日々の恐怖 6月3日 塾のトイレ
私が小6の頃に通ってた大きい塾には、男子トイレと女子トイレの他に、もうひとつトイレがあった。
そのトイレは教室から一番遠いところ、塾内の一番奥にあり、そのせいか誰も使おうとしなかった。
別に先生用のトイレという訳でも無いらしい。
塾の先生曰く、
「 幽霊が出るからあのトイレは使うなよー。」
とのことだった。
まぁ確かに、そのトイレは誰も使用してないためか、なんだか薄暗く気味が悪かった。
3月になり、塾のその年度の最終日だった。
教室で生徒の1人がこう言った。
「 塾今日で終わりだし、授業終わったら、皆であのトイレに行ってみない?」
おもしろそうと思った私達はその提案に乗り、
「 ホントに幽霊出るんじゃねー?」
「 まさかー。」
と、今日で最終日というテンションもあってか、妙に騒がしくしてしまった。
教室に入ってきた先生が、そんな私達の様子を見て、
「 おい、トイレに行こうって言い出したヤツ誰だ。」
いつもフランクな感じの先生が、初めて私達に怒鳴った。
一斉に静かになる教室。
“ あ、先生に近づくなと言われてるのに、肝試しなんて・・。”
と、少し申し訳ない気持ちでいると、
「 いや違う。
怒ってるんじゃないんだ。
ただ誰が言いだしっぺなのか、ちょっと教えてくれ。」
と、今度はいつもの先生の口調で言った。
「 Aが言ったんじゃない?」
「 俺じゃねーよ、Bが言ったんだろ。」
「 え、俺は誰かが言ったのに乗っただけだけど・・・?」
言いだしっぺが見つからない。
でも確かに、生徒の誰かが提案したはず。
次第にざわざわしだす教室。
先生は、
「 静かに!」
と、ひとつ溜息をついて、
「 やっぱり、誰が言い出したか分からないんだよな~。
ま、そういう事だから、お前らあのトイレは使うなよ。」
それだけ言って、先生は授業を始めた。
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