
 山中の夜のドライブというだけで十分恐い気もしていたのですが、山の途中で車がガタガタいいだし、止まってしまいました。

“ え、こんなところで、どうしよう・・・?”

と思ったのもつかの間、彼女が運転席で、

「 誰かを乗せてしまったみたい。」

と言いました。

「 え、うそ?」

と私はパニック状態に陥りました。
 私は助手席に乗っていたのですが、恐くて後ろを見ることができません。

「 どこか行きたいところがあるみたいだから、送ってあげる。」

彼女がそう言ったとたん車がまた動きだし、しばらく走った後ガタガタといって止まりました。

「 ここみたいね。」
「 そんな落ち着いた声で恐いこと言わないでちょうだい。」

という私の言葉も聞かず、彼女は冷静に

「 降りてください。」

と、ドアを開けて言いました。
私はもう、

“ 神様仏様、お願いですから降りてもらってください。”

と念じるだけ。
 必死の願いが通じたのか、車の後部座席から何か白いものが、飛ぶような速さで前方の一角に消えました。
彼女がライトで照らすと、そこにはお地蔵さんがありました。

「 ここに来たかったのね。」

と彼女は言いました。
私はもう何も言えず、とにかく山を越えて、無事目的地に着くことばかりを祈っていました。
 鳥取では砂丘を見て海で泳ぎ、平穏に過ごしました。
帰りは格別恐いこともなく、無事に家に到着しました。
 彼女とはその後、だんだん疎遠になってしまいました。
それ以後、私の夢に彼が現れることもありませんでした。












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